表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/195

第9話「次の修行」


 「もう魔力使えないから」


 「え…」


 絶句する。


 (もしかして魔法使えない?でも”るーちゃん”や”ふうちゃん”のことはよくわかるようになったし、でもそれは魔素のおかげで?魔法?魔力?魔素???)


 プシューとどこから聞こえてきそうなほど頭を回転させ、混乱したユナがそこにはいた。


 「ふふっ。ごめんごめん。さっきパリンッて音したときあったでしょ?」


 なんとか気を取り直して返事をするユナ。


 「う、うん」


 「あれ、魔力を生み出してるやつ壊した音」


 「ええーーっ!?!?」


 「でもおかげで、魔素はよくわかるようになったでしょ?」


 「確かに…」


 改めて、魔素を知覚する。偽神(にせがみ)のいう通り、今まで何故気が付けなかったのか不思議なほど、ハッキリと魔素を実感している。


 「多分だけど、変に加工された魔力よりも、魔素のほうが使える魔法は多いと思うんだ」


 「ほんとに?魔法いっぱい使える?」


 「うんうん!使えるとも!」


 「よかった~」


 紆余曲折あったが、魔法が使えるということで、やっと安堵することができたユナだった。


ーーー


 「では、次の修行に入ろう」


 「はい!」


 次こそは魔法の修行!そう思い浮き足立つユナ。それを感じ取った偽神は、少し苦い思いがこみ上げながらも、次の修行内容を告げる。


 「次は、魔素のコントロールの修行だ」


 「はい!」


 元気よく返事をした後で、その姿のまましばし固まる。


 「…魔素のコントロール」


 「ああ、そうだ」


 「魔法のトリコロール」


 「魔法じゃなくて残念だけど、魔素のコントロールだ。それにトリコロールなんて言ってない。ていうかよく知ってるねそんな言葉」


 「へへん!もっと褒めてくれてもいいよ!」


 「偉い偉い」


 「ぶーぶー!!」


 ぶー垂れているユナをおいて、偽神は話を進める。


 「道具を扱うとき、例えば剣を使うなら、自分の身体が、どれくらいの筋力があって、どれくらいのものが持てて、どれくらいの速度で振れるか、それらを知るところから始めるだろう」


 ユナは思い出す。剣の修行のとき、木剣でも精一杯で、お父さんの剣を持たせてもらえなかったことを。


 「逆に、大剣をコントロールできる筋力があるのに、つまようじを振るっても意味がない。だからまずは、自分の魔素の特徴をつかんで、それをコントロールするところから修行を始めよう」


 「うん…。わかった」


 しぶしぶといった返事ではあったが、ユナはその必要性を身に染みてわかっていた。きちんと準備をしないと、怪我をしてしまうかもしれないということを。

 木剣を初めて持たせてもらったとき、はしゃいで振り回し、手からすっぽ抜けて怪我をした時のことを思い出していた。すこし恥ずかしくなる。


 「ぷぷぷ」


 そうだった。偽神は読み取れる(・・・・・)んだった。


 ユナの顔が熱くなる。


 「にーーちゃああああああああ!!!!!!!」


 「ごめん!ごめんてゆーちゃん!!」


 ポカポカと叩くユナとそれをなだめる偽神。”るーちゃん”と”ふうちゃん”はそんな二人を優しく見守っていた。


(感情が表に出ちゃうのも、悪くないのかも)


 そんなことを偽神は思っていた。


ーーー


 「といっても、僕と魔素の相性は最悪。魔素をちょっと流す以外は何もできないので、君の仲間たちに手伝ってもらう」


 察したユナは二人を呼ぶ。


 「るーちゃん!ふうちゃん!」


 「ホウッ!」


 「ワウッ!」


 二人はそれぞれ羽ばたき、駆け寄り、すぐにユナのもとに来た。


 「二人とも。ゆーちゃんの先生としてよろしく頼むよ」


 「ホウッ!」


 「ワウッ!」


 「よろしくね!」


 そう言って”るーちゃん”に抱き着くユナ。

 羨ましいなと思いつつ、偽神は続ける。


 「ゆーちゃんには、2つ。瞑想と流入をやってもらう」


 「瞑想は知ってるけど”りゅうにゅう”って?」


 「流し、入れると書いて流入(りゅうにゅう)だ。さっき僕がやったみたいに、魔素を外側に出す、魔素を流すことだよ」


 偽神が手のひらを差し出す。フッと気合をいれると、魔素の丸い球が、ぼんやりと手のひらから生まれた。おそらくさっきまでのユナなら見れなかっただろう。だが、今はハッキリと見える。


 「るーちゃんとふうちゃんは魔素のプロだ。きっとできるはずだよ。どう?」


 それに応え、”るーちゃん”と”ふうちゃん”はそれぞれ魔素を放つ。


 ”るーちゃん”は身体をまとうような、電流のような魔素の流れを。

 ”ふうちゃん”は羽をはためかせ、竜巻のような魔素の流れを。


 「すごいすごい!!」


 ”るーちゃん”も”ふうちゃん”も、へへん!と誇らしげだった。主人に似ているのだろうか。そんな姿のモフモフたちも可愛らしかった。


 「素晴らしいね。僕じゃちょっと形を作るだけで精一杯なのに、電流に竜巻とは。これなら安心して任せられる」


 ちょっと悔しそうにしながら、偽神が二人を褒める。ますます誇らしげだった。


 「ゆーちゃんには、瞑想で自分の魔素と向き合って、特徴をつかんでもらう。ちょっとでも進んだな、わかるようになったなと思ったら、二人に魔素を流すんだ」


 「るーちゃんとふうちゃんに、魔素を流せばいいの?」


 「そう。そこで、るーちゃんとふうちゃんには、魔素のコントロールが合格か不合格か判断してもらいたい」


 「ホウッ!」


 「ワウッ!」


 「それが次の修行だよ」


 「ぐぬぬ…また瞑想…。わかった。ちなみに魔法の修行は?」


 「まだ先かな。魔素のコントロールを覚えたら、次は属性の判定があって、魔法理論の座学があって、魔術理論の座学もやって、そしたらやっと魔法かな」


 「ぐぬぬぬぬ…」


 「るーちゃんもふうちゃんも、甘やかさないでね!」


 「ホウッ!」


 「ワウッ!」


 任せろ!と元気に返事をした。ユナは恨めしそうに偽神を見やる。


 「ちょっと暫くいなくなるけど、修行は毎日きちんと続けるんだよ。ごはんも用意しておくから。それと、ここ以外は安全じゃないから、あまり遠くまで行かないようにね」


 「え、いなくなっちゃうの?」


 「ちょっと、ほんの数日だけね。修行が終わるころには返ってくるから」


 「1日で終わらせるもん!」


 「そうかそうか、楽しみにしてるよ」


 少し寂しそうにするユナ。その姿を見てか、自分自身も寂しくなってくる偽神。


 それは自分に向けてか、ユナに向けてか。


 「がんばってね!」


 「うん!頑張る!」


 「じゃあまた。行ってきます」


 ハッ気づくユナ。出かけるときの言葉は、きちんと帰ってくるための言葉でもあるからだ。

 だから心置きなく、こう返す。


 「行ってらっしゃい!」


次回で一区切り着きます(予定)。着かせたい…!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ