第81話「自分の尻尾の分」
ユナとパティモは走り始めた。
「木の反対側!」
「おう!!」
向こうでアラタも走り始める。走った先でうまく合流できそうだ。
「ほっ、ふぅっ」
早々に、後ろからパティモの荒い息遣いが聞こえてきた。もうすでに、少し遅れ始めている。走るのが苦手なうえに、盾が大きいせいで森の中での走りづらさが尋常ではなかった。ユナもそれに合わせて少しペースを落としかけたが、パティモが制止する。
「ユナ、ちゃんっ、先に行って!」
「でも…」
「アラタくんならきっと、大丈夫だから!」
さっきアラタが放った一撃。あれを見たからだろう。
ユナも同じ気持ちだった。アラタに敵う人が、果たして今、この試験場にいるのだろうかと。悲しいけれど、パティモがいなくてもアラタ一人で倒せてしまうかもしれない。そういう強さを、二人は感じ取っていた。
そして、アラタが勝つためには、ユナの【探知】が必要だということも。
「うん!その、気を付けて」
「ふぅ、うん!すぐに追いつくから!」
ユナはペースを上げた。森の中だ。【探知】には引っかかっているが、すぐに木々で見えなくなった。
一方で、アラタは徐々にこちらに近づいてきている。
「ユナ!」
「アラタくん!」
木を1本、2本避けて、アラタが見えた。
「こっちであってるか?」
「うん!」
ユナが先導する形で、縦に走る。
「パティモは?」
「遅れてくるって」
「敵とはどれくらいだ?」
「速くて、なかなか追い付けないかも」
「うーん」
唸りながらアラタは考える。逃げているということは、戦闘向けのスキルじゃないかもしれない。4人のうち、1人は水の人形を作る能力で確定。もう1人は見た目のスキルかもしれない。あと2人はわからない。炎の壁からはどんどん離れてるから、合流は考えなくていい。クラッソが一人で頑張ってる分こっちもやらなきゃいけない。でもパティモが追い付いてない分、戦力が足りてない。だけど、行きたい。
「ユナ、どれくらい戦える?」
「え!?えっっとね、……【剣術】、【剣術】のスキルも使える。アラタくんほどじゃないけど」
「え??…ああ!そうそう、そうなんだ。俺も【剣術】のスキルでさ」
「…?それで、どうしよっか」
「そうだな、【剣術】に、こうして走るくらいには動けるってことは、自分で自分の身は守れるか?」
「たぶん、今のパーティなら大丈夫」
今のパーティであれば、そこまで足も速くないし、【探知】で見つからないなんて不思議なこともない。自分だけ逃げるなら何とかなると、ユナは思った。
「よし、じゃあ行こう!」
アラタはそう宣言した。
自分の無くなった尻尾の分を取り戻すため。
「うん!でも、このままじゃ追い付けな…きゃっ!」
アラタが、ユナを担ぎ上げる。ユナは、アラタの肩に覆いかぶさるような体勢になる。
「いけそうか?」
「え?あ、うん」
「よし」
「え?っ!?!?きゃ――」
ユナは、声が置いてかれた気がした。アラタがユナを抱えたまま、加速したのだ。二人で走っていた時よりもうんと早い。
「どうだ!?」
「あわわわー!!」
「なにって??」
「あっ!!追い付いちゃう追い付いちゃう!!!」
「マジか!!」
アラタが慌てて止まる。地面に引っ張られるような、横に投げつけられるような、変な重みを感じながら、何とか止まってくれた。
だが、それは敵の目の前だった。
「やっちまった!!」
「なっ!?」
お互いに驚いた顔のまま、戦闘は始まった。




