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第70話「2つのパーティと」

 ユナたちは探知したパーティの方へと駆け出す。といっても、この密林の中では、足がもつれてなかなか速度は出ない。

 その分、メンバー同士が大きく離れることもなく、話しながら進むことができた。


 「たぶん、私たち端っこかも」


 「そうなのか?」


 「うん。入学試験の時も見たんだけど、この試験場、端っこがあるの」


 「へえ~、俺は見たことないな」


 「あ、私も直接は見てないんだけど、探知が途切れる場所があって、それより向こうはパーティもいないし、たぶん地面もないかも?」


 「なるほど、じゃあ端っこに追いつめられる前に抜けないといけないかもな」


 「それと…」


 「それと?」


 もう一つ、ユナは言おうとしたことがあった。【探知】の範囲が狭い(・・)、そんな気がすると。

 何かにずっと、圧迫されているような、そんな感覚がずっとあった。前の入学試験の時は緊張のせいだと思っていたが、比較的落ち着いている今もそれが起きている。しかし、それを言うと、折角自分の【探知】を頼って作戦を立ててくれたアラタに申し訳ない気がして、ユナは言うのを躊躇(ためら)った。


 「…ううん、何でもない」


 「そっか!てか、やっと敬語抜けてきたな」


 「え、あっ、はい!」


 「あ、また戻った」


 パーティでの戦闘は、一秒を争うようなやり取りが必要になる場合が多い。そのため、できるだけ普段から敬語ではない、砕けた話し方も推奨されていた。

 ユリクスセレファスの街に着いてからも、ずっと敬語で話していたユナは、すっかり敬語が染みついていたが、同い年が多いこともあって、普通に話そうぜと、アラタに言われたのだった。


 「ふん!俺様にかかれば敬語無しなんて余裕だ!」


 「いやいや、クラッソのは()だろ」


 「あ”??」


 「まあまあクラッソくんも落ち着いて…」


 ユナからは仲良くなっていたように見えたアラタとクラッソだったが、そうでもないのだろうか。よくわからない二人を(なだ)めるパティモ。


 (敬語無しで、砕けて、敬語無しで…)


 そう意識しながら走っていたせいか、すこし【探知】の範囲が縮まっていた。

 そこに、2つのパーティが入ってきて、ユナはビックリする。


 「わっ!」


 「どうした!?」


 すかさずアラタが問いかける。


 「ご、ごめん!もう敵ががいる!」


 「どこに!?」


 「えっと、こっち」


 「んー??何も見えねーぞ?」


 クラッソが、木々の合間を縫って遠くを見たり、耳を澄まして戦闘音を聞いたりしているが、周囲にそんな様子はなかった。


 「あ、ごめん…なさい、まだちょっとある」


 いままで、ちょっとした地平線の向こうまで【探知】が届いていたユナは、この狭い範囲になってしまう状況で、更に縮まっていた【探知】に、距離感がおかしくなっていたのだ。

 実際には、まだ木々の向こうで、余裕がある距離だった。


 「なんだよ、脅かすなよ」


 クラッソがそうぼやく。一方で、アラタやパティモがフォローしてくれる。


 「それだけユナの探知範囲って広いってことだろ?すげーじゃん!」


 「ユナちゃんも緊張してるかもしれないしね。ぼくも人と戦うのはじめてだから緊張してるし、えへへ」


 「ふん、次は気を付けろよな」


 「っ!はいっ」


 クラッソに詰められたユナは、ついついまた敬語を使った。

 その空気を切り替えるように、アラタが続ける。


 「それで、そのパーティはどっちだ?」


 「うん、あっちの方向で、あ、今ぶつかった。たぶんここから400メートルくらいかな」


 「よし、先に見つけられたんだ、有利に攻めていこう!」


 「おー」


 パティモの気の抜けた返事だけが響き、クラッソは少しすねた様子だった。



ーーー



 ユナを先頭に、徐々に近づく。やがて、パーティメンバーにもその戦闘音が聞こえてくるようになった。


 「待って」


 ユナが制止する。


 「なんだよっ」


 パチンッと雷の魔法が近くの木にぶつかって、焦げ跡を作った。


 「ひっ」


 それを見て、クラッソが怯える。それを気にする余裕はないユナは、音の方向を見ながら伝える。


 「見えた」


 その声で、アラタやパティモも木々の合間からその方向を伺う。


 離れたところに、何人か人の影が見えた。雷の魔法を使ったのは、左側のパーティのようだ。氷も飛んでいる。


 「あれは、右側のパーティが近づこうとしているのを、左側が魔法で押さえてる感じか?」


 アラタの観察が入る。それを、【探知】でユナが補足していく。


 「うん、たぶんそうだと思う。左側のパーティは魔法を使える人が2人いる5人パーティで、右側はたぶん近接?なのかな、5人でだいぶ攻めてるみたい」


 「なんか、魔法が左側からしか飛んでないもんな」


 「すごいね、アラタくん」


 「いやいや、ユナのほうがスゲーよ!それで、どうすればいい?」


 「うーん、あ!右側!攻めすぎてて一人遅れ始めてる!これだったら、後ろから行けば尻尾盗れるかも?」


 そう言って、ユナはすっかり逃げるんじゃなくて盗る(・・)という思考になっている自分に気が付いた。


 「ああ、確かに、それなら4対1でうまくいくかも「そんなの嫌だ!」


 遮ったのはクラッソだ。


 「俺様は、そんな弱い者いじめみたいなことやらねえぞっ!!!」

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