表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/192

第7話「起き上がる」

前話は少し文量を多くしてみました。今回もちょっと多めです。



 ーーー夢を見ている。




 「ゆーちゃん、起きなさい」


 「う”う”~ん、まだ暗いよ~~…」


 「もう」


 お母さんは私の布団をめくり、私の体をすくっと持ち上げベッドから降ろし、そのまま立たせる。


 私は、朝起きるのが苦手だ。


 「よいしょっ。ほら時間よ、起きて」


 そして私の肩をゆする。


 ユサユサ、ユサユサ…。


 「うにゃんうにゃん」


 ユサユサ。ユッサユッサ。


 「うにゃんうにゃん」


 ユッサユッサ…。ブンブンブンブン!!


 「うにゃん…。うわわわわわっ!!起きた起きた!!おはよう!!」


 「はい。おはよう。早く準備してね!」


 私は、ほぼ毎日お母さんに振り回されて起こされていた。他のおうちがどうかはわからないけれど、うちのお母さんの起こし方は、多分強引だと思う。


 二度寝することなく無事にベッドを離れ、準備をして玄関に向かうと、お父さんとお母さんが待っていた。


 「ゆーちゃん。おはよう」


 「おはよーお父さん」


 「それじゃあ、行きましょうか!」


 私たちの朝は、体力づくりから始まる。家族三人そろって、村をぐるっと一周するランニングだ。まだ少し暗いうちから走り始め、走っている間に朝日が顔を見せる。


 朝日が昇り、少しずつ辺りが暖かくなってくるころ、ランニングを終え、やっと朝ごはんを食べる。お父さんが言うには、運動した直後にごはんを食べると筋肉が付きやすいんだとか。私はいつもベタベタな汗を流すのが先か、ペコペコのお腹を満たすのが先かで悩む。


 朝ごはんが終わると、瞑想(めいそう)を行う。この時間が、私は一番苦手だ。魔力をコントロールする力を身につけるには、瞑想がいいと言われているらしいが、私にはちっともわからない。それにごはんを食べた後は、とっても眠くなるから。

 寝ていると、トンッとお父さんに頭をチョップされる。私は毎日チョップされていた。


 瞑想を終えると、剣の稽古(けいこ)をつけてもらう。お父さんがお仕事でいなくなるまでの間、振るところを見てもらって、その日やることを決めてもらう。

 私はまだまだ筋力が足りなくて、木剣でも精一杯だ。でも、お父さんみたいに、いつか立派な剣を振るうのが夢だ。だからよくおねだりした。


 「お父さんの剣持たせて!」


 だがそう言うと、お父さんはいつも決まって


 「まだ早いといってるだろう。いつか、ゆーちゃんにも守るものができたらな」


 と言って、持たせてもらえはしなかったけれど。


 そして、仕事へ行くお父さんを見送って、一人で剣の稽古を続ける。


 お昼ご飯をたべてからは、お母さんに裁縫を習った。私は意外とちまちました作業も好きで、身体を動かす次くらいには、裁縫が好きだ。


 「いつか、お母さんとお父さん以外にも、作ってあげたい人が現れるかもしれないわね」


 「うーん。でも、お母さんとお父さんにずっと作るよ!」


 「うふふ、そうね…。ずっと作ってほしいかも」


 「うん!作る!」


 その時私は、将来のことなんて想像もできなくて、そんなことを言っていた。無邪気に、ずっとみんなで一緒に居られると思っていた。


 夜ごはんを食べて、お風呂に入ったらあっという間に眠くなる。朝は早いし、修行でへとへとだし、当然だった。

 お母さんにずっと手をつないで、頭をなでてもらいながら眠る。お布団の暖かさだけでは眠れない、私のわがままだった。


 もう、そんな毎日は返って来ないーーー


ーーー


 誰かが顔を拭ってくれる。


 「ゆーちゃん。おはよう」


 偽神(にせがみ)の声だ。


 「おはよう…」


 もう、もち上げて起こしてくれるお母さんはいない。私が、私自身で起き上がらなければならない。


 「悲しい夢でも見たか?」


 偽神ならユナがどんな夢を見たのか、すでにわかってしまっているだろう。でも、聞いてくれた。


 「…ううん。良い夢だった」


 一拍置いて、続ける。


 「とってもいい夢!」


 「そうか」


 もふもふるーちゃんのお布団は名残惜しいが、もうウロの外は明るい。

 私は起き上がった。


 「昨日まで大変な日々だっただろう。だが、実はあまり時間がない。早速次の修業に入りたいんだが、大丈夫か?」


 ちょっと苦しそうな、複雑な顔をする偽神。


 「うん!大丈夫!ばっちり元気になったよ!身体も動かしたいし」


 偽神のその苦しそうな顔が晴れるように、ユナは元気に言った。


 それに、逃げている間は一生懸命走るか、身をひそめるために全く動かないかのどちらかだった。まともな身体の動かし方をしていなかったので、身体を動かすのが好きなユナにとって、身体を使う修行は楽しみだった。


 思いがはっきり伝わって、偽神はハッと気づいたようになる。


 「悲しそうにしていたから来たのに、僕のほうが元気付けられてしまったな」


 「へへん!褒めてくれていいよ!」


 「ああ、偉い偉い」


 「もう!素直じゃないんだから!」


 「それじゃあ、昨日言っていた通り、次の修業に入ろう」


 グゥ~


 「えへへ…」


 「そうだな、まずは朝ごはん食べてからにしようか」


 「うん!」


ーーー


 朝ごはんを終えて、昨日と同じ開けた草原にみんな並ぶ。


 「じゃあまず、みんなの実力を見せてもらおうか」


 「まず魔法が使える、るーちゃんとふうちゃんから見ていこうか」


 「バウ!」


 「ホウ!」


 偽神がどこからか用意した丸太をめがけ、それぞれが魔法を披露する。


 パアンッ


 「ふむふむ、さすが雷霆狼だ。雷の魔法で威力は十分。魔素のコントロールも申し分ない」


 ”るーちゃん”が魔法を当て、丸焦げになった丸太を見ながら、そう考察する。


 「森閑梟はやはり恐ろしいな。るーちゃんの魔法で聞き取りづらかったとはいえ、おそらくほぼ無音の攻撃だろう。魔素の気配も、僕のレベルでは感じ取れなかった。すごいよ」


 ”ふうちゃん”が魔法を当て、すっぱり真ん中で分かれた丸太を見ながら、そう考察する。


 「ホウッ!」


 ”ふうちゃん”が誇らしげに胸を張っている。


 「まだまだ伸びしろはあるが、2人とも魔素のコントロールは僕から言うことはないレベルだ。じゃあ次に、ゆーちゃんのも見ていこうか。魔法は使えないんだよね?」


 「うん。そういうスキルじゃないし」


 「うーん。じゃあ試しにいつもやってたやつ、瞑想だっけ?やってみようか」


 「わかった」


 その場に座り足を組み、目をつぶる。いつもやっていたみたいに、自分の内側に、魔力を感じるように…。

 ペタッと、偽神の手がユナの首筋に当てられる。一瞬集中が乱れるが、すぐに振り払って、集中を続ける。


 しばらくして、何か考え込むようにボソッと偽神がつぶやいた。


 「魔力…か。もういいよ、ありがとうゆーちゃん」


 ユナは目を開けて、偽神を見る。私はどうだったのだろうと。

 だが、偽神はしばらく何も答えなかった。


 そしてやっと何かを発したかと思うと、それはユナにとってもわからないことだった。


 「魔力ってなんだろうね」

「童心にかえる」って「返る」か「帰る」か定まってないんですね。

「返る」か「帰る」かで、意味が少し変わってきそうです。

童心ではないですが、今話では「返る」にしました。小さなことですけど、こだわっていきたいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ