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第55話「クラスメイト」

 「はい、ありがとうございます。次、アラタさん」


 「はい」


 そこには、ユナと同じくらいの身長の、ユナと似たような雰囲気の男の子が立っていた。


 「俺はアラタって言います。アキラとは幼馴染で、えっと、いつもほんとうに助けてもらってます!ほんとーにいいやつだから、みんな仲良くしてください!」


 「…はぁ~」


 アキラは振り返ることもなく、深くため息をついた。いつものことなのだろうか、それを見てアラタはニシシッと笑った。

 ユナは、なんとなく、二人の関係が気になった。幼馴染という存在は、本の中では見たことがあるけれど、実際にはどんな感じなのだろうと。


 「皆で仲良くできるといいですね。ありがとうございます。では次、イツツさん」


 コトッ、と静かに席を立つ音がする。ユナからも、その人だけはずっと見えていた。教室の(はじ)と端でもわかる、室内なのに傘を差している人だ。


 「……イツツです。家名はないです。イツツです。………家名はないです」


 「はい、わかってますよ」


 「ふふっ。…わたくし、病弱でして、特に日差し。日差しに当たるとすぐに赤くなってしまうのです。真っ赤に。ふふっ」


 よくわからない笑いどころを持っている人だった。ユナは付いていけなくて、自分だけかと見まわしたが、周りの人も別に笑っているわけではなかった。先生なんか、少し戸惑っているくらいだった。少しホッとする。


 「それゆえ、席を変わっていただけますと、喜ばしいのですけれど…」


 教室の右側、窓の方は、たしかに燦燦(さんさん)と日差しが差し込んでいた。ユナの座っている廊下がある左側までは陽光は届いていなかった。

 傘の隙間からチラリとイツツの視線が飛ぶ。ユナの列の人を見ているようだ。ユナは、背筋が凍るような、そんな気がした。だが、優し気な声がそれを()かす。


 「おっと、それは失礼しました。そうですね、では、端の列で変わりたいという方いらっしゃいますか?」


 「ん、らんかが「あーし!あーしが変わる!!」


 クラの提案に対して、反応したのは二人。先に答えたのは、ユナの後ろの席の”らんか”だったが、それをかき消すような声で、なんなら席から立ちあがりながら、ユナの前の席の人が答える。


 「では、ふむ、モモさん。ありがとうございます。イツツさんと交換でお願いします」


 座席表で名前を確認しながらモモの名を呼び、指名した。ユナはおずおずともう一人の発言者だった後ろの席の”らんか”を見るが、気にした様子はなく、机に突っ伏して寝始めた。


 「やった!」


 そう元気に喜んで、モモはイツツと席を交換した。席に着くなり、モモは目の前のアラタに声をかける。


 「アラタくん!あーしモモって言うの!よろしくね!」


 「ああ、よろしく!」


 アラタは一瞬びっくりしていたが、モモの元気さに負けず劣らずの元気さで返していた。

 そして、それはユナの側でも行われる。


 ユナの前の席に来たイツツは、傘をカチンと閉じると、居住まいを正して、席に座った。そしてゆっくりとユナのいる後ろへと振り返る。


 「ふふっ、よろしくお願いしますね?」


 「え、あ、はい…よろしくお願いします…」


 ユナは思いがけない声掛けに、人見知りを発揮しかけたが、ギリギリのところで返事を返しきった。目も、ちゃんと合わせることができた。

 イツツは、掴みどころのない雰囲気の人だった。長いストレートの白髪と、よくわからない笑いどころと、笑ってないように見える真っ黒な瞳。性格も、年齢も、ユナにはさっぱり見当がつかなかった。


 「では、次は席順で、モモさん、お願いします」


 「はい!」


 元気いっぱいに返事をして、ガタンッと席を立つ。


 「あーしはモモ!モモ・イディオード!好きなのは、お父様と、お母様と、じーやと、ペットのチョコと」


 止まって、モモはアラタのことをジッと見る。


 「うふっ!みんなよろしくね!」


 「はは…、はい。ありがとうございます。では次、イルマさん」


 「はい!」


 ハッキリと返事をして、静かに椅子を引いて立ち上がる。


 「わたしは、すぅー…」


 意味深長な深呼吸が入る。


 「イルマ・ヘプルブルゼッタ!よしっ!」


 控えめな”よしっ”が入った。それで止まってしまったからか、もう一度名前を言い直す。


 「イルマ・へぷるぷるッ!!」


 「「ぷるぷるがぷるったー!」」


 教室の左後ろの方から二つの声が響く。


 「ぐっ!!うるさいそこの双子ー!!」


 「「ぷるぷるが怒ったーー!!」」


 「ガーーー!!」


 その双子と、イルマはどうやら顔見知りのようだ。内部進学生なのだろうか。


 「はいはい、そこまでにして。えーと、ムントさんロントさんもお静かに」


 「「はーい」」


 「…イルマ、ふぅ…。イルマ・ヘプルブルゼッタです。初等部からの内部進学で来ました。初等部では学級委員をやってたので、中等部でも学級委員をやりたいです!よろしくお願いします!」


 「学級委員は立候補者がいないと困りますから。他に居なければぜひお願いしたいですね」


 「はい!任せてください!」


 「ええ。ありがとうございます。では次は、ウルさん。お願いします」


 「うふ~、わたしは、ウル~。ウル・リーザロッテ~。と、申します。なにとぞ、よろしくお願いします~」


 アキラを彷彿とさせるような内容の無い自己紹介だったが、全ての動作がおっとりとしていて、経過時間は倍以上だった。どの所作も丁寧で、その分ゆったりとした時間を過ごしている人だった。とても冒険者には向いていなそうだなと思うユナだった。


 「はい。ありがとうございます。次はキオラさん、お願いします」


新キャラがたくさん登場しましたね。

ここまでの1年13組を、名前順で記載しておきます。


クラ先生


アキラ

アラタ

イツツ

イルマ・ヘプルブルゼッタ

ウル・リーザロッテ

モモ

ユナ

“らんか”

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