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第41話「わからないよ」

 ユナの頭は混乱していた。


 「えっっと!!!!」


 考えが散らばってまとまらない。


 (魔物同士で争ったことにすれば、遠くから魔法ならばれない…?巻き込むかも。このまま)


 「ふうちゃんで助けて、いや!!」


 (そんなのバレバレ!どうしよう!?)


 「るーちゃんの雷、いや、声で…」


 (でもこんな何百匹も…あ!師匠が!!!)


 その答えがまとまらないまま、ピンチに陥るサリナをみて、るーちゃんへと呼びかけた。


 「あー!!るーちゃん!!」


 その慌てふためいた脳みそのまま、契約の繋がりもあって、なんとか曖昧な指示を受けとったるーちゃんは、遠吠えを放った。


 「アオーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!」


 場が固まる。今度は正しく足止めの遠吠えとなった。だが、先ほどとは違うことがある。


 「AhwoooooooooOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!」


 それは呼応するように即座に放たれたもう一つの遠吠え。それを聞いた瞬間に、バウハウンド(?)の群れは正しく動き出す。


 ユナたちはそれを見届ける間もなく、遠吠えのタイミングで群れから離れていた。理由は二つある。一つは、遠吠えでユナがふうちゃんやるーちゃんと一緒にいるのをサリナたちに見られないためだ。


 「どうして?」


 そしてもう一つ。先ほどのように遠吠えによって呼ばれたと勘違いしたバウハウンド(?)たちが追ってくるかと思い、逃げ始めていたのだ。

 だが、この状況(・・・・)はユナたちに水を差した。


 「一匹も来ない…。…!師匠!!」


 慌てて逃げたものの、その(じつ)サリナたちから群れを引き離せるんじゃないかと思っていたユナは、自分が失敗したことに気が付く。


 「ふうちゃん!!」


 「ホウ!!」


 「さっきの、もう一個の遠吠えが!!」


 るーちゃんの遠吠えに呼応するように響いたもう一個の遠吠え。それが関係して、群れがこちらに来ていないのだろうか。慌てて群れの中心だった場所へと戻る。


 「し…!」


 ”師匠”と大声で呼びかけて、魔物と一緒にいる自分の立場に、ギリギリで気が付くことができた。

 だが、そこにはもう二人はいなく、(にお)い玉の煙が残っていた。流石ソロでやってきた二人だ。間隙(かんげき)をついて、ひとまず群れの中心から離れたようだ。バウハウンド(?)の群れが、そこかしこを嗅ぎまわって探し回っている。

 ひとまず危機は脱したものの、それは一時凌(いちじしの)ぎでしかないことは、ユナでも見てとれた。


 「どうしよう!」


 せっかくできた猶予に対しても、ユナは慌ててしまって、またまとまらずにいた。その動揺はふうちゃんとるーちゃんにも伝わり、皆して身動きをとれずにいた。


 「grooooooooooooowl!!!」


 ユナの探知がそれを感じ取って、声より先にふうちゃんを抱きしめていた。


 「キャッ!!!!」


 ゴウンと掠める。先ほどまでいたところに、魔素の塊、赤黒い球が突き抜けた。


 「魔法!?」


 探知に引っかかったそれは、今まで見たことのない攻撃手段だった。球が飛んできた方へ探知を引き延ばす。それは、先ほど遠吠えが聞こえてきた方と同じ方角だった。


 「ひっ…!」


 それは身の毛もよだつような、にーちゃんーー偽神ーーに会う前の森を逃げ回っていた日々のような、そんな恐怖だった。それは、ユナの身体をカチコチに固まってしまう。


 ドゴォン!!


 戦闘音がユナを現実に引き戻す。サリナたちが、また戦闘を始めた音だろうか。

 探知に引っかかったあいつが、もう一個の遠吠えの主だとしたら、この群れのボスだろうか。


 (あんなのが来たら………)


 今も探知の隅にいるそれは、とてもじゃないが誰かがどうこうできる魔物には感じれなかった。きっとユナの探知だってバレているだろう。だが、それでも動かないのが不気味で仕方がなかった。

 ユナの鬱々とした思考の中で、ちらつく答えが一つ。


 「モンスターテイマーのスキルを使えば…」


 もしかしたら、この群れ全てをいいように操作できてしまうかもしれない。そんなことを考えながらも、戦闘音は鳴り響く。


 「こんなことなら、いや、だって」


 探知で後悔したように、【モンスターテイマー】の練習もしておけば、少しでもその力を知っておけば。そんな風に後悔があふれる。だが、それができないこともわかっていて、ユナは自分のスキルと、自分の生き方と、後悔とで、目の前がどんどん暗くなっていく。


 「どうして…」


 こんなにも、この背中は暖かくて、もふもふなのに。こうして、優しく包んでくれるのに。”私”の心はこんなにもぐちゃぐちゃで、今まさに、あの時のように、大切な人が死にそうになってるのに、”私”はこんなにも動けない。


 「わからないよ…」


 戦いの音が、ふうちゃんとるーちゃんの鳴き声(呼びかけ)が、遠くなっていく。


 戦場のど真ん中。その上空で、気を逸らすということは、死を意味することを、ユナはまだ体感していなかった。

 他人の死ばかりで、自分の死に及ばなかったのだ。


 「ホウ!!!」


 「キャッ!!!」


 「グワウッ!!」


 まんまとその隙を突かれたユナたちは、赤黒い球に飲み込まれた。


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