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第31話「調査団」


 ユナたちは、ユリクスセレファスの街に着くや(いな)やギルドへと向かった。


 「レイナ!レイナはいるか!?」


 サリナの声に、ギルド職員が一斉に振り向く。冒険者たちはまだ例の聖騎士が出した調査依頼で出払ったままのようだ。


 「レイナさんですか?」


 ユナがギルドに初めて来たときと同じ男性のギルド職員だ。また書類を抱えている。


 「ああ、急ぎなんだ」


 「確かマリさんとランチ行くって、遅めのお昼ご飯に出掛けてたような…、あ!ちょうどあそこに!レイナさーん!」


 ギルドの入り口方向、レイナとマリが歩いてくるのが見えた。


 「はーい?」


 レイナのよく通る声で返事が返ってきた。


 「って、あれ?サリナ、もう帰ってきたの?調査行き(づま)った?」


 ありがとうと、ギルド職員に感謝を述べながら、レイナのほうに駆け寄る。


 「違う、逆だ!バウハウンドの魔物群衆(スタンピード)がくるかもしれない!」


 「なにそれ!?ホントに!?」


 ほっこりしたランチタイムの満足げな様子から、一瞬で顔つきが変わる。


 「ああ、しかも明らかに強い個体が先導してた。この街めがけてる来てるかわからねえけど、掠めたとしてもやべえぞあれは」


 「何匹規模?でもバウハウンド何でしょ?」


 「ああ。バウハウンドだ。だが、それでもあの赤紫の目のやつはやばい」


 「サリナが言うなら。赤紫の目…?」


 赤紫の目が何か引っかかった様子のサリナだったが、その思考は次の言葉で流されてしまう。


 「ユナ、探知に何匹ぐらいいた?」


 「200匹は越えてた」


 「200匹!?!?」


 バウハウンドは一つの群れでも5~8匹くらいだ。魔物群衆(スタンピード)と言っても2桁だろうと予想していたレイナは、素っ頓狂(すっとんきょう)な声を出す。


 「ユナちゃんの見間違いじゃなくて??」


 「ユナちゃんの探知の精度は、この目で見た俺っちが保証するよ」


 「レン…。わかったわ、調査団を編成しましょう」


 レンの探知能力はレイナはもちろん、ギルドにも知れ渡っている。そのレンがユナの探知能力を保証するというなら、間違いないのだろう。


 「また調査なの?」


 思いがけずユナが遮る。それに答えたのはサリナだ。


 「ああ、今回はそこらのやつらだと死者が出るかもしれない。だからギルドが責任をもって、その規模と脅威度を把握する必要がある」


 「もしかしたら、ユナちゃんたちが見た群れだけじゃないかもしれないしね」


 「そんな!?」


 駆け出し冒険者で、子どものユナは、バウハウンドが200匹いるだけでも、世界の全部のバウハウンドがそこにいるような気持ちだった。探知に引っかかる魔物がワラワラと増えていく様は背筋が凍るようで、師匠であるサリナが居なかったら、レンが抱きかかえて逃げてくれなかったら、その場で動けなくなってしまっていたかもしれない。

 そんな群れが、いくつもあるかもしれないなんて、ユナには想像もつかなかった。


 「十中八九ないかもしれないけど、それでも”もしも”はあるからね」


 「でも、この様だ。当てはあるのか?もちろん俺は参加するが」


 すっからかんになったギルドを見渡して、言う。


 「おと、ギルド長は出払ってるし…、とりあえず職員かき集めて、緊急依頼出して、呼びかけるしか」


 相変わらずお父さんと呼びそうになりながらも、この後の展開を考えるレイナに、ここぞとばかりに元気よく宣言するのはユナだ。


 「私も調査団参加する!!」


 「ダメだ!!!脅威度調査でそのまま戦闘に入ることも少なくない。だから今回はダメだ」


 即答だった。その鬼気迫る様子に、ユナはたじろぐ。


 「う……、はい…」


 「よろしい。レイナ、俺もとりあえず街を回って探してみる」


 「俺っちはとりあえずパーティーメンバーに声かけるわ」


 「ユリー・ライラックなら安心ね、頼むわ」


 そこはもう大人たちの世界だった。同じ冒険者なのに、子どものユナとは違う世界。


 (こんなときに、ふうちゃんがいてくれれば…)


 空から魔物を探せれば、自分でもついていけるからと思ったからだろうか、叱られてモフモフが恋しくなったのか。

 そう思わずにはいられないユナだった。


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