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第30話「赤紫の目」

まさか30回も毎週投稿できると思ってませんでした。

という個人の感想はさておき、本編をどうぞ!

 「しっかり見てろよ…って、目が赤紫…?」


 それは、確かに魔物図録(まものずろく)に載っているバウハウンドと、同じ姿をしていた。

 だが、目の色が違う。”目の色は赤色”。これが魔物の条件の一つだ。赤紫色では条件を満たしていない。


 「もしかして動物、がっ!!!!」


 サリナが言い切る前に、そのバウハウンドらしき生き物は襲い掛かってくる。


 「オラッッ!!」


 喉元を食いちぎらんと飛び跳ねたバウハウンド(?)を剣ではじくサリナ。

 ()()がぶつかり合って、ガギャギャという鈍い音が響き渡る。


 「おいおい、群れじゃないのに襲ってくるバウハウンドなんて聞いたことねえぞ…」


 「師匠大丈夫!?」


 「ああ」


 そう言って双剣を構えなおす。


 「レン!あれも魔物なのか!?」


 「ああ、俺の経験的には、あれは動物じゃなくて魔物だ。ユナちゃんは?」


 「私もそー思う!きたっ!」


 一番近くにいたからか、またサリナを狙うバウハウンド(?)。だが、先ほどのように跳びかかってこず、突進でもするかのような速度でサリナへ向かっていく。


 「お前ら!できるだけ離れてろ!!」


 「ユナちゃん!こっちだ!」


 明らかに通常のバウハウンドの強さではないことを一回で見極めたサリナは、離れるように指示を出した。

 そして、迎え撃つため、双剣を低めの十字に構え、あえてバウハウンド(?)に向かって突っ込んでいった。


 両者がぶつかり合う刹那(せつな)、双剣をバウハウンド(?)の首の下に回し、そのまま上へ突き上げながら切り捨てる。衝突の瞬間を見極め、それに合わせて腕を振りぬくことができなければ成功しない技だ。


 「すごい師匠!」


 「まだだ!!」


 衝撃を上ににがし、首を切ったかのように見えたが、ややバウハウンド(?)に押し負けていたようで、傷は浅かった。


 「血が出てねえってことは、やっぱり魔物だなこいつ」


 同時にサリナの腕からも、たらりと血がでる。


 「やるな…」


 衝突のすれ違いざまに、突進しながら爪でも攻撃をしていたようだ。こちらも浅いが、魔物には毒を使ってくるものもいる。新種かもしれないこのバウハウンド(?)に毒がないとは言い切れない。そう判断したサリナは、すかさず切り口の血を吸いだして吐き捨てた。

 ある程度離れたユナは、その様子を見て(図録に載ってたやつだ!)などという場違いな感動を覚えていた。


 「ここまで離れればまあ十分か。ユナちゃん、手をつないで」


 「うん!」


 差し出された手をすかさずとる。


「気配隠蔽」


 レンの【気配】スキルの一つ、気配隠蔽は、自身とそれに触れるモノを対象として、気配を抑えるスキルだ。

 突然気配が消えたユナたちを追うように、その方向を見るバウハウンド(?)。鼻もひくひくして、嗅いでいるのが見て取れる。


 「よそ見してていいのか!」


 その隙を見てすかさず投げナイフを投擲(とうてき)する。だが、それも横に飛び跳られ(かわ)された。

 そのまま一定の距離を保って対峙(たいじ)するサリナとバウハウンド(?)。


 「まるで考えてるみたいだな…」


 先ほどから、一つ攻撃をするごとに間が開く。通常の赤い目をした魔物なら、こんなことはなく、考え無しの攻撃が連続する。


 「レン!師匠助けなくていいの!?」


 「ユナちゃんシーッ。気配隠蔽は声まで隠せるわけじゃないから」


 「あ、ごめん」


 「サリナはね、ずっとソロで12層という高階位(ランク)まで上がってきたんだ。下手に入るより、一人のほうがずっと強いよ」


 「そうなんだ…」


 ユナは心のどこかで寂しい気がした。それは、ずっと独りぼっちの師匠にか、それとも、弟子なんて邪魔なんじゃないだろうかという自分の存在にか。



ーーー



 それからも、何度かサリナとバウハウンド(?)は刃を交えるが、お互いに致命的な攻撃には至らず、時間が過ぎていた。

 そこに、ユナの探知が引っかかる


 「何これ!?」


 「声」


 「あ、ごめんなさい」


 「気を付けてね。どうしたの?」


 「魔物が、10、20まだ増えてる」


 「ホントか!?あのバウハウンド、はぐれたんじゃなくて先行してたのか!?」


 気配隠蔽も気にせず、レンが叫ぶ。


 「サリナ!!群れが来てる!!逃げるぞ!!!」


 そこでサリナは察する。このバウハウンド(?)が、群れを待つためにサリナをあえて足止めしていることを。


 「おいおいマジかよ…。わかった!今行く!」


 決定打に欠けるサリナは、このバウハウンド(?)を無理やり倒すのではなく、御用達のアイテムたちで逃げる選択をした。

 風上へと、バウハウンド(?)に対して弧を描くように走り、そこから(にお)い玉を投げる。(くさ)いにおいのする煙で、鼻のいい魔物の鼻をつぶしてかつ視界も塞いでくれる逃走用のアイテムだ。

 だが、それも横に躱そうとするバウハウンド(?)。しかし、サリナのほうが一枚上手だ。投げた(にお)い玉は一つではなかった。風上から横一列で襲い掛かる(にお)いに。バウハウンド(?)はたまらず逆方向へと逃げ出した。

 同時にサリナもレンとユナのほうへと駆け出し、合流した。


 「ギルドに報告だ、急ぐぞ!」


 サリナが先導する。


 「おう!ユナちゃん、ちょっとごめんね」


 レンがユナを、所謂(いわゆる)お姫様抱っこのように抱えて走り出す。


 「気配隠蔽」


 「あ、ずるいぞ」


 ()れてないと対象にならないことは、サリナも知っている。


 「走りながら手をつなぐわけにはいかないだろ?自前で頑張れ」


 そうして、バウハウンド(?)の調査は、異様な雰囲気の中、ひとまず終わったのであった。


ユナ、そしてこの物語の誕生日は7/27です。

夢で見た、森の中を逃げる少女。それがこの物語の始まりです。

ユナ、お誕生日おめでとう。

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