第22話「階位制度」
メンバーカードの発行でレイナに呼ばれたユナは、サリナと一緒に受付に向かった。
「レイナ、声大きすぎ」
「そう?冒険者たち相手じゃこれくらいじゃないと」
レイナが真っ白なカードを差し出す。
「はい、これがユナちゃんのメンバーカード!身分証明書にもなるから、なくさないよう気を付けてね」
「うん!」
ユナは自分の名前が書かれた真っ白なカードを見る。自分だけの、自分の名前が入ったカード。そして、冒険者の証。
名前の右には、”1層”と書かれていた。
「ここに書いてある1層って1番のイチ!?」
サリナが認めてくれたことに浮足立っているユナは、そう思って口にした。
「んなワケあるか。冒険者ってのは基本1層、1番最初からってことだよ」
「なんだー…」
「試験とか、学園を卒業したりとか、実績があるやつらはもう少し上から始まるけどな」
「ふーん。師匠は?師匠は何層なの?」
「俺は12層だ」
「…それってどのくらいすごいの?」
「まあ一流ってことだな。レイナ、まだユナにカードの説明してないんだろ?説明してやってくれ」
「じゃあユナちゃん!ちゃんと聞いてね!」
レイナはここぞとばかりに張り切って説明を始めた。
「まずはこの階位制度、”層”の説明ね」
なにかごそごそと用意しながら、サリナは続ける。
「その昔、ギルドが大きくなり始めて、階位制度ができたころは、迷宮攻略全盛期だったのよ。迷宮は地下に行けば行くほど強くなるから、何層まで行けたかってのが強さの証だったの。それが今も引き継がれて、強さの証明に、”層”という言葉が使われてるの」
どこに持っていたのか、巨大な三角形に横線がたくさん入った図が描かれた紙を取り出す。
「はいこれが階位の構造。一番下が、一番多い0層の人たちね」
そう言って、三角形の下、1番面積が多いところを指さす。
「0層って、いまの私がもらったこの1層より下ってこと?」
「ええ、そうね。1層はユナちゃんみたいな、冒険者としてやっていく意思のある人たちが1番最初になるランクなの。サリナが言ったみたいに、他で実績がある人は最初から上の層だったりするわ。例えば、学園の卒業した人は3層から始まったりね」
「がくえん…」
学園の想像が着かないユナは、ぼんやりと繰り返した。
「一方で、身分証明書の発行とか、どこかに所属しているという証明が欲しい人たちは0層。非冒険者としての所属になるわ。さっき説明した"最後の砦"としての役割がこれね」
「へぇ〜。じゃあ師匠の12層はどれくらいなの?」
「ここね」
そう言って、下から4つ目、上から3つ目に当たる層を指さす。
「この下の5〜9層が、冒険者の中でも1番多いの。そこから抜け出した人たちが10~19層の人たち。ここまでいけば一流冒険者ね」
「一流!」
師匠すごい!という眼差しを、サリナに向けるユナ。
それに対して、少しむず痒そうにしているサリナだった。
「見直したか?」
「うん!でも、その上はなに?」
ユナは三角形の、下から5つ目、上からは2つ目のところを指さす。
「ここと、このてっぺんのところはね、超一流よ。とくに一番上の30層越えは伝説級ね。私が知る限りじゃ、5人ってとこかしら」
「じゃあ、師匠もまだまだなんだ」
それに対して、サリナがぼやくように言う。
「30層越えともなると、国王と同じレベルの発言力や影響力を持つようなやつもいて、そうなってくると、もう自由に冒険者家業ってレベルでもなくなってくるんだよな。というか国王も30層越えだし」
弟子にまだまだと言われ、思わず言い訳じみたことを言い出したサリナを、レイナは生暖かい目で見守った。
そこにユナが一つ、質問をする。
「もしかして、30層まで行ったら、新しいルール、ほうりつっていうの?それを変えることってできたりするの?」
ユナの村では、村長がルールを決めていた。この国の王なら、この国のルールを決められるのではないかと、ユナはそう思った。
「うーん、決めるまではできないでしょうけど、それに関わることならできるんじゃないかしら」
それを聞いたユナの答えに、場は凍り付くことになる。




