第191話「そんなのって」
「解釈は変えられる。解釈が変われば、在り方は変えられるかもしれない」
「在り方?」
「そうだ。スキルは、教会で調べてもらうだろ?」
「う、うん」
ユナにとって、教会で受けた託宣は最悪の思い出の一つだ。こんなスキルでなければと、もう数えきれないほど思ってきた。
「では、教会で教えてもらった自分のスキルについて、どれくらい納得している?」
「ぜんぜん!」
ユナは勢いよくそう答えてしまったが、すぐにスキルに関わることを話してしまったことに気が付いて、手で口を塞いだ。
「……ふっ、ハハッ!!」
眼鏡が怪しく光った気がした。実際にはそんなことはないが、その高笑いはそういった怪しさを含んでいるような、不気味なものに見えた。
「いいな、実にいい」
エリックはそう独り言のように呟いてから、ユナのことをまじまじと見つめる。何を考えているのかよくわからない視線に耐えられなくなったユナは、話を続ける。
「その、エリックさんは「エリくん」
「……エリさんは「エリくん」
「………エリくん」
「よろしい」
「エリくんは、【敏感】というスキルの在り方?っていうか、その、う〜ん……」
ユナはうまく言葉が出ないでいた。だから、言葉を借りることにした。
「自分のスキルに、どれくらい納得してる?」
「ぜんぜんだ!!」
エリックも、きっとユナの言葉に合わせてくれたのだろう。その一致は、確かにユナの心を大きく揺さぶった。
「スキルなんてのは、教会が勝手に決めたラベリングに過ぎない」
「ちょっ、お前!」
アラタが思わずつっこむ。この世界において、スキルやスキルにまつわる事柄に携わる教会を批判するということがどういうことか、どういう意味を持つのかということを、アラタは重々知っていた。
「なんだ?信者か?」
「いや、そういうわけじゃないけど」
だからこそ、アラタはそのエリックの振る舞いには危険を感じざるを得なかった。
「ここは魔法学園を有するユリクスセレファスだぞ?聖教国家セレクリネアスや、その属国であるヨトゥンダムならまだしも、こんなところで教会を批判したところで何が起きるわけでもない」
「…はぁ」
アラタは手を眉間に手を当ててため息を漏らす。エリックの勢いについていけていないようだ。
一方で、ユナは教会に対して何か意見するのがそんなに世間的にはダメなことなのかなと、わからないでいた。
「なればこそ、だ。自分のスキルの在り方というのは、他人に決められた形だけであるはずがない」
「うーん?」
ユナはまだ難しい言い回しをされると、何を言っているのかよくわからなかった。エリックはその様子を察してか、具体例を示す。
「はぁ…。例えばだな、僕であれば【敏感】とそうスキルを決めつけられたワケだが、君のスキルを詳細に把握できると点で言えば、【分析】とも言えるワケだ」
ユナは、エリックのその考え方に衝撃を受けた。
「そんなのって、アリなの、かな」




