表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
192/200

第190話「スキルって、変えられますか」

「このスキルのことをより深く知るために、協力してほしいんだ。君に」


 エリックの視線がユナに突き刺さる。こんな風にド直球に求められるのは初めての経験で、ユナは背中がむず痒くなるような感覚を初めて味わった。


「ユナ」


 アラタが振り返って声をかけてくる。


「相手は上級生とはいえ、断ってもいいんだぞ」


 そういわれて、エリックのネクタイの色を確認する。ユナたち1年生が身に着けているネクタイはシックな感じの暗い赤色だが、エリックが身に着けているのは森の中のような、深緑の色合いだった。確か、あれは2年生の色だ。


「うっ…」


 そんなことに気が付いていなかったユナは、その情報を知ってしまったばかりに緊張し始めてしまった。


「そいつの言うとおりだ。別に無理にとは言わない。だが、君にもメリットはある」


 そいつ(・・・)呼ばわりされたアラタはむっとした様子だったが、話を遮ることはしなかった。


「君は、そのスキルをうまく制御できていないな?」


「……」


 制御できていないわけではないが、より精度をあげたいという点で、半分あたりで、半分外れといったところだろうか。ユナはどう答えていいかわからずに悩んでいると、エリックはそれを肯定と受け取ったのか、提案を続ける。


「わざわざグラウンドに来てまでスキルを使いに来るやつは、訓練と相場が決まっているからな。そしてそれをうまく扱えず、無差別に放って僕に当てた。それが何よりの証拠だ」


 得意満面といった様子で推理を披露するが、ユナはやはりどう答えればいいかわからなかった。こういったタイプの人間に対するコミュニケーションは、まだユナの経験値では足りていなかったようだ。


「僕が被験体になろう。こういっては何だが、【敏感】は君のスキルをかなり詳細に評価できる。相性がいい」


「でも、嫌なんじゃないの?」


 彼は”このスキルのことが嫌いだ”と言った。服装にしても、できる限り【敏感】の特性を覆い隠すような格好をしている。スキルを身体に受けるというのも、それなりに嫌なことなんじゃないかと、ユナは思った。


「そうだな、不愉快だ。けれど、その程度のことで協力してもらえるなら、自分の多少の不愉快さなど些末な問題さ」


 手で顔を覆いながらエリックはそう言った。決めポーズかなんかなのだろうか。指の隙間から見える眼光がやたら鋭い。


「ユナ、断っておいたほうがいいんじゃ…」


 アラタはエリックの雰囲気に若干引きながら、ユナに提言した。


「ん~……」


 悩む。ユナはまだエリックのことを全然知らない。スキルの【探知】以外の部分がバレてしまう可能性もある。


「あの」


 けれどユナは、なんとなくこの人は大丈夫だと思った。そして同時に、この人の力になりたいとも思った。自分と同じような、大変なスキルを背負ってしまった境遇を持つ者同士として。


「スキルって、変えられると思いますか?」


 だからこそ、素直にその質問がこぼれた。ずっと脳裏にあった、このスキルから解放される(すべ)


「いや、無理だろう」


 エリックのその答えに、ユナはガクッと肩を落とした。


「……だが」


 その言葉が続いて、ユナは顔をあげる。


「解釈は変えられる。解釈が変われば、在り方は変えられるかもしれない」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ