第180話「嗅ぎまわり」
「香りか、確かにしたような気がする」
「どんな匂いだった?」
「少し甘いような、華やかさを感じるような…」
「オレも、似てる。少し青臭さもあった」
「うーん、森を通ってきたのは変わらないだろうから、青臭いのはありそうかな」
「それも、そうか」
ユナはふと、自分の制服を嗅いでみた。毎日洗うわけではないから、まだ何かしらの匂いが残っているかと思ったが、ユナの嗅覚で嗅ぎ取れるような匂いは特に残ってはいなかった。その様子を見て、リンも真似して自分の制服を嗅いでいた。
「すんすん……、わかんないね」
ちょっとおかしくって、ユナとリンは笑った。
「でも、よくよく考えてみれば匂いなんて消えちゃうかもだし、わざわざ嗅いで回るなんてできないもんね」
ユナは自分が見知らぬ女生徒に声をかけては匂いを嗅がせてもらう姿を想像してみた。そこには変態がいた。
「……そうだね」
「となると、やっぱり遺跡の魔術陣について調べるか、同じ背格好の女生徒を調べるか、元通り渦の魔術陣を調べるか、だね」
「ちょうど3人、3つの仕事、か?」
ググリがそんな提案をする。
「でも、女生徒の姿をきちんと見えて覚えてるのはググリだけでしょ?女の子に聞いて回れる?」
「うっ…」
「少なくとも、ユナちゃんかわたしが一緒に行かないと」
ググリは最近打ち解けてきて、普通にユナやリンとは話せているが、初対面の人と笠で顔が見えない状態で話すというのはなかなかにハードルが高い。そのことはググリも認識しているようだった。
「とりあえず今日は時間もあれだし、魔術陣探ししようか」
「そう、だな」




