第176話「緊張の週明け」
週明け、ユナはほっと一息をついて、放課後を迎えた。
「よかった…」
もしバレていたら、朝にでもクラ先生から名指しで教室の前に呼ばれるんじゃないかとか、お昼に職員室に呼び出されるんじゃないかとか、心臓に悪い妄想ばかりしていたが、どうやらそんなことはないようだ。
「何がよかったんです?」
ユナの小さな独り言も聞き逃さないのは、前の席のイツツだ。
「あ、いや、その…、無事に週明け終わったなって」
「確かに、休み明けは休日と生活リズムが違うと、ちゃんと起きられるか不安だったり疲れたりしますわね。夜更かし、なんてしていると特に」
その妙に強調されたいい方に、ユナは背筋がゾクリとした。なんでも見透かしているかのような、落ち着きを払った言い方が、どこか胡散臭いのに信憑性があるような気がして、やはりユナは苦手だった。
「あはは…」
この学園に来てから、愛想笑いという技を覚えたユナは、これが人付き合いの大変さなのかなと思いながらやり過ごした。
「何の話してるの?」
「リン!」
「いえ、なんでも。それでは失礼します」
そう言って、イツツはそそくさと席を立って教室を出ていってしまった。
「…嫌われちゃったかな?」
「いや、誰にでもあんな感じの気も」
「でも、ユナちゃんは仲いいよね?」
「えっ!?」
他人から見るとそういう風に見えるのだろうか。ユナはショックだった。
「だって話してるところあんまり見ないし」
「そうかな?」
ユナは嫌々ながら、イツツの教室での様子を思い返してみる。確かに、落ち着いて静かな佇まいばかりが思い当って、誰かと談笑しているようなイメージは無かった。
「そうかも?」
「じゃあやっぱりユナちゃん仲いいんだ」
「いや、それは違う」
ユナはキッパリと否定した。
「そこまで言わなくても」
「う~~」
確かに言いすぎな気もするが、きちんと否定しておきたい気持ちもあるユナは、人に伝えることの難しさに思い悩んでいた。愛想笑い以外にも、人付き合いで覚えなければいけないことは多そうだ。
「行くか?」
いつの間にか後ろに立っていたググリの声だ。
「わっ!?ビックリしたー、そうだね、部室行こうか」
「うん」
ユナは助かったと思いながら、問題は後回しにして部室へと向かった。
ーーー
「森の件ですが」
部室について、いの一番にコリー先生がそう告げる。ユナはドキッと心臓が跳ね上がった。まさかこのタイミングか。
「どうやら近々調査かなにかあるようで、封鎖されるそうです」
「封鎖?」




