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第169話「探索準備」

「ね!これでおあいこってこと」


 おあいこ。そう言われて、実際にはそうでないことに思い至ったユナは、少し心が痛んだ。ユナの【探知】はスキルという(てい)で話しているし、このユリクスセレファスに来てからはずっとそういうことにして過ごしてきた。しかし、本当のところは違う。ユナの【探知】、正確には【魔素探知】は、ユナの【モンスターテイマー】のスキルのおかげで使うことができる派生技のようなものだからだ。けれど、本当のことを言うわけにはいかなかった。師匠であるサリナが特別だっただけで、【モンスターテイマー】というスキルが普通の人にとってどういう存在なのかというのを、ユナは恐ろしいほど身に染みて知っているから。


「そう、だね」


 ユナはなんとか苦笑いで誤魔化した。嘘をつく必要の無かった生活をしてきたユナにとって、隠し事はまだしも、嘘をつくことはとても心苦しい感じがした。それも、先ほど信頼している人と言ってくれたばかりの人なのに。


「オレは……」


 ググリが言い淀む。ググリからしてみれば、他の二人が自分のスキルを教えるという形で信頼を示しているところ、自分だけが隠している状態だ。言わなきゃいけないという気持ちになっているのだろう。


「その、わたしが勝手に言っただけだから、全然、言いたくなかったら言わなくて大丈夫だからね」


 察しのいいリンがフォローする。なんだかんだと言っても面倒見がいいというか、普段コリー先生と話すときや、ミルクイス先生が来たときも率先して話してくれたのはリンだった。ユナはふと、この部活のリーダーがいるとすれば、リンだなと思った。ユナが最初にリンに感じていたお姉さんな雰囲気というのは、あながち間違っていなかったのかもしれない。


「ああ、すまない…」


 やや沈黙が流れたが、気を取り直してリンが進める。


「えっと、次は武器かな?」


「そうだな」


「みんななんか持ってるの?」


「オレは剣がある」


 そう言いながら、ググリは机の上においてあった鞘をとり、中身を取り出した。使い込まれているような、よく手入れのされた長剣だった。


「「おお~…」」


 装飾などがあまりない、無骨な感じがググリの雰囲気に似合っている気がした。ユナとリンはそろって感嘆して、リンに至っては拍手もしていた。少し気恥ずかしくなったのか、ググリはすぐに剣を鞘に戻した。


「私は木剣なら…」


 ユナは素振りを続けているものの、結局まだ鉄剣は重くて持てるまでには至っていない。短剣という手もあるのだろうが、父が死んでしまった今、ユナにとって長剣は忘れたくない、かつ憧れのものとなっていて、それ以外というのは考えられなかった。


「まあ無いよりはいいね。かくいうわたしは何もないんだけど」


「おいおい、誘って、おいて」


「まあそこは明かり役と魔法とか、後方支援的なところで」


 そう言ってまた【灯火(ライト)】をつけてみせる。


「そういうことに、しておく」


「よし!じゃあググリに先頭に立ってもらって、ユナちゃんが真ん中、わたしが後ろかな」


「ああ」


「うん」


「なんか探索みたいでワクワクするね。…よし!じゃあ今夜、行くぞ!おー!」


 リンがこぶしを突き上げる。


「お、おー」


 ユナは一応それに乗って手を上げたが、ググリは我関(われかん)せずといった様子だった。


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