第159話「研究棟へ」
「ユナちゃん!行こ!」
ミルクイス先生から依頼を受けた翌日、放課後になるやいなやリンがぶつかりそうな勢いでユナの机までやってきた。
「う、うん」
ユナはリンの勢いに気圧されながら、カバンに荷物を仕舞って準備する。
「ググリも!」
そのリンの声は、まだ出ていった人もほとんどいない教室内によく響いた。ググリはすこし間を置いてからコクリとうなずいた。恥ずかしかったのだろうか、顔が見えないのでよくわからなかった。
教室を出て事件の現場となった場所へと向かいながら、ユナはリンに聞いてみる。
「リン、テンション高い?」
「バレた?実はこういう人に頼られるって言うか、部活してるって感じがちょっと楽しくって」
「…ちょっとわかるかも」
「だよね!ググリは?」
リンは後ろ向きに歩いて、ググリの目を覗き込むように聞く。
「……オレも」
ググリは顔を少し背けた様子で、そうぽつりと呟いた。やはりどこか恥ずかしいのだろうか。その顔がどうなっているのか、ユナは気になった。
「だよねだよね!なんか学園ってもっと難しい感じの場所だと思ってずっと緊張してたんだけど、っていうか実力テストとかはすっごい緊張してたんだけど、なんかやっと馴染んできたって言うか、楽しいって言うか…」
リンが言葉にしきれなくてもどかしそうにしている様子を見ながら、ユナも同じようなことを感じていた。確かに、ようやく学園で肩肘張らずに過ごせるようになってきたような気がした。
それからもしばらくリンが中心になって、話しながら目的地へと向かった。
ーーー
事件が起きた場所、それはユナたち中等部の校舎のとなりにある、高等部の校舎だ。そこは研究棟とも呼ばれていて、中等部から上がってきた人だけでなく、研究職の先生方の一部もこの棟に部屋を持っていた。
そして現場となったのは、そんな研究棟の3階、北から2番目のお手洗いだった。




