第152話「独り立ち」
「と言っても、見せられる場所なんてあまりないんだけれどね」
魔術陣研究会は依然として積まれた本で覆われている。やっと歩けるくらいの場所はあるけれど、果たして棚に入りるのかどうかといった具合だった。
「それじゃあ活動内容の説明とかから始めますか」
そうリンがコリー先生に提案して、なんとか座席を確保するところから始めた。椅子をどこかから集めてきて、5人で座る。
「二人は、どれくらい魔術陣を知ってますか?」
「オレは、ちょっと知ってる」
「拙者は全く」
「では、魔術陣そのものの説明から始めますか」
ーーー
ユナが初めて来た時のような、分類の説明から始めて、途中熱が入ったところにリンから突っ込みが入ったりしながら、なんとか一通り説明を終えたのだった。
「ううむ、結果的に魔術として成立するというのはわかるが、それに至るまでの理屈がわからないというか…」
「メイゲツ、意外と頑固」
「ぐっ、確かに拙者は頑固かもしれないが、ググリはどうなんだ?」
「オレは、やっぱり興味が、ある。面白い、と思う」
「うっ、そうか。だが、そうだな。ググリが居心地も良く、内容も気に入っているというのなら、やはり一緒に入部するとしようか」
「……」
「ググリ?」
「メイゲツ」
そのググリの声は、妙に気迫があり、メイゲツは気圧される感じがした。
「ど、どうかしたか?」
「その、だな」
「ああ」
二人の緊張した様子につられて、リンもユナも静かに二人の様子を見守っていた。
「オレ、メイゲツには無理してほしくない」
「そんなことはない。拙者は…」
そこで、メイゲツはググリと目が合う。
「……そうだな。拙者はあまり魔術陣には興味が無い。だが、それでもググリと一緒にいる。これが何より大切なことだと思っている」
「……ありがとう。でも、オレは、一人でも頑張ってみたい」
「それは、うむ…」
しばらく沈黙が流れる。
先に意を決したのはググリだった。深い呼吸の後で、発する。
「そのために、学園に来た」
「うっ…、その目はやめろと言っているであろう」
ググリの目がどんな風になっているか、ユナからは見えなかった。
「そうだな。……独り立ち、の時期か」
また沈黙が流れる。メイゲツは、なにか一入といった様子だった。涙でも流しているのか、上を向いて鼻をずびりとしていた。
「コリー殿!!」
「は、はい!?」
「ググリを頼む」
そういってメイゲツはバンバンとコリー先生の肩を力強く叩いた。
「は、はい!痛い!痛いですから!」
ググリとメイゲツの二人がどんな関係で、どうして学園にやってきたのかユナは全く知らなかったけれど、この二人の関係がどこか羨ましいと思うユナだった。




