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第139話「難しい本」

「調合における魔術陣の役割について…?」


 その本は、表紙のど真ん中に魔術陣があり、それに添わせるように周囲に様々な花や草が描かれていた。いかにも魔術陣が主役ですと言わんばかりの表紙だ。


「魔術陣ですか。ユナさんにはちょっと早いかもしれないですね」


「どうしてですか?」


 ユナはちょっとむっとしながら聞いてみる。その様子に少しばかり疑問を抱きながらも、ベルは優しく答えてくれた。


「魔術陣は単純に難しいんですよ。スキルはほとんど直観的に使うことができますし、魔法でも無詠唱からちょっとした文章を唱えるだけでいろんなことができます。使用感的にもスキルに近いですしね。感覚の魔法と言ってもいいかもしれません」


 ユナはまだほとんど魔法に触れたことがなかった。自身で魔法を使った覚えがない。にーちゃん――偽神――に修行を付けてもらったが、できたことといえば魔素流入ぐらいで、魔法にまではいかなかった。


(魔力…)


 ユナには普通の人が使っている魔()は使えない。にーちゃんが使えなくしたからだ。だが魔法は使えるとも言っていた。けれど、不用意に使えば気づかれる人もいるかもしれないから、ユナは魔法にちょっとばかり躊躇いがあった。

 そんなユナの悩みを知らないベルは、魔術陣の難しさに説明を続ける。


「一方で魔術陣は圧倒的に覚えることが多い、理論の魔法と言えます。単純な構造の魔法は量産できるので生活雑貨などには向いてますが、それ以上となると一気に複雑になります。それに、失敗すればまったく発動しないか、ボンッ!と爆発してしまいますしね」


 ベルは胸元でグッと握られた手を、横に広げるようにしながら開くジェスチャーをした。ボンッという爆発を表現したかったようだが、ユナにはパッと花開くようにしか見えなかった。


「…実は私もちょっと魔術陣を試してみようと思ったことがあったのですが、どうにも古代語や星の巡りには興味が持てなくて……」


 少し照れるようにしながら話すベルだったが、ユナはその赤くなっている様子よりも、ベルのような上級生でも魔術陣を諦めるんだということに、恐怖のような何かを少し感じた。だが、ユナはそこで諦めてしまうわけにはいかなかった。


「それって、古代魔術陣とか、天廻魔術陣とかですか?」


「良く知ってますね!?たしかそんな呼び方をされていたと思います。魔術陣は興味ありますか?」


「はい!」


 ユナは力強く答えた。


「わたしはその魔術陣の本は読んだことないですけど、どんな内容が分かったりしますか?」


「うーん…、ちょっと見てみますね」


 適当に開いたページにはずらっと文字が並んでいて、ユナは一瞬怖気づいてしまったが、気を取り直してとりあえず目次を見てみることにした。


「調合とは、調合の基礎、魔術陣調合、長時間稼働における運用とその問題点、魔術陣サバイバル術…」


「なんだか論文みたいな、技術書みたいな不思議な感じね。最後は急に俗っぽい感じだけれど」


「そうなんですか?」


 ユナが読んだことのある本の中に論文は無かった。ひょっとすると家には置いてあったかもしれないが、難しすぎて無意識に避けていたのかもしれない。


「そうですね。論文と言えば前提の説明から始まって、どんな条件でどんな結果が得られたか、どうところが改善できそうかというのが書かれているので、最後以外はそんな流れに見えないですか?」


「確かに?」


「中身はどうですか?」


 ユナはさっき見たような、ずらっと文字が並んでいるページを飛ばしながら、自分でも読めそうなページをぺらりぺらりとめくりながら探してみる。ベルはその様子をじっと見守っていた。


「あ、魔術陣だ」

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