第135話「園芸部の部室?」
温室に入ってからもベルとエゼンの仲は変わらず、フォローしあっているけれど折を見ては険悪な雰囲気を出している。そのたびにユナは一番前の列を譲って後ろに回ったり、エゼンにイツツのことを聞こうと思ってまた前に行ってみたりしていた。
最初にあった勢いはどこへいってしまったのか。そんな風に悩んでいるうちに温室の見学は終わりに近づいていた。
「最後は部室の案内ですね」
温室を出た一行は、ベルについていく。部室と言うからてっきり部活棟に行くのかと思えば、正反対の方向だ。少しずれるけれど魔術陣研究会もある別棟の方、学園でも端っこの方へと歩いていく。途中からは学園を囲うように存在する森の中に入っていったが、きちんと道は舗装されており、歩きやすかった。
「こちらが園芸部の部室です」
そこには小屋というにはあまりに大きいけれど、小屋のような形をした建物があった。屋根はユナの身長よりずっと高く、3メートルはあるかというくらいだった。あけっぴろげの入り口からは、多くの棚がずらりと並んでいたり壺や樽が敷き詰められているのが見えた。
「部室っていうか…」
誰かがそうつぶやくと、エゼンがそれに答える。
「そうだ。ここは部室ではなく倉庫。園芸部では愛でるためだけに植物を育てているわけではなく、薬学研究部と合同で薬の研究も行っていたり、いざというときに食料が提供できるよう、料理研究部と合同の食糧庫を兼ねていたりするんだ」
そう言いながらエゼンはチラリとベルの方を見る。
「少し驚かせたかっただけです」
「はぁ…、部室といえるかはわからないが、こっちは部屋になっている」
倉庫の横にはドアがついていて、そこから別の部屋へと入れるようだ。一応鍵のついているきちんとしたドアだったが、部活中のためか空いていた。
「こちらは調合室。病気に効く薬の調合も行うが、料理研究部向けのスパイスの調合なんかもここでやる。強いて言うならここが部室だ」
何かを煮だしていたり、ゴリゴリと潰していたり、火にかけていたり、様々なことが行われていた。壁には様々な大きさの収納がついた棚や、よくわからない色をした瓶がずらっと並んでいたり、やたら分厚い本が置いてあったりした。
「エゼンさん!その子たち、新入部員ですか?」
「カルネか。いや、まだ見学中だ」
「そうなんですね!あたしはカルネ!みんなよろしくね!」
「「よろしくお願いします」」
「元気いいね!いいよいいよ!ここはくら~い人が多いからさ!」
「真面目な人な。お前はいいのか?」
「あたしはほら、水出し役だしさ」
「本は読んどけと言っただろ」
「カルネさん」
その会話に割って入ったのはベルだった。
「あ!部長!いたんですね!エゼンがいじめるんです!!」
「それは良くないですね~」
「ね~!」
「はぁ……」




