第132話「どんな感じなんですか」
明らかに上級生とはいえ、同じ制服を来ている子どもどうしの人に子ども扱いされたことに、ユナは思わずムッとしてしまった。
「エゼンさん、彼女も立派なレディですよ」
ベルはそう言いながら、エゼンに向かって真っすぐに微笑む。
「すいません、失礼しました。それで、彼女は?見学希望者ですか?」
そのエゼンと呼ばれた少年は、ユナからしてみればとても年上の上級生に見えたが、それは身なりや立ち振る舞いがきちんとしているからで、実際にはリンと同じくらいの歳のように見える。平均よりは少し高めの身長と明るめの茶髪に、ユナはレンレンのことを思い出していた。
「いえ、ユナさんは…、そうですね、わたしのお友だちです。少し話をしていたんです」
そう言いながらユナの方を見るベルだが、ユナはレンレンのことを考えていて、聞けていなかった。それを察したベルは続ける。
「…わたしとしては、入っていただけると、嬉しいんですけれど」
「えっ?」
「いかがでしょうか?園芸部は」
「う〜ん…」
ユナは想像してみる。
花は好きだ。色とりどりの花に囲まれて、ときどき薬草の知識を覚えたりしながら、ベルさんと一緒に放課後を過ごす。薬草の知識とかがあればにーちゃんーー偽神ーーとの森での生活も、もう少し楽だったりしたかもしれない。それに、もっと華やかで、冠を一緒に作ったりして。
「他に、やらなきゃいけないことがあるので、ごめんなさい」
そこまで想像して、それでもユナはやっぱり園芸部には入れないと思った。ここでは、自分のスキルのことをもっと知ることは、できないから。
「残念ですね。でも、ときどき遊びに来てくださいね?」
「はい!」
「それでは、そろそろいいですか?」
ずっと待っていたエゼンが、ベルに催促をする。
「ええ、待たせてしまったわね」
「いえ、昨日イツツ様と話していたときほどでは」
その名前に、ユナは思わず固まってしまう。しかも様付けときた。
「そう?じゃあそろそろごめんなさいね、ユナさん。…ユナさん?」
「……その…」
ユナは続ける言葉が思いつかず、それでいてユナのその雰囲気に、ベルもエゼンもどうしたものかわからなかった。
「……エゼンさんは、イツツさんと、どんな感じなんですか?」
「なんだ?急に」
「答えてください!」
今日のユナには勢いがあった。悩んで思いつかないなら、今日は言ってしまおうと、そう思った。果たして、その勢いに当てられたのか、エゼンは一拍置いて答える。
「尊敬する、とても親切なお方だ」




