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第125話「尾行」

 イツツを見つけたユナはさっと陰に隠れた。隠れたと言っても角で見えないように下がっただけで、その様子は周囲の注目の的だ。しかし、イツツしか見えていないユナは気づいていないようだ。


「なにしてんだろう」


「なんか可愛いね」


「ふふ」


 その周囲の言葉でやっとユナは自分が見られていることに気づく。


「あ、その、、アハハ……」


 ユナはそそくさとその場を離れていった。



ーーー



 イツツの行く先は玄関だった。歩いていく方向から見当をつけ先回りしていたユナは、周囲の様子を伺いながら物陰に隠れる。

 校舎の玄関からはどこへも道が続いている。見失うわけにはいかなかった。


「ったく、あいつはどこに…、あっ!」


 その男の声はユナの後ろから聞こえてきた。さっきよりは周囲に気を配れているユナは、その声に気づいて振り返ってみたものの、少し誰かの背中が見えただけで、姿はすぐに消えてしまった。


「あれ?」


 ユナに向かって歩いてきていたような気がしたが、戻っていったのだろうか。


(なんか聞いたことある声だったような?)


 そう思ったユナだったけれど、本来の目的であるイツツのことを思い出し、すぐに切り替えて様子を探る。


「あ!」


 思いがけず声が出てしまったが、聞こえなかったようだ。イツツはもう視界の隅。外に出ていくところだった。


()っ!」


 慌てて靴を履き替えて、ユナも外へ追いかけていく。



ーーー



 外は植木などの隠れる場所も多く、人々は目的地に向かって歩いているせいかユナのほうに気が付く人はほとんどいなかった。


(気づかれてない、かな)


 ユナはなんなくイツツを追跡し続けていた。イツツは割と歩く速度が遅いようで、隠れながら追いながらのユナでも間に合う速度だった。お(しと)やかと言うのだろうか。


 そうして追い続けた先は、ユナも知っている場所だった。


「庭園…?」


 そう、そこはユナが屋上から見つけた場所。色とりどりの花で溢れた庭園だった。


「―――」


 話し声が聞こえる。


 庭園は背の高い木々や生垣、花々も多く、ユナは話し声が聞こえるくらいまで近づくことができた。


「イツツさんもお花に興味があるんですか?」


「ええ、嗜み程度ですけれど。ふふふ」


 イツツのほかにも聞こえる声。誰かと話しているようだ。生垣の隙間から覗いてみる。


(しゃがめば見えるかな?)


 それはユナも知っている人。


(ベルさん?)


 イツツと話しているのは、ブルーベルだった。その様子は傍から見ていても上品さがあって、ユナからはさも知り合い同士で話しているかのように錯覚するほどだった。


(二人は知り合いなのかな?)


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