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第118話「天廻魔術陣」

「そして3つ目。僕の専門である古代魔術陣だ。今はもう失われてしまった技術なんだけど、現代魔術陣にどうしたら転用できるかという研究をしているんだ」


「失われてしまった?」


 ユナの思いついたまま口をついて出た言葉に、待ってましたと言わんばかりにコリー先生が生き生きと語り出す。


「古代魔術陣とはその名の通り、古き時代の魔術陣で、天廻魔術陣(てんかいまじゅつじん)よりは後にできたと推察さるんですが、天廻魔術陣の一部は現在でも使える一方で、古代魔術陣はただの一つでさえ起動することができていないんです。現代において一般的に普及している魔術陣は、天廻魔術陣を現代に即した形で翻訳したり簡素化することでその力を発現させました。おそらく古代魔術陣についても、天廻魔術陣をベースとして古代の言語、つまりは古代語を用いて魔術陣を発展させてきたことが伺えるのですが、それがどうにも現代のものと全く違う文化体系に基づくもののようで、文化どころか人体や環境、果ては天体の構図まで違っているかのようなレベルで全くの別物と言っていい魔術陣なのです。そのせいで現代の僕たちでは扱うことができないわけなんですが、ではなぜ使えないのか、そしてどうすれば使うことができるのかをどうしても知りたい。そうして研究を始めたのですが、これがどうにも書いてある古代語だけでは現代の技術ではどうしようもないため、形状の差異を取るところから始めてみたんですが――」


 パンパンとリンが手を鳴らす。


「先生、そこまで。ユナさんがのぼせちゃってます」


 頭からぷしゅーっと音がしそうなほどに、ユナの頭は熱くなっていた。

 せっかく勉強するためにきた学園だからこそ、話しはきちんと聞いておきたいと真面目に頑張ろうとしたユナだったのだが、古代だの天廻だのといった未知の単語たちでも手一杯なのにコリー先生が話し続けることで情報の流れは止まらず、ユナは考えているのに考えていないような、今までにない脳の暴発を体験することになったのだった。


「ああ、ごめんごめん」


 そう言いながらまた頭を掻く。


「もう先生には静かにしてもらって、整理始めちゃいましょうか?最初はわたしが教えるから」


 これ以上コリー先生を喋らすわけにはいかないと言わんばかりに、ユナの方を見ながら促すリン。それを感じ取っていたユナだったが、ちょっとだけ勇気を振り絞って、続きを聞いてみることにした。


「あの!4つ目って天廻魔術陣ですか?」


「そうだね。天廻魔術陣というのは……っ!」


 リンのキッと睨みつけるような視線を感じたコリー先生は蛇に睨まれた蛙のようにそのまま固まった。


「手短に、お願いしますね?」


「ああ…、気を付けるよ。こほん。改めて、天廻魔術陣というのは、天を巡り廻っている星々から力を得ようという考えから作られた魔術陣のことだ」


「星から?」


「そう、星から。とんでもないことを考えるよね。でも、それがうまくいったんだ。遠く遠く、現代の僕たちでさえ、一番近い双月(そうげつ)にも届いたことが無いというのに、そこにエネルギーがあるんじゃないかと考えて、使おうなんて考えた人がいたんだ」


「双月?」


「ん?双月の呼び方は一般的じゃないのかい?」


 コリー先生がリンの方を見て問う。


「どうなんでしょう。双月も一般的に聞くかと思いますよ。私は双子月(ふたごづき)って言っちゃいますけど」


 それを聞いてユナは気が付いた。


「お空に浮かぶお月様のこと?」


「ええ、そうよ」


「確かに双子だね」


 ユナは寄り添うように夜空に浮かぶ月を思い浮かべる。


「その月も含めて、空に浮かぶ星々の廻り方を魔術陣に写し取り、魔力を流すことで、様々な力を得ることに成功したんだ」


「へぇー…」


「天廻魔術陣は先ほど言ったように、古代魔術陣とも深いかかわりがあって、天廻魔術陣も一部は使えないと言ったろう?」


「はい……?」


 暴発していたユナは、天廻魔術陣が使えるかどうかの話を覚えているようで覚えていないような気がしたが、とりあえず返事をしておいた。


「天廻魔術陣は、ある時期を境に極端にその構図が変わるんだ。何かわかるかい?」


 とっさに振られた問題に、ユナは頭を悩ませる。


「うーん」


寄り添う二つの月のお話し、実は10話の時点で登場しています

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