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第109話「塀を越えて」

「結界が、無い…!!」


 そこだけ結界が途切れているのがわかった。それでも少しは何かが施されているようだが、今まで阻まれていて全くわからなかった外の様子が少しわかる。まるで目隠しをされて真っ暗闇だった視界に、光が差し込んだかのような気分だった。


 けれど、結界が途切れているその場所、南門は、塀に比べれば小さいけれどユナよりは高い。まるで壁と見間違いそうなほど隙間が無いが、門の中に収納されるように横にスライドできそうな雰囲気なので、間違いなく門なのだろう。

 足をかける場所もなく、門の上部は鋭くとがった槍のようなものが一定間隔で設置されていて、(また)ごうとすれば怪我をしそうだった。門と塀との隙間もないので、飛び越えることは不可能な気がした。


「また飛行魔法なの…」


 驚異的なジャンプ力が有ればいけるかもしれないが、それはそれで着地で大怪我をしそうな気がした。


「ちょっとちょっと」


 そんなことを考えながら門に触れていたユナのもとに、慌てて走ってくる人影。


「えっ?」


 振り返ると、そこには職員らしい紺色の制服を着た警備員が立っていた。


「外に出るならまず、管理棟で外出許可証を見せてもらわないと」


「あ、えっと…」


「それにもう遅い。門限もあるし今から出かけるってのは…」


 そのままグチグチとお説教が始まるかと思われたそのとき、カンッと後ろで音がした。


 後ろを見る。だが何も無い。門の向こう側とは思えないような近さだったので、それならばと上を見る。


「ん?何だあれは」


 ユナと同時に見上げた警備員が発したその言葉は、二人が見つけたソレに対しての言葉だった。

 塀の上、そこに現れたのは、もう日も落ちつつある夕方とはいえ、闇よりも暗く、まるでそこだけぽっかりと黒い穴が開いたかのような、真っ暗な、真っ黒な猫だった。


「猫ちゃん…?」


 ユナのその一言で、警備員もようやくそれが猫だとわかったようだった。

 音もさせずに難なく塀から飛び降り着地した猫は、そのまま当然のように進んでいく。


「一応猫だろうと、学園内への侵入者は追い返すことになって…!?」


 警備員が手を伸ばすと、それをまるで予定調和のようにするりと(かわ)して、難なく進んでいく。


「猫ちゃん!!」


 ユナは思わず叫んだ。


「フシャーッ!!」


 その威圧に、ユナはたじろいで尻餅をついてしまった。殺気かと勘違いするような威嚇。


 それは、ユナが部外者で不埒な侵入者である猫と関わりがあることをバラさ無いためのものであったが、ユナはそんなことに気づく余裕も無かった。


「【光線の拘束(バインド)】!」


 それは警備員が発した言葉だった。その瞬間、光の紐のようなものが現れ、猫を捕まえようと迫る。だが、まるで光に応じて影が動くような速さで躱し、離れていく。


「クッ!」


 射程外なのか、光の紐は途中で止まり、ぱしゅんと消えた。警備員が追いかけ始める。それすらわかっていたかのように木にかけ上がっていく。そして振り返った猫と、ちらりと目線があった。わかる。後で落ち合おう、だ。確信だった。だって、二人がそこにいる(・・・・・・・・)とわかったから。

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