9発目 山崎はヨルドー地方へ行く
ガタンガタンと蹄鉄が地面に鳴る音が響く。
最初の街を後にした山崎はヨルドー地方へ向かう馬車に乗っていた。
街を離れ数日、山道などを抜け開いた道へを進む馬車。
「ヨルドー地方にはあと、どれくらいで着く?」
「ヨルドーですか? それならもう着いてますよお客さん。なんせ今走ってるここがヨルドー領ですから」
馬車の運転手は陽気にそう笑う。
「もうすぐヨルドー地方で一番大きい街、ライフラットにつきますよ」
「そうか……」
馬車は蹄鉄を鳴らしながら広い地平を進んでいく。
◇◇◇
ライフラットに着いた山崎は早速、冒険者ギルドへと足を運んだ。
「冒険者募集の張り紙を見て来たんだが……」
受付嬢に用件を伝えると山崎はギルドの奥へと通された。
ギルドの奥には同じように通された冒険者が何人も集まっていた。
どうやら冒険者は皆、集められた理由を知らされていないようだった。
しばらく経ち、集められた部屋に大柄な初老の男が入ってきた。
「冒険者の皆さん、お待たせしてしまってすまない。私はスネイル。この冒険者ギルドの統括をしている者だ」
スネイルは冒険者達の前へ立つと改めて話を進める。
「このヨルドーに冒険者を集めたのはある依頼を頼みたいからだ。依頼というのは闇ギルド<黒曜団>の殲滅だ」
スネイルの話に周りが少しざわつく。
「知っている者もいると思うが今、ヨルドー地方では黒曜団による犯罪件数が非常に増加傾向にある」
スネイルは大きく息を吐き続ける。
「黒曜団は麻薬売買を軸に殺人、窃盗、犯罪組織への魔物の密輸などを行う非常に危険なギルド。これ以上、野放しにすることはできない」
冒険者達は緊張した面持ちでスネイルの方を見つめる。
「しかしこれは非常に危険をはらむミッションだ。そこで君たちにはまず黒曜団の殲滅作戦に参加するだけの実力があるかどうか試させてもらう」
スネイルは冒険者達を見渡す。
「まず、試験としてここに集まってもらった冒険者の諸君には、白夜の塔と呼ばれるダンジョンの最上階にある天竜石を期限内に手に入れ帰還してもらう」
白夜の塔という言葉に冒険者達は一同にざわつく。
「白夜の塔も非常に危険で有名なダンジョンだ。だがこの試験を通過するだけの実力がない者に黒曜団との戦いを任せることはできない。悪いが腕に自信がないものはここで立ち去った方が身のためだ」
スネイルはその場を離れ冒険者達に首飾りを配る。
「その首飾りは特殊に作られていて時間経過と共に中の砂が砂時計のように落ちる仕組みとなっている。期限はその砂がおちきるまで。時間にすればおよそ24時間程度。話は以上だ。白夜の塔の前まではこちらで用意した馬車で向かってもらう」
スネイルの話が終えると冒険者達は外に止めてある馬車へと向かった。