10発目 山崎はダンジョンに挑む
数時間の道中を経て馬車は白夜の塔に着く。
冒険者達は馬車を降りると次々に塔へと入っていく。
山崎も他の冒険者と同様に急ぎ足で塔の内部へと向かった。
塔の内部は薄暗く狭い通路が螺旋のように繋がっている。
山崎は慎重に進む中、ふとあることに気づく。
(ずっと同じ道をたどっている……)
進んでいるはずなのに何度も同じ冒険者とすれ違う。
一部の冒険者もそれを察しているのか、壁を念入りに調べる者も現れていた。
「まるで幻覚に惑わされているようだ」
山崎は動くのやめ一旦、打開策を打ち出すことにした。
正しい道は隠れているわけではない。
ただ幻覚に惑わされて見失っているだけ。
なら幻覚を破る方法を探す必要がある。
山崎の脳裏にあることが浮かんだ。
それは図書館に訪れた際に読んだ本の内容だった。
実体の見えないものを一時的に捉える魔法 幻視。
非常に高度で使い道が限られているため軽視していたが山崎はその魔法を試みることにした。
意識を一点に集中させ、非常に難解な術式を唱える。
するとぼんやりとだが白い霧の中に道が見え始めた。
山崎は霧の中に見えた道を辿っていく。
最初はさっきと変わらない道のように思えたが次第に道が開けていき大きな広間のような場所へとたどり着いた。
そこには上と続く階段があるわけでもなくただ壁が天井へと続いてるだけだった。
先にたどり着いていた何人かの冒険者も立ち往生気味に辺りを見回している。
「なんだアレ!?」
一人の冒険者が上を見上げ叫ぶ。
上空からは無数の半透明なボロ切れを被ったような幽霊がこちらへと向かってくる。
「マズいぞ。まさかレイスに出くわすなんて……」
冒険者達は次々と杖や短剣を構える。
レイスはゆったりと浮遊しながら次々と迫ってくる。
魔法や武器で果敢に立ち向かう冒険者達だがレイスの身体をことごとくすり抜けいく。
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
レイスに触れた冒険者の一人が苦しみだす。
その身体には紫色の斑点が浮かび上がる。
「なるほど。あの亡霊に触れると呪いを受けるのか……」
山崎は周りの状況を見ながらそう分析するとレイスを避けつつ魔法による攻撃をいくつか試す。
指先に光を集め弾丸にして当ててみたり光を反射させレイスを攻撃する。
光に弱いと予想した山崎だったがレイスには通用しない。
「ただ光の魔法を当てるだけではダメか…」
山崎は実体が見えないことを着目点におき幻視を試してみることした。
意識を集中させ術式を唱える。
しかしレイスの身体は特に変わらない。
山崎は次の一手を考えることにした。