1発目 山崎、異世界に降臨する
生まれながらのチート、それが山崎である。
わずか5歳にしてハーバード大学に入学し成績トップで卒業。
スポーツでは数々の分野で世界記録を更新。
10歳で起業しわずか一ヶ月で世界有数の大企業として名を連ねた。
抱いた女の数は星の数。
そして16歳の現在。
裏で世界を牛耳るほどまで山崎は成長していた。
しかしこの世全てを手に入れたといっても過言ではない山崎にとって余生は退屈でしかなかった。
「あ~つまらん。異世界にでも行きたいわ」
最近のの山崎はそうつぶやくことが多くなっていた。
そんな山崎を哀れに思った神がひとりいた。
「山崎、山崎よ。わしの声が聞こえるか…」
どこからともなく老人の声が聞こえてくる。
その声はまるで山崎の頭に直接語りかけてくるような感覚だった。
「誰だクソジジイ。この山崎に何のようだ」
「わしか? わしは神だ」
「神だと?」
山崎はにわかに信じがたい老人の言葉に少し戸惑った。
「山崎よ。わしがお前を異世界に連れて行ってやるぞい」
「異世界? 笑わせるな。そんなことができるはずないだろ」
山崎は老人の言葉に対して鼻で笑った。
「できるぞい。なぜならわしは神様だからな」
「神様? 誰だか知らんが冗談もほどほどにしろよ」
「冗談ではない。わしは全てを手に入れ、ただただ時間を持て余しておるお前がかわいそうで仕方ないのじゃ……」
「貴様のようなもうろくとしたジジイにかわいそうがられるとは……。山崎も随分となめられたものだ」
山崎は小さくため息をついた。
「ジジイよ。貴様の言っていることが仮に本当なら今すぐやってみろ」
「ホホホ、いいだろう。では異世界に転移じゃ~」
老人の声と共に山崎の周りに光り輝く魔方陣が現われ、謎の光に包まれた山崎の身体が徐々に消えていく。
そしてその光と共に山崎は完全に消えてしまうのだった。
◇◇◇
気がつくと山崎の周りには広大な草原が広がっていた。
「見かけない景色だ。あのジジイが言っていたことは本当だったようだな」
山崎は辺りをくるりと見回す。
どこを見ても草原が広がり山崎の頬にはさわやかな風が触れる。
「面白い。退屈しのぎにはいいかもしれんな」
「いやぁぁぁぁぁ!」
山崎が清々しい空気を堪能していると近くから女性の悲鳴が響き渡った。
山崎が悲鳴のした方を見ると、少女がオークの群れに追いかけられている。
本来ならばここで颯爽と山崎が少女を助け惚れられるのが鉄板のパターンだろう。
だが山崎は助けない。
女を腐るほど抱いた山崎にとって小娘一人がどうなろうとどうでもいいことなのだ。
山崎は遠くの方に見える街を目指して歩を進める。
助けを求める声もむなしく、ほどなくして少女はオーク達に犯された。