表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/29

その1、魔王降臨


新たなメイン連載です。

前作よりもちょっと文章量を増やしました。

なにとぞよろしく。




「あー、寝てるだけで金が入る仕事につきてー」


 と、男はつい自堕落なことをつぶやいた。


 名前は、関口正二郎。

 現在三〇代となる、現在無職の独身男である。


 一週間前まで某企業の事務職だったが、不況の煽りで肩を叩かれてしまった。

 つまり首である。

 どっちみちブラック気味で、不満も多かった職場であった。

 なので、あまり執着もないまま去っている。


 で。そのまま、職探しもしないでアパートでダラダラしていた。

 何もする気が起きない。一種の燃えつきだろうか。


「金が欲しいのか?」


 部屋の中、いきなり関口に応える声がした。


「え」


 関口が顔を上げると、部屋の隅に誰かが座っていた。


(心霊現象……!?)


 思わずゾッとする関口だったが、どうやら実体を持っているようだ。 


 が、しかし――


(えええ……)


 その姿を見て、関口はしばらく言葉が出なかった。


 白く美しい肌に、ゾッとするような美貌が光っている。

 テレビでもてはやされるような女優やアイドルなど比べものにならない。


 髪の毛は、銀色だった。

 白髪というよりも、純銀を糸にして束ねたような美しさだった。

 まるで生きた美術品である。

 そんな得体の知れない美少女が、ちょこんと座っていたのである。


 しかも全裸だった。


「あの、どなた?」


「さて――」


 とまどう関口に対し、美少女は首をかしげ、笑った。

 そして、関口は気づく。


 目が、違う。人の目ではなかった。

 赤い縦長の猫みたいな形だったのである。


(やっぱり心霊? 幽霊???)


「まあ、どういうモノかと名乗るとアレだが……一番わかりやすい言葉を使えば……」


 少し間をおいて、少女は微笑む。


「魔王だ」


「は?」


「魔物の魔に、王様の王」


 と、少女は空中に指を滑らせた。

 途端に、虚空へ『魔王』の漢字が浮かび上がる。

 映画のCGみたいだった。


「ま、魔王って……勇者に倒される、RPGとかの魔王?」


「やられ役とは気に入らんけど、そういう感じでもいいか」


「いいかって……」


「ちょっとこっちにいることになったんでな。お前の住処を間借りする」


「そ、そんな勝手な」


「まあまあ」


 抗議したい関口だが、反論しようにも相手に妙な迫力がある。


「それなりの報酬は払うさ。ところで……ちょっとお前の服を見せろ」


「な」


 言うなり、少女は赤い瞳を見開き、関口の服を凝視した。

 着古した、いかにも貧相な安物のジャージである。


「なるほどな。大体わかった」


 言葉が終わると、少女の体に蛇のようなものが無数に這い回った。


「あ」


 と、関口が叫んだ時には、それは関口のものと同じデザインのジャージに。


「まあ、こんなもんだろう」


 少女は笑い、座り直す。


「ホントに、誰?」


「だから言ったろう。魔王だと」


「そんなアホな……」


 言われて素直に信じられるわけがない。

 確かに絶世の美少女で、瞳も変だが。


「ど、どっから来たの」


「お前らで言うところの異世界だな」


「何しに……」


「んー。まあ色々あるが、ちょっと居づらくなったんでな」


「追い出された……?」


「そういう表現もできるか。あと、色々制約もついたが」


「で、何する気なの……」


「特に目的もないが、用事というかそういうのがないでもない」


「何です、それは」


「まあ、色々説明すると面倒くさいが……難民みたいなものか?」


「えええ……?」


 難民という単語に、関口はギョッとした。


「サキュバスは知ってるだろう」


「まあ、ちょっとは……」


 関口も知識としてはボンヤリ知っている。

 男を誘惑する淫魔ないしは夢魔のことだったと思う。


「その一派をこっちに連れてくることになってな。まあ、その様子も見なきゃならん」


「どこにいるわけ、それ……」


「まあ、あちこちにいるが。呼ぼうか?」


「い、いや、それはちょっと……」


 関口は手を振って、否定した。

 興味本位で言って、本当にそんなものに押しかけられてはたまらない。


「……で、まさかうちにいるって」


「そうだよ」


「いや、そんな家賃だってあるし……」


「まあ金は心配するな。どうにかする」


「どうにかって……」


「ふむ」


 突然、自称魔王の少女は虚空に目をやってうなずいた。


「とりあえず、これは手付だ」


 言うなり、懐から紙幣の束を取り出してきた。


「え。げ、現金???」


「それだけあればしばらく足りるだろう? その上毎日払ってやる」


 数えてみると、総額五十万ほど。小金ではあるが、それなりのものだった。


「いや、でもうち狭いし」


「それも安心しろ――」


 魔王少女はまた何かを取り出してきた。

 それは、手のひらに乗りそうなサイズのガラス箱らしきもの。

 中に、小さな城の模型みたいなものが覗いていた。








色々手探りでやっていきます。

ご興味を持っていただけたらどうかポイントをよろしく!




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ