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008_服が着たい!

 突然だが、オレは裸である。


 こっちの世界へきて7日が過ぎた。


 魔獣の姿なので至極当然といえば当然なんだが、元人間であるオレ的には毛皮のコートは体毛であって衣服ではない。

 初めのころは違う姿である戸惑いや、環境に慣れるために必死で気になっていなかったが、落ち着いてくると気になって仕方がなくなってしまった。



「…服?」

『着たいです。裸と思うと恥ずかしいです』


 スノゥは何かと忙しいらしく逃げ回るスノゥをレグさんが捕獲しては連れ去っていく姿を何度となく見かけたが、今日は庭先で本を読むオレに寄りかかり一緒になって本を読んでいたのでそれとなく素直に頼んでみたところ、微妙な顔をされた。

 ペットごときが服なんておこがましかっただろうか…。


「もふもふ…隠れちゃう」


 違ったようだ。

 動物が好きなスノゥにはオレの魅惑の毛皮が隠れるのが嫌だったらしい。

 気が付けばいつもオレの上で寝ているくらいだ。

 男の子だと聞いても直接見たわけでもなく、オレは男装女子であるという可能性を捨てていない。

 そしてたとえ男の子であったとしても美人でかわいらしいスノゥに抱き付かれるのは役得である。

 決してショタに目覚めたとかではない。断じてない。


「なんて、半分冗談だよ」

『半分かよ』

「実は翻訳と防汚の付与を何にどうやってつけるか考えてたんだけど、衣類に付与すればアクセサリーよりも目立つし街中に出ても一目で従魔だってわかるから、ジンも自由に街中に行けるようになるんじゃないかな…って」

『おお、なるほど!』


 やっぱりスノゥはいい飼い主だ…。なんだかんだオレのことを考えてくれている。


「それで他国に有名な錬金術師がいて、その人に頼もうと思っているんだけど、忙しい人だから今連絡待ちの状態なんだよね」

『錬金術…』

「興味ある?」


 あるといえばある。手に職を持ちたい。

 というか少し前にも考えたことだけど、元人間のオレとしては中高生くらいの子に養ってもらっているというのがどうにもいたたまれない。お金稼ぎたい。

 でもやっぱり力仕事なんかだとオレの大きさじゃ邪魔になる場合もあるだろうし、知らん人が来たら怖がらせてしまう。それなら内職的なのがいい。


『錬金術って…どういう感じ?』

「どういう感じ…?ってどういうこと?」


 オレも錬金術なんてゲームや漫画でしか知らんからなぁ…。説明が難しい。


『いやー、魔力?みたいな?のが必要なのか、それとも一般人でもできるのか?みたいな?』


 とりあえず曖昧だけど、最低限の条件だ。魔力が必要だとしたらまずそこからになる。


「時と場合と作るものによる?みたいな?」


 スノゥの方も曖昧だった。


「興味があるならミラツァエル卿に聞いてみる?」

『え…。あの…怖い先生?』

「錬金術専門ではないけど、身近な僕の知り合いの中ではミラツァエル卿が一番詳しいと思うよ」

『錬金術専門の先生はいないのか…?』


 出来ればあの怖い先生には会いたくない。


「いるみたいだけど、僕は会ったことがないから…」

『そうか…。いや、じゃあその今連絡待ちの錬金術師ってのには近いうちに会えるんだよな?』

「うん。明日くらいには連絡来ると思うよ」

『じゃあその人に聞く。というか、聞いて欲しい』


 あの先生は怖いし、どうせ有名な錬金術師に会うってんならそっちの方がいい。どういう人かは知らんけど…。


『ちなみに、その錬金術師ってどんな人なんだ?』

「ん~…、僕も2回会っただけだけど、まじめで優しい感じのいいお兄さんだったよ」


 ほう。やっぱりミラ…なんとか先生よりよさそうだ。といってもスノゥは人見知りどころか物怖じすらしないからな…。

 オレと出会った時もいくらオレが理性のある生き物だって分かったからって簡単に近付ける見た目じゃねーし、あの天使先生もいくら知り合いだからってあんな邪険にされている感じの相手に飄々と話していたし…。


「それで、ジンはどんな服が着たいの?」

『え、どんなって…。そうだな…』


 ただ漠然と服が着たいと思ったけど…。オレ的に楽なのはジャージだけど、いくら獣姿だからと言って城の敷地内でジャージでうろついたりゴロゴロしたりするのもな…。今は全裸だろって突っ込みは無しな。

 でもこっちの基準も流行も分からんし、分かったところで魔獣だし。

 オレがこっちに来てからまともに見たことがある服っつったら魔導士や騎士くらいだ。

 街中を歩いてきたときは服どころか周りを見ている余裕なんてなかった。


『…一般的な…普通の服…とか?』

「…ん~…。………似合わなそう」


 オレをじっと見て想像したスノゥからの正直な一言。


『じゃあ、どんななら似合うと思う?』

「…毛皮」

『………』


 即答しやがった。こんにゃろう…。

 ペットとしてはなるべくご主人様の要望には応えたいところだが、服だけは譲れん。せめてズボンが履きたい。パンツでもいい…。


「ところで、錬金術覚えたいの?」

『ああ、うん。というか別に錬金術じゃなくてもいいんだけど…』


 突然話を戻されたが、もはやこれはいつものことだ。それにこの話が行ったり来たりしたり突然変わったりするのは姉貴がそうだったから慣れている。

 とりあえずオレは以前からなにか自分でも出来ることはないかと考えていたことを説明した。

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