024_異世界と言ったら孤児院
そんなこんなで、スノゥと隊長さんを背に乗せ街中を歩くオレ。
うん。いくら服を着たところで目立つ。というか服を着ているからこそ逆に目立っているともいえる。
傭兵のような人や冒険者のような人はいつでも武器を抜けるように身構えたり、大人たちは子供を守るように下がったりしている。
…分かっていたけど、ちょっと切ない…。
でも小さすぎる子どもなんかはよく分かっていないらしく「おっきな熊さんがお洋服来てるー」などと無邪気にはしゃいでいる。それがオレの心のオアシスだ…。
しかし、この世界の熊は角生えてるのか…?
「思いのほか良い反応ですな」
隊長さんがそんなことを言う。
『え゛?これで??』
「最悪悲鳴が上がったり、武器を向けられたりするのではないかと思っておりました」
えええぇぇええ!
そんなことを想定しつつオレを連れだしたんすか!なんて恐ろしいことを…。それでよく国が外出を許してくれたな…。
「ジンは可愛いからすぐ皆も慣れてくれるよ」
「ですな!」
そんな頭上から聞こえる他愛もない(?)会話と、道行く人々から向けられる畏怖の視線に困惑しながらしばらく行くと、教会らしき建物が見えてきた。らしきものというか、見るからに教会だ。
国どころか世界が違っても教会は教会らしい。
いや、見た目だけで言ったら海外式の時計台とか役所とか小さな城とかそんな感じだけど、十字架風のオブジェと天使っぽい像が教会だと物語っている。
教会は大きな通りから小道に入った先にあり隣には孤児院、そのほかには特に店などはなく、人通りはあまり多くない。
入り口前で2人を下ろすと解放されていた入り口からこちらを覗き込むように様子を伺うシスターや参拝者。孤児院の広場の柵から顔を出し騒ぎ出す子供たち。
ここの孤児院は教会が運営しているらしい。王都で一番安心安全の孤児院であるために、その分子供の数も多いそうだ。
スノゥの仕事とはその安全を維持するための結界の確認や補強といったものらしい。
「すげー!魔物だ!魔物が服着てる!」
「かっこいい!俺も乗りたい!」
「もふもふだー!触りたーい」
子供というのは好奇心の塊だな。柵があるからこそ怖さも軽減されているんだろうけど。
スノゥと隊長さんがオレについての説明をしてくれている(というか主に隊長さんだけど)ので、オレはとりあえずその場にスコ座りをして子供たちに手を振ってみた。
どんな猛獣でもスコ座りしてたら可愛いだろう?怖さを払拭させるために考えた戦略的ポーズだ!
人間の姿だったら恥ずかしくて出来ないけどな!
「かわいい!お座りして手振ってるー!」
「すげぇ!見た目厳ついのにかわいい!」
「やべえ!かわいいとしか言えねえ!」
「かわいい!もっともっとー!」
ふ…計画通りだな…。プライドじゃ生きていけねぇからな…。
ここで怖がらせてはいけないので、ゆっくりと子供たちの方へ行き、再び柵の前で座る。そして単語カードで自己紹介をした。
【ジンといいます】
【よろしくおねがいします】
「「「「おおおおおお!!!」」」」
「言葉分かるの!?」
「かしこい!」
「かわいい!」
「お手出来る!?お手!」
そういって柵から手を伸ばしてきたので、小さな手のひらに右手の人差し指をちょこんと乗せた。
「じゃあおかわりは!?」
今度は左の人差し指を乗せる。
それだけで子供たちから歓声が上がる。というかこの世界にも犬にお手とかおかわりやるんだね…。
遠巻きに見ていた子供たちもいつの間にかそろりそろりと近づいてきていたので、その子たちに向かって手を振るとちょっとびっくりしたような感じで手を小さく振り返してくれた。
遠巻きに見ている子供たちは獣人が多いように見える。やっぱり警戒心が強いのかな…と思ったけど、思いっきり最初から最前線にいる子もいるし、ただの性格かな。
「ジン殿は一気に孤児院の子供たちに気に入られましたね」
流石にここまで簡単に受け入れられるとは隊長さんも思っていなかったようで、ジンと子供たちの様子を見て呆気に取られていた。
「いやぁ…驚きました…。いろんな意味で…」
ジンのの説明を受けていた神父やシスターが目をまん丸くしてジンと子供たちの様子を見ていた。
「ジンはそこら辺の人たちよりもずっと温厚で穏やかだよ」
「あの通り単語の書かれたカードで意思の疎通も出来ますからな!」
「世の中にはあんなにも賢く優しい魔獣もいるんですねぇ」
「まぁ、ジン殿が特殊ではありますがね」
そんなこんなで、今日はギルドに顔通しへ行くという最大の目的があるので、スノゥを教会へ預け孤児院はいったん後にした。
その場を離れようとしたら子供たちに引き留められたが、またあとでスノゥを迎えに来るときに今度は庭で一緒に遊ぶ約束をした。
もみくちゃにされる未来が見える…。




