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022_やっぱり小言が多い_side-スノゥ-

 宰相に許可を貰いに行くと、レグかヒューゴを連れていくならと許可を得た。

 …さっきの今でレグに頼んだら道中小言ばかりになりそうだから…と、ヒューゴ隊長を選んだんだけどヒューゴ隊長はあいにく遠征に出ていていなかった。

 ので、結局レグを見つけて、少し渋られたけど適当に言いくるめた。

 案の定、道中では小言がちらほら出てきていたけど、適当に流す。本気で怒ったり嫌がっているわけではないのは雰囲気で分かる。

 でも普段迷惑を掛けているという自覚もあるので、好きなものをおごってあげると言ったら機嫌がよくなった。

 こんな時でもないと案外自分のお金は使わない。基本的に城に籠りきりだし。



 

 城から城下町の広場までは結構距離があるので、馬車で行く。歩くのは面倒だったから嬉しいけど、城から出る馬車はいかにもな感じで目立つ。

 人通りが多くなってくると皆道を開けるように遠ざかり、遠巻きに見てくる。これはいつまで経ってもなれないし、居心地が悪いので外から見えないように目的地に着くまで椅子の上でゴロゴロする。


「行儀が悪いですよ」


 でた…レグの小言…。


「レグしかいないからいいの」

「…私以外がいてもやるでしょう?」

「うん」

「やはり、少しくらい作法は覚えるべきですね。ヴァンエント様、王族の方々に対してもその話し方でしょう…。いくら許されているからと言ってどうかと思いませんか?」


 ”偉い人や目上の人には丁寧な言葉遣い”っていうのは分からなくもないんだけど…200年気にしたことなかった言葉遣いを今更直すのは正直凄く面倒くさい。ずっと人を避けて暮らしていたツケがきたかなー…。


「そのうちね…。やってできないわけでもないから正式な場で発言するようなことがあったら気を付けるよ」

「普段から気を付けていなければ、いざと言うときにボロが出ますよ」

「じゃあ正式な場に出ないで済むように頑張る」

「頑張る方向が間違ってます」



 レグとそんなやり取りをしているうちに広場の入り口付近に到着した。

 ローブのフードを少し深めに被って馬車を降りた。今日のローブは王宮の紋章は入っていない、自前のものだ。

 広場にはたくさんの出店や露店、それを見に来たたくさんの街の人たちがいた。

 人込みは嫌いだけど、活気のある人たちを見ているのは楽しい。


「ヴァンエント殿、目的の場所は向こうのようです」


 声を掛けられて目的地に歩き出したけど、あまりこうして街中を歩くこともないのでついつい目移りする。

 キレイな装飾品や、趣のある古道具、アミュレットや魔道具。お肉の串焼きにソーセージ、あげ芋、サンドイッチ、クッキーにクレープ。

 見ているだけでも楽しい。


「色々見て回りたいのは分かりますが、先に目的のケーキを購入された方がいいですよ。売り切れてしまったら元も子もありませんから」


 僕がふらふらと他の店を覗いていると、後ろからレグが声をかけてきた。確かにその通りだ。


「ここからも見えますが、あの列をなしているところが目的のケーキ屋のようです」

「…いっぱいならんでる…」

「そりゃあ、今日の目玉ともいえる出店ですからね」

「並ぶの?」

「並びます」


 歩くのも面倒くさいけど、ただ立って並ぶのはもっと面倒臭い。


「レグ」

「駄目です」

「まだ何も言ってない」

「私一人に並ばせるおつもりでしょう」


 あばよくばと思ったけど、やっぱりそうもいかないらしい。

 自分の我儘で連れてきたのも分かっているから、これ以上は仕方がない。

 諦めて並ぶことにした。レグが言うには「出来上がっているものを買うだけだからそれほど長く待たされることはないでしょう」って。確かにその場で焼いたり盛ったりするわけではない。

 店の付近にはその場でケーキを食べられるイスとテーブルも結構な数が設置してある。

 女性が多い。男性もいるけど、女性に付き合わされて来ているような感じだ。


「…レグは奥さんいるの?」

「ブフッ!な、なんですか唐突に!?」

「あまりそういうの分かんないけど、レグくらいの年齢の人って結婚しているんじゃないの?」


 レグは人族で今年32歳だったはず。人族は早ければ10代で結婚すると聞いたことがある。


「…居ませんよ」

「彼女は?」

「……居ません」

「好きな人は?」

「………」

「いるんだ」


 レグは小言が多いけど、こういう分かりやすいところはいいと思う。


「じゃあ、その人にもお土産に買っていこう」

「そ、それはいけません。私は仕事でここに来ているのですから」

「…レグってまじめだよね。ついでなんだし、バレなきゃ大丈夫だよ」

「そういう訳にはいきません」

「…そういうところがモテないんじゃないかな?」

「うぐ…っ」


 そんな会話をしていたら思っていたよりも早く列は進んでいって順番が回ってきた。

 フードをしていたらよく見えないので顔が見える程度に上げる。

 様々な果物を使用した色とりどりでキレイなケーキはザッと見ても30種類はある。ケーキとは少し違うゼリーやパイもある。


「いらっしゃいませ。こちらでお召し上がりですか?お持ち帰りですか?」


 ケーキに視線を奪われているとお店のお姉さんが声をかけてきた。


「持ち帰りで…個数制限とかある?」

「限度はございますが買い占めなどなさらなければ、常識の範囲内でお願いしております」

「…常識…。全種類一個づつは常識の範囲に入る?」

「はい。それでしたら問題ございません」

「2個づつだったら?」

「…そうですねぇ、できればご遠慮願いたいです」

「そっか。じゃあ1個づつで箱にはランダムにお願いできる?」

「かしこまりました」


 1つの箱には大体10個前後といったところみたいだ。メイドさんたちは15個って言っていたから2箱渡せば十分だね。あとで2~3個別にしてレグにも上げよう。僕から上げれば仕事とか関係ないだろうし。

 …おいしそう。


「…一個だけなら別に追加してもいい?」


 このあとも時間の限り見て回りたいけど、ケーキも食べたい。


「はい、構いませんよ」

「じゃあ食べ歩けそうなのがいい」

「ヴァンエント殿、食べ歩きはお行儀がよくありません」


 すかさずレグのお小言が入る。


「屋台とかは食べ歩き前提でしょ?この広場でなら大差ないよ」

「…しかしですなぁ…」

「えーと、こちらのケーキでしたら直接手で触れることもありませんが、いかがでしょうか?」


 レグが難色を示しているとお姉さんが助け舟を出してくれた。

 お姉さんがお勧めしてくれたのはガラスのカップに入ったケーキだ。


「これってガラスのカップは返却するの?」

「いえ、こちらはカップも含めて販売しております。食べ終わった後はそのまま普通のカップとしてご利用出来ますので、人気の一品となっております」

「へぇ…。オシャレで便利なんだね。ねぇ、レグ」


 じぃーっとレグの目を見てみる。悩んでいる。上層部からは厳しくしすぎるのも甘やかしすぎるのもよくないって言われているみたいだし、加減は難しそうだね。


「……帰宅しても他の方に食べ歩きをしたことは口にしないでくださいね」


 折れた。

 なんだかんだ小言が多いわりに甘いんだよね。


「レグは女の人にはモテなくても、子供には好かれそうだよね」

「余計なことを言うと無かったことにしますよ」


 そんなやり取りをお姉さんがほほえましく見ていた。


「お買い上げいただいた女性の方にはドリンクを1杯サービスしておりますが、いかがいたしますか?」

「いるー」


 一瞬レグが何とも言えない顔をした。レグは初対面の時は別として、今は僕が男と信じている。まぁ、事実今はそうなんだけど。


 箱詰めされた大きな箱ケーキ3つと小さなのが1つ、それらはいったん空間魔法でしまい、食べ歩き用のカップケーキとスプーンに飲み物を受け取る。飲み物はすぐに飲むつもりではなかったのでこれも空間魔法でしまい、ケーキを食べる。


「おいしー」

「ヴァンエント殿は甘味がお好きですよね」

「ケーキは幸せの味なの」

「幸せの味…ですか…」


 その後、ケーキも食べ終わり、色々な店を見て回り、気になるものがあれば購入し日が暮れる前には城へと戻ってきた。



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