013_錬金術師
「おひさしぶりです。ヴァンエント様」
湖で遊んだ翌日の昼過ぎ、自宅前でスノゥとゴロゴロしていると騎士に案内され、金髪に金と紫のオッドアイのイケメンがやってきた。
この世界はイケメン率が高いのか…。なんとも腹立たしい限りだ。
「久しぶりー。わざわざ来てくれてありがとう」
「ヴァンエント様は、いつも斬新な案を下さいますからね。可能な限り時間を割いてでも伺いますよ」
そんな挨拶をかわしつつ、スノゥがイケメンを連れてきた騎士を下がらせるとイケメンはオレの方を見た。
「この子が話に合った魔獣だね。初めまして、俺はクレリア・エイミスだよ」
クレリアと名乗った男はそう言いながら手を差し出してきたので反射的にオレも手を出し握手をする。
「こちらの言葉や常識を理解する魔獣とは聞いていたけど、もっと小さければ獣人とそう変わらなそうだね」
「うん。言葉が話せないだけで他は人と同じ生活も送ってるよ」
「これなら採寸なんかもしやすいね。まずはどういったものが欲しいか詳しく聞きたいんだけど、庭で話すかい?」
「そうだね。そろそろおやつの時間だし、お茶でもしながら話そう」
そういうと、家から少しだけ離れた庭園の方へやってきた。花はまだ蕾だし花に詳しいわけじゃないけど、小さな蕾がたくさん丸く集まったものがたくさんあるしたぶんアジサイ的なものだ。
鑑定結果では【マリテスラ:小さな花が丸く集まり雨季に咲く花】とある。
地球との比較とか地球で言う何に似てるとか、そういう情報も出てくれたらもっと便利に使えそうなんだけどなー…。
いや、でもあるだけ感謝だ。贅沢は言っちゃいかん。なまじ異世界系チートの知識がある分贅沢になっている。
そうこうしているうちにお茶の準備が出来上がっていた。
そういえば、スノゥはおやつなんかは作ってもらったものを出すけだけど、お茶とかはちゃんと自分で入れてるんだよな…。
メイドさんとかいないのかね。別にオレが見たいとかじゃなく、屋敷だってこんなに広いんだし掃除も大変なんじゃ…。あ、いや、掃除は魔法とかで何とかなるのか?
まだまだ知らないことばっかりだな…。
「ジン?どうしたの?」
『いやー、スノゥって基本的に面倒くさがりなのに自分のことはちゃんと自分でやってるよなーって思って』
「ん~…お世話されるのは好きだけど、仕事としてされるのはヤダ」
『あぁ、なるほど…?家族とか友達はよくて、お金で雇われてる人にされるのは嫌ってことか』
「そう」
身近な人なら迷惑かけてもいいという訳ではなく、信用度の問題なんだろう。
まぁ、城で雇われているようなメイドさんが悪だくみだったり、適当な仕事だったりをすることはないだろうけど、気持ちの問題だ。
「ジンも一緒に食べながら話そう」
そう言われてオレはテーブルの前に座った。もちろんオレは芝生に直だ。ちなみにお茶のティーカップは少し前にオレ専用の大き目のものが用意された。獣人族にはオレほどではなくても大きな体の個体も多いらしく、そういった人用に作られているものだそうだ。
まぁ、それでも少し小さいけど。
「それで、エンチャント(付与魔法の別称)は後でどうにでもなるとして、物はどういったものが欲しいんだい?」
「ジン的には服が来たいみたいだから、防具の形状で衣類と、身の守りとかいざというときの為の装身具かな」
「服か…。どういう感じのがいいとか希望はあるの?」
「普通の服みたいなのって言ってたけど」
揃ってチラッとこっちを見る。
なんですか。ダメですか?
「上の服もってことだよね?」
こっちを見ながら聞かれたので頷いて答える。
「うーん。出来る限り希望には答えてあげたいと思っているんだけど、獣人族でジン君みたいにタテガミがあったり毛足の長い体毛のお客様からよく聞く話なんだけど、ゴワゴワするって話だよ?暑さとかは魔石やエンチャントで調節できるけど、着心地はそう言ったものとは別物だからねぇ」
…そうか…。言われてみればそうかもしれない。というか、暑さの方は考えてなかったけど、今の段階で木陰にいてもうっすら暑いんだ。この体で普通に服着たら暑さで熱中症になるな…。まぁ、それは問題ないみたいだけど。
『じゃあ…、どういうのがいいんでしょう?』
「とりあえず、過去に獣人族のお客様から頼まれて描いたデザインの類を持ってきたから、それを見ながら考えてみて」
最近、言葉が通じなくてもなんとなく会話が成り立つんだよな。オレがどういう返事をしていても流れ的に成り立ちそうな会話ではあるけど。
困ることではないし、とりあえずデザイン画を見てみる。
おお!かっこいい!
下はジョッパーズのようなものにグラディエーターブーツにレガースが付いたようなものが多い。上は肩や胸を守るショルダーガードやグローブ。
全体的に軽装なのは、恐らく獣人族は基本的に素早さを生かした戦い方が多いだろう。力重視のも居るだろうが、なんというか偏見かもしれないが、「ふん!」って言って服を筋肉で破りそうだから着ないのかなーとか思う。それならそれで大き目なものとか収縮性のある素材を使えばいいだけのことだが。
とりあえず、オレは戦闘するつもりはないけど、装備には興味がある。だって男の子だもん。
だけど、羞恥もある。ここでは普通の冒険者の服なんだろうけど、コスプレ感が否めない。そんなこと言ったらオレの今の姿そのものが着ぐるみや特殊メイク的なものになるけど。
しかし、オレは獣人のように直立二足歩行はしない。出来るものならしたいけど四足歩行の方が楽だし自然だ。
だからこの中のものを選んでも形状は変わるだろう。体系も間接も獣人とは異なる。だけど、この世界ではそういうのはたくさん居るだろうから、オーダーメイドもお手の物なんだろう。
「良さそうなものはある?」
『えと…、全体的に良いと思います!』
これは本音だけど、ぶっちゃけどれも同じような感じもする。
『ただ、いかにも戦闘向けな感じのこういうのよりは、軽装で動きやすさ重視のこっちの奴みたいなののほうがいいかな』
オレの言葉をスノゥが通訳しながらおおよそのイメージを決めていく。中にはスノゥや、えーとクレリアさん?の意見も組み込み、その場でラフデザインを描いてくれる。
最終的に決まったのは伸縮性のある生地で四足でも二足でも動きが制限されない作りで、ベルトにも一部伸縮する素材を使い筋肉を締め付けないようにし、靴は爪や肉球があるからその辺は隠さないデザイン。上半身はベルト系装備というか、ベルトに金具の輪がついていて、カバンなんかを掛けたり、スノゥがよくオレに乗って移動するのも考慮し、鞍と…いうのとは少し違うが、鞍みたいなものや手綱のようなものが着脱可能なデザインになっている。
そして一応城でスノゥのペットとして飼われているということで、首輪の代わりに貴族がつけているようなリボンというかフリル?というか…、ジャボと言うらしいが、元の世界で言うネクタイのようなものをつけることになった。
首輪よりは人間っぽい感じがするけど、複雑な気分だ。でも上に服を着ないなら、ベルトだけよりもそういうものを身に着けていた方が一目で上流階級の人に仕える魔獣に見えるだろう。
そして、装身具はジャボを留めるブローチや角に着ける飾りにピアスと、邪魔にならないけれど目につきやすいものとなった。
エンチャントに関しては完全にお任せだ。最低限、翻訳とキレイキレイ(と勝手に呼んでいる)があればいいし、どんなものがあるかわからないし、聞かれても分からない。
お金とか…いくら掛かるのかもわからない。エンチャント一つ一つに料金が発生するなら最低限だけでいいって言っちゃうし。




