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011_子供って怖い

 光が収まった頃目をそっと開けると小さな遺跡のようなところにいた。

 植物の絡まった沢山の柱が天井を支え、壁はなく鬱蒼とした森が広がっている様子が見える。


「ここは初心者向けの魔物くらいしかいないから、ジンでも大丈夫だと思うよ」

『初心者向けの魔物って…?』

「ん~、スライムとかラットとかゴブリンとか…?」

「たまにですがボアが出るという報告も聞いていますよ」

「まぁ、そのくらいの魔物だったらジンを見たら逃げ出すよ」


 それは助かる。いくら初心者向けと言われても魔物に出会いたくはない。怖いじゃん。

 でもスライムはちょっと見てみたい気もするな。ファンタジーRPGの王道モンスターだし。

 

 歩き出したスノゥと隊長さんの後ろを付いて行く。

 鬱蒼としているが奇麗な森だ。サワサワと風が木の葉を揺らす音が心地いい。耳を済ませればどこからか水の音も聞こえてくる。

 なんだか落ち着く。

 スノゥの屋敷の周辺はあまり人が来ないといっても、立派な建物なうえに城の敷地内だから自分の部屋を与えられたとはいえ、他人の家で厄介になってる感は拭えない。

 いっそこういう森の中に小屋を建てて住んだ方が気楽だろうけど…、モンスター怖いし。

 こんな異世界で1人で生きていく自信ないし。

 あ、今のオレ、超かっこ悪い。

 そんなことを考えながら黙々と歩いているが、ちょくちょくスノゥが視界から消える。

 わき道に逸れては戻ってくる。

 そんなスノゥになれているのだろう、隊長さんはちゃんと視線で追っていてスノゥの位置は把握しているようだ。


「何かいいものありましたか?」

「キノコ」


 隊長さんの問いに一言で答えるスノゥ。


「ああ、なるほど、キノコ類でしたら採取する人も多くはないですからね」

『キノコって人気無いのか?』


 隊長さんの応えに関してオレがスノゥに問うが、再びさっと横道に消える。


「キノコはですな、素人だと見分けにくく、毒のあるものなども多いので専門家じゃないと難しいんですよ。そのうえキノコは基本的には秋のものですからね、この時期に採れるキノコを知っているのは専門家くらいです」


 隊長さんはまるでオレの言葉が分かっているかのように答えてくれた。

 しかし、確かにそうか。親父がたまに山へ山菜を採りに行っていたがキノコを採ってこなかったのはそういうのがあったのか。

 オレならニラと水仙の見分けもつかない自信があるな。

 あ、でも今なら鑑定で分かるか?

 試しに辺りを見回しつつ採取できるものを探すべく森全体を鑑定をしてみると、目の前がめっちゃ文字だらけになった。


『ぶふっ!』

「な、なんだ!?」

「どうしたの?」


 驚いて思わず出た声に2人は驚いき振り向いた。


『ああ、いや、ちょっと鑑定魔法を試してみたら予想外な表示のされ方をして…』


 オレの視界の範囲内に入る植物の情報が一気に表示されている。木や草、木の実に花。

 内容に関しては先日見たように名称とちょっとした情報のみだが、目の前に見えるもの全てに表示されるのはうっとおしすぎる。対象をある程度絞らないとこんなことになるのか…。

 実とか一つの木に実っているのなら一つ表示されれば良いものを、実全部にウィンドウが表示されている。葉っぱは若干省略されているようだけど、1房ごとっぽい。

 …えーと、的を絞るか…いやそれよりもマップを表示してマップに果物のみを表示とか…。お、出来た。

 うん。これなら便利だな。しかし、一々ちょっとしたポンコツ具合を見せてくるな…。初めからこういう風にしてくれりゃいいのに、融通が利かないな。


「ジン、前見ていないと」


 バサンっバキバキ


 木の枝に突っ込んでしまった。


「あぶないよ」

『お、おう…』




 それから少し進むとそれなりに大きな湖があるところへと出た。

 湖を覗き込むと奇麗に澄んでいてちらっとたまに小魚が通り過ぎるのが見える。

 手を入れるとかなり冷たい。真夏に来て泳いだら気持ちよさそうだけど、今入ったら確実に凍えるな。


「この辺で僕は湖の中にある石を採取しつつのんびりしてるけど、湖の周辺なら視界に入るから何かきになるものがあったら取ってきてもいいし、自由に過ごすといいよ」

『湖の中…って入るのか?』

「ジン、入ってみたいの?」


 ブンブンと頭を振る。


「浅瀬の水を魔法で捌けながら探すだけだよ」

『そうか…。この辺は本当に危険はないんだよな?』

「大丈夫だよ。この辺で一番怖そうなのはジンの方だし」

『…中身はこんなだけどな…』


 とりあえず、ぼーっとしているのも暇だし、危険がないというのであれば散策したい。

 素材採取といってもそもそも何の素材を採ればいいかも分からないから、こっちの世界特有の果物とかあったらそれでも採って食べてみたい。

 森の方へ入っても常にスノゥと隊長さんが視界に入るように気を付けながら散策を開始した。

 開始して早々というか、ここに来るまでの間にも思ったんだが、見たことの無い植物はチラホラとあった。まぁ、オレが知らないだけで向こうの世界にもあったものかもしれないけど。

 向こうにいたときもどちらかというとインドア派で、子供の頃に家族で行ったのは海や川ばかりで湖は行ったことがなかったし、森の方も虫とかには興味がなかったから川の方でばかり遊んでて良く見たことはない。

 

 マップと鑑定を頼りに果物を探し、食用となっていれば口に入れてみる。鑑定だけでは『酸味がある』とか『甘味がある』とか大雑把なことしかわからない。

 四足歩行で歩くから足場が悪くても気にならない。高いところに木の実がなっていれば立ち上がれば3m以上の高さでも届く。魔獣ライフも悪くない。

 ただ、何点を言えば先ほど小さなベリーを見つけたんだが、オレの手には小さすぎて採りにくい…というか採れなかった。

 だいたい、採れたところで一粒では味も分からんだろうから最低でも十数粒は採らなきゃならない。大きすぎるこの体…憎いぜ…。


『お?枇杷(びわ)っぽいのが生ってるぞ』


 枇杷は好きだ。結構元の世界と似たものが多いから嬉しい。早速味見をせねば!

 と駆け寄り手を伸ばした時だ。


「うわぁっ!ま、魔獣…っ!!」

『えっ!』


 すぐ側から驚く声が聞こえ、その声に驚き振り向くと12~3歳程の魔法使い風の少女が尻もちをついていて、こっちを青い顔で見ていた。

 …もしかしなくてもオレを見て怯えてるんだよな?


「リンに近寄るな!」

「なんでこの森にこんなのがいるんだよ!」


 少女の声を聞きすぐに駆けつけてきた少女より少し上くらいの女の子1人と少年が3人、剣や弓を構えて今にも飛び掛かってきそうだ。

 いくら体が大きくったってオレは丸腰の元人間だ。刃物を向けられたら子供だろうが怖いだろう!

 オレは咄嗟に踵を返しスノゥたちの方へ駆け出した。

 が、直ぐに逃げ出すように背を向けたのが良くなかったのか…。


「逃げ出したぞ!」

「手負いなんじゃないか!?」

「だったらチャンスじゃない!あんな大物仕留めたら大金がもらえるわよ!」


 って最初の子以外殺る気満々かよ!!馬鹿じゃないのか!?手負いの獣はむしろ危険度ますんだぞ!!


「大地よ阻め!」


 後ろの女の子が何かを叫ぶとオレの足元から岩が飛び出してきた。勢いづいているオレはよけ切れずすっころんだ。そしてそんなオレに向かって矢が飛んでくる。慌てて体制を立て直して再び走る。矢はオレに当たりはしたが幸いオレの体は頑丈に出来ているようで刺さることなく弾き返した。でも気持ち的に痛い。


「矢にも魔力を乗せろ!」




***スノゥサイド***


 やっぱりこの辺はあまりないなー。結構取りつくされてるから仕方ないけど…。

 そろそろお昼だしご飯は持ってきたけど魚でも採ろうかな…。

 水と風魔法で大きめの魚を一匹捕まえて宙に浮かせてみる。

 でも湖の魚って海の魚に比べるとあまり美味しくないんだよね。そもそも僕は料理できないし。

 そっと魚を湖へ帰す。 

 ジンは果物採りながら食べるのに夢中だからお昼はそんなに食べないかな?そういえばどこまで行ったんだろう?

 ふとジンのいる方向へ目を向けると何やらドタバタしている。

 なんか…ジンが追われてる?魔物の気配はないけど…。


「…ねぇヒューゴたいちょー」

「はい、なんでしょうか」

「ジンが子供たちに襲われてるみたい」

「え…っ?」


 子供が四人…いや、かなり後ろにもう一人いる…。

 ジンを野良と思うのは仕方ないとしても、あのクラスの魔獣を討伐しようとするなんて無謀もいいところだと思うんだけど…。

 

『スノゥーっ!たいちょーさーん!!助けてくれー!!殺されるー!!』


 遠くからジンが叫んでいる。


「あれは、新人の冒険者達ですかね。ジン殿に襲い掛かるとは無謀というかなんというか…」


 熟練者であればジンが纏う魔力が自分たちの攻撃を通すどうかくらいは分かる。

 ジン自身に自覚がなくてもジンはAランクにも匹敵する魔獣の身体能力や強度をもっている。そこらの冒険者では傷一つ付けることすら叶わない。

 だからこそ初めて会った時王宮で騎士団のトップにいる隊長や上級魔導士のレグがいてもなお皆に緊張感が走った。

 まぁ、一切殺意や敵意も無かったから、どうするべきか皆悩んでたんだけど。


 ジンは僕たちのところまで来ると僕と隊長の後ろに隠れる。全然隠れてないけどね。

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