競争者
この病室にくる人は、ガスマスクを被り宇宙服の様な服を着ることを義務付けられている。
しかし、彼女はガスマスクをつけておらず普通の服装だった。
彼女は、彼女は……
そこまで思っていると、トドメを刺す様に、隣に立っていたガスマスクを被っている女性が、
「十一さん今日から同じ病気の症状で、この病室で検査を行う事になった、鈴木麗奈さんです。仲良くしてあげてくださいね。」
それだけ言うと、麗奈を紹介した人は病室を早々と出て行き俺と麗奈は同じ病室に取り残された。
俺は、絶望した。
今まで、俺の病気には前例がなく俺が歴史に名前を残すことがほぼ確定していた。
しかし、いまはもう違う。突然現れた競争者がもし俺より先に死ぬような事があれば、俺はこの不治の病の第2の被害者として、圧倒的に俺が歴史に名前を残すことができなくなる可能性が出てくるからだ。
だってそうだろ1番目は、みんな覚えたりしてくれるが、2番目はほとんどの人が覚えてはくれない。
そんな事は無いと言い切れる人は、何人いるだろうか?
もし、そんな事が言い切れる人がいるのならば、今から簡単なテストをやってみてほしい。
テスト1
世界で1番高い山は、エベレストですが、2 番目に高い山はなんでしょう?
テスト2
世界で1番小さい国は、バチカン市国でが、2番目に小さな国は、何でしょう?
テスト3
日本で1番大きな湖は。琵琶湖ですが、2番目に大きな湖は何でしょう?
今の上3つとテストを行って全て瞬時にに答えられた、人は何人いるだろう?こんな事を言っては失礼かもしれないが、俺の予想では、10%もいないはずだ。
つまり、これほど人というのは1番に興味があっても、2番目には興味が無いのだ。
そのため俺は何がなんでも1番目にこの不治の病の病で死に、歴史に名を残し俺が生きていたという証を残さなくてはならない。
一瞬この女、麗奈を事故に見せかけ殺してしまおうかと思った。
だがもしそんな事をしてこの病気の症状の1つとして捉えられてしまった場合は最悪だ。
即座に今までの研究は打ち切られ、病気が拡散しないよう俺は殺され、麗奈という少女と共に俺たちの記録は、全て抹消されてしまうだろう。
歴史に俺が生きていたと名前を残す事が目標である以上俺には、麗奈を殺すという選択肢は無かった。
俺は、少ない脳みそを駆使してある結論に思い至った。
それは、自分が麗奈よりも先に死ねば良いだけという簡単な事だった。
麗奈より先に死ぬそうすれば、初めての事例としてその病気と共に俺の名前を残す事ができる。
まずは、コミュニケーションだ。
コミュニケーションを取り一体いつからこの病気の症状に悩まされてるのかを聞かなくては。
まずは挨拶だ。挨拶は基本だからな。
「俺は、2ヶ月ほど前からこの病室で入院来てるけどよろしくね。」
「…………。」
あれ?聞こえなかったのか?よしもう一度言ってみるか。
「俺は、2ヶ月ほど前からこの病室で入院来てるけどよろしくね。」
「…………。」
今度は聞こえてるよな、まさかシカト、シカトなのか?
くそ、だがここで諦めるわけにはいかないここで有力な情報を得ることがが出来れば、これから一年間楽に過ごすことが出来る。
よし、ならば今度は切り口を変えてみることにしよう。
「俺はここの病院に入院してから2ヶ月ぐらいから。何かわからない事があれば何でも聞いてね。」
「…………。」
「この病気に、かかったって診断されてからどれぐらい経つの?」
「…………。」
「この病気って一年以内って余命宣告を受けてるけど、この病気って治るかな?」
「…………。」
おいおい、俺がこんなに質問してるのに、何で何も答えてくれないだ。
ねえ君言葉のキャッチボールって知ってる?
これじゃあキャッチボールにならないじゃ無いじゃあねーか。
2時間たっても結局彼女は、何も答えてはくれなかった。
ガラガラ
扉を開けるとそこには俺が昼までいた病室とは、思えないほど変わっていた。
1時前
今日の夕食は、別の病室に用意したのでそちらで食べて頂くようお願い致します。
と看護士に言われ、別の病室て夕食を食べて戻ってきたらこんな事になっていた。
「おいおいここの医者はバカなのか?」
そんな事が自然と口から出てっこんでしまった。しかし、そんな俺のッコミにも麗奈は無言だった。
いや、バカバカなのだろう。いくら今まで事例のない病気だからと言って、思春期の男女を同じ病室に入れるか普通。
それに、麗奈が同じ病室に来たことによって俺の場合が半分になってしまった。
「あ〜くそ、めんどくせー。」
今日、俺は頑張った。あんなに頭を回転させて、麗奈にも気を使った。
俺は、ベットに入ってテレビを付けていつも寝る前に見ているジブリをみることにした。
しかし、内容が全然入って来なかった。
よし今日はもう寝よう。
俺は麗奈の方に目をやると麗奈もベットに入って寝ようとしていた。
「おやすみ。」
自然と、俺の口からその言葉が出てきていた。
「…………。」
やっぱり返事は帰ってこないかそう思った瞬間。
「お、おやすみ。」
と返事が帰ってきた。
「お、おお。」
突然の返事に俺は、少しびっくりした。
2時間質問しても、話しかけても全然返事も帰ってこなかったのに返事が帰ってきた。
そう思っただけで少し嬉しくなってしまった自分がいた。
調子に乗った俺は
「明日もよろしく。」
と上機嫌に答えた。
「…………。」
返事は、帰ってこなかった。
独り言のようになってしまい、病室に変な空気が流れた。
俺は恥ずかしくなった。
返事がただ帰ってきただけでコミュニケーションが取れたと思ってしまった自分がいたためだ。
クソ俺は小さくそう呟くと、俺は眠りについた。
残り余命日数314日
ここまで読んで頂きありがとうございます。
テストの答えは、1k2 2モナコ公国 3霞ヶ浦
となっています。1番は知っていても2番知らない人が多かったのではないでしょうか?