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英雄の転生

「おぎゃぁぁぁ!!(くそったれ女神がぁぁぁ!!)」


 俺の誕生は女神の罵倒と同時だった。


「おぎぁおぎゃぁ!(あの女神!人が転生を拒否したのに勝手に転生させやがって!何が「君の人生は面白いからまた見せてくれ」だ!ふざけんじゃね!!)」


 怒りの泣きと同時に魔力が溢れ出してしまう。


「な、なんて赤子だ。産まれて直ぐに魔力を放出するなんて信じれん」


 目がボヤけてはっきりはまだ見えないが白衣の爺さんが驚いてるのがわかる。

 どうやら転生したプレゼントに何を言ってるのかは理解出来るようにしてあるらしく驚きようが伝わってくる。

 そりゃ産まれたばかりの赤ちゃんが魔力吹き出せばみんな驚くか。


 俺でも驚くな。


 魔力を放出して直ぐに止めたが、普通は赤子が魔力を出せば異常だ。それに魔力を制御できなきゃ魔力の枯渇で生命維持も危ぶまれるんだが驚きすぎて気づいてないなこりゃ。まぁ異常と隔離されなきゃいいか。


 それよりもこのじいさん。口から唾が吹き出るのを止めて欲しい。産まれて血だらけなのは仕方ないけど唾だらけにされるのは勘弁だ。


「あら私の子は天才かしら」


 純粋に嬉しそうに笑みを浮かべる母と思われる女性。20前後だろうかかなり若い。それに美人だ。


「あぁ。これは成長が楽しみだ」


 母と思われる女性の側には温和そうな男性が立っている。とても優しそうな雰囲気を持っているが身体は鍛え抜かれているように見える。


 これが今世の父と母か。

 前世は戦乱だった。幼い時に父と母を亡くしているから記憶があまりないが、大切にはされていたのは記憶にうっすらとある。

 この平穏を護る。転生した以上はやるべき事をしよう。

 諦めも肝心だしな。受け入れるべきものは受け入れねばならない。


 不本意とは言え転生し、誕生した。それはまぁいい。

 だが、なんだこれは!

 すっかり自分が赤子になる事を忘れていた。

 声はでない。動きもそんなに出来ない。だが腹は減るし、出るものは出る。その都度来るのは若い美人な母であるエリシア。

 当然だが甲斐甲斐しく我が子である俺を世話してくれる。

 その度に羞恥に悶える。

 むしろ拷問。なんだこの羞恥プレイは!

 あ~早く動けるようになりたい。


 でも食欲には勝てない!本能が母のおっぱいを求めている!

 今日も空腹に勝てず吸い付く。美味すぎる。病み付きになる。


「ハハハ。やぁやぁ元気かい?異世界の英雄シリス。今世も偶然にも同じ名前で良かったねシリス君」


 授乳されていると目の前に絶世の美女が映りウインクしてくる。この美女こそが俺を転生させた女神。女神リリーナ。運命を司る女神だ。


 この女神は人が嫌がるのにも関わらず異世界に転生させた。

 まったくイライラさせる。


「ドラゴンを切り落とし、悪魔を屠り、魔王や勇者すらも殴り飛ばした伝説の英雄シリスもその姿になると可愛いわね。

 また私の元で働かない?」


 ー他を当たれくそ女神。


「うわぁ可愛い顔して言うねぇ。お姉さん食べたくなっちゃうよ。

 一応言うね。この世界はもうすぐ混沌の次代に入るわ。魔王が誕生し、勇者が出現したら世界の混沌は加速する」


 悪戯な笑みを浮かべる女神リリーナ。寒気がする。


 また魔王に勇者か。あいつらの出現は世界を壊す。世界を混沌とさせる。世界は悲しみに憎悪に満ち、日々悲鳴がどこかで響く。


 あの最悪をこの世界でも味わうのか。


「うん。良い(カオ)になってきたね。これで君は大丈夫だね。君は自由にやって構わないよ。それで世界は回る。それにその方が面白い」


 こいつ面白い言いやがった。人の人生で楽しみやがって。

 まぁ運命の女神だから仕方ないか。それが仕事か。


 ー女神リリーナ。世界の混沌までどれくらい猶予がある?


「そうだね。15年は魔王は自然発生しないかな」


 15年か。長いようで短いな。今から鍛練しないと守れるものも守れない。

 それに自然発生はしないか。この世界の事はわからないが、意図的に魔王を造り出すことも可能なのだろう。それとも魔王になるための儀式みたいな物があるのか。さだかじゃないが聞いても答えてくれないだろう。


 こいつは英雄譚が好きだ。激動の中から光を見つけて敵を打倒する。女神リリーナの好きな話だ。


 俺はそんな英雄好きな女神に見初められた。魂となった状態で女神と長らく語り合った。いや話を聞かされたってのが正しいか。

 悪戯好きな運命の女神リリーナも孤独な神。寂しいのかと話を聞いていたがこれが長い長い。散々相手をしたあげくには拒否した転生を強制された。


 女神リリーナの望むのは再びの英雄の歩みだろう。


 過去の俺を知る女神だ。俺が乗り越えた恐怖と試練以上のものが待ち構えているのだろう。


 それを全て打ち砕く。


 ー女神リリーナ。お前が望むものを見せてやる。


「ふふ。やる気になりましたね。楽しみですね貴方の輝き。楽しみにしています」


 すっと存在が薄れ、そして姿が消える。


 行ったか。それにしてもこれから大変だ。魔王に勇者か。

 かの者達が頭を過る。あんな凄惨な戦いはもう繰り返してはならない。

 女神リリーナの願望通りになるのは癪だが、俺はこの平穏を守ろう。人々が笑える世界になるように。


 とにもかくにもまずは身体だ。身体作りには食事が一番。

 いっそう母のおっぱいを吸う力を強める。


「あ、シリスちゃん。そんなに吸っても、出ないわ」


 ん?今違う声が聞こえたような。


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