財布がピンチです
『久しいな、人の子よ』
「なんでお前聞いてんの?」
魔王城を出た僕は薬草の採集を終え、帰り道の途中にある山を散策していた。
その山は翼竜の討伐クエストを行った所でもある。
『我は貴様のような人間に殺される程弱くはない。あの日貴様が倒したのは我の分身体だ。』
「死体アイテムボックスに入ったけど?」
『我の作る分身体は空気中の魔素をベースに作られるのだ、だから死んだとしても暫くは消えん』
「死体ギルドで買い取ってもらったんだけど」
『今頃その死体は消えているだろうな』
「消えた場合どうなる?」
『どうということはない。貴様がドラゴンの死体を偽装した詐欺師と言われるだけの事。』
「大事じゃねぇか!!」
買取金額の返還で許してもらえるか?
いやでも追加で罰金はあるだろうなぁ・・・。
どうしよう。
とにかく街に戻って確認取らないとダメだよな?
帰ろう。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「あのーユキさん?どうされたんですか?そんなに慌てて」
「討伐したはずのドラゴンが生きてた。」
「はい?それってどういうことですか?」
「薬草の採集が終わった帰りに山を散策してたんだけど、その時に見つけたんだ・・・相手も僕のこと覚えていたし、間違いない」
「でも死体を確かに確認しましたよね?」
「それが魔素をベースにした分身体だったらしくてそろそろ消えると言ってて」
「なるほど・・・状況は分かりました。ですが残念な事に対応は出来ません」
あれ?何かおかしい。
雲行きが怪しくなってきたぞ?
「何か方法は無いんですか?」
「方法と言いますか・・・もう何も出来ないんです」
もう?もうって言ったなこの人!!
タイムリミット的なやつでもあったのか?
「どうしようもないんですか?」
「はい。だってもう調査官の人が来てますから」
はい?
「はぁぁぁぁぁぁ!?」
もう来てるのかよ!!手遅れですかそうですか。
「終わった・・・人生終わった。」
「理由は聞かせていただきました。」
その声は唐突に後ろから聞こえた。
「誰です?」
「私は調査官のシェスカといいます。あなたの言い分は聞かせていただきました。同時に嘘でないことも確認が取れました。偽証罪は取り消しましょう」
おお!!
雲行きが晴れてきたぞ!!
「ありがとうございます」
「ただし!!クエストは失敗した扱いになるため青金貨2枚の返還を要求します。」
ですよねー




