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遅れた上に短くて申し訳ないです。今は本当に書ける時間が確保できないので、スローペースにやらして頂きます。
それは、食べることを止めなかった。
そしてある日、それは眠り始めた。
気が遠くなるほどの、次なる成長を促すための休眠期。
強靭且つ伸縮性を併せ持つ皮膚をした、平均体長十メートルにも及ぶ巨大蚯蚓。グラトニーワームはそうして生涯一度だけの長い眠りにつき、自らの肉体を成長させる。
その成長の倍率は休眠期に入る前に体内に蓄えた栄養と、その休眠期の長さに比例する。
それは、かの異常個体は人種計十四人、野性動物計三百六十二頭、同種十万五千八百七十六匹を補食せしめ、実に三百年に渡って眠り続けた。
そして、それは目を覚ました。
大森林の程近くにあるデシエスタ村には、霊山と崇められている山がある。
切っ掛けは、村を開墾したばかりの頃。まだ小山ほどだった霊山が、年々みるみると大きくなっていきそれに合わせて田畑の土壌もどんどんと良いものになっていったからだそうだ。
その頃に、あのお山には豊穣を司る女神様でもおるんかねと、誰かが嘯いたのが、信仰の始まり。
そんな霊山に向かって毎朝手を合わせるのが、この村独自の風習であった訳だが───。
「無い」
霊山が、それどころか左右に聳えていた山々含め、雄大な山脈全てがその姿を忽然と消していた。
この村を象徴する存在の消失に始めこそ我が目を疑い、その姿を探した。しかしすぐに皆気が付いた。自分達の村を覆う巨大な影に。
それは小さくなる影に反比例して少しずつ近付いてき、村全域に文字通り被さった。
そして。
ゴクッ
その日は、マリーの誕生会だった。親友のジェシカはプレゼントを用意していた。ザックはそんなジェシカにプロポーズする計画を練っていた。ご近所のバークス夫妻はその相談を受けていた。その娘のキャリーは幼馴染みのトムと今日は森に遊びに行く約束をしていた。トムは約束が楽しみで昨日の夜、寝付けなかった。反対に父のアランは風邪を引いて前の日から寝込んでいた。妻のタニアはそんな夫を心配して、今日は家族全員健康で平穏無事に過ごせますようにと朝早く起きて霊山に祈りを捧げようとしていた。
とりわけ特産品などないが、毎日お山に祈りを捧げて暮らし、人々が平和に過ごしていた平凡な村。そんな平凡な村のちょっと特別な一日は、もう永劫に訪れることはなかった。
村を飲み込んだ影はそんなことに価値を見出だすような生態を持ち合わせてなかったのだ。
体長五十キロにも及ぶ巨大なグラトニーワームが思うことは、ただ一つだけ。
(もっと、もっと食べたい)
野性動物三百六十二頭、同種十万五千八百七十六匹、人種百六十八人を補食したグラトニーワームは、食欲に突き動かされるまま、蠕動を開始した。
これからも投稿していきますので、よろしくお願いします。出来れば、ご意見、ご感想ぜひ下さい。