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二話投稿にしたかったやーつ。



 そもそもゲーム内にはこれほど多くの国家は存在せず、とてつもない規模の超巨大国家が幾つか点在するだけだった。その総数はどれ程小規模のものを合わせても辛うじて十に届く程度しかない。


 ハーロットはそんな超大国の一つを統べる大王の末息子という設定で各地に出没するNPCだ。見た目はキラキラした金髪碧眼で長身という正統派の王子様だが、とにかくプレイヤーのヘイトを稼ぐような行為しかしないことで有名な所謂お邪魔キャラクターとして配役されたNPCでもある。


 その性格は外見に反し最悪であり、自信家で傲慢かつ小心者のゲス野郎というおよそ人に好かれる要素を全く持っていない。各地で問題を起こしてはプレイヤーに後始末を任せたり、プレイヤーからクエストの討伐対象として狙われたり。一応は数少ない比較的関わりやすい王族キャラクターなのだが、プレイヤー間から最も嫌われているNPC選挙では毎回のように一位を独占、ついには堂々の殿堂入りを果たす程の人気振りである。


 グレムリンは総員百五十名からなる、ハーロットの親衛隊だ。何故か彼に忠誠を誓う美少女軍団という、プレイヤー達からこれまた別のヘイトを稼ぐ仕様になっている。





(しかし、文明崩壊から800年か)


 自分がプレイしていた時とは明らかに異なる技術力、聞いた覚えの無い国家郡。これらはそれが原因となっているのだろうか。ゲームが現実になったのか、ゲームと偶然に酷似しているだけの異世界に自分は迷いこんだのか。



 相変わらず疑問は尽きないが、それは今日の夜にでも通信設備を使って本拠地との交信を試みれば自ずと分かることだ。


 簡易拠点二階に設けられた浴室。少々手狭ではあるが、久しぶりの入浴に日本人特有の喜びを見出だしつつもそう結論付けるマリス。


(今は一日振りの風呂を楽しもう)


 はーっと息を吐いてゆったり湯船に浸かる。そして手足を揉みほぐしながら何も考えず無心で、ただ天井をボーッと見つめる。マリスにとっての細やかな癒しの時間。


 しかし。


「マーリースーくーん!」


 エルフの里はそれを悠長に楽しむ時間すら与えてくれないようだ。


「はぁ」


 先程とはニュアンスの違う溜め息を漏らすと、マリスは浴室を後にした。











「いやー、聞いてはいたけど凄いねぇ」


 椅子に腰掛け、繁々と興味深げに室内を見回すティグ。彼をリビングに招いたマリスは、土地の礼もあるしな、と彼と自分の前に飲み口を開けたヒーリングオイル缶を置く。


「これ程の建物を一瞬で作り出してしまうなんてね。話を聞いたときは正直半信半疑だったよ。因みにこれ、何?」


 自身の目の前に置かれた見たこともない黒濁とした液体の入る不思議な鉛色の容器を見つめて訪ねるティグ。


「お陰で助かった。礼と言っては何だがオイル缶だ。遠慮せず飲んでくれ」


 表情一つ変えずに言うマリスに僅かだが冷や汗を流しだすティグ。


「…………これは、好意の表れ、だよね?」


 確認も兼ねた自信無さげな呟きを漏らすと、何故か覚悟を決めた表情を浮かべたティグは、くいっと口をつけると勢いよく缶を傾けた。


「──ッ!?」


 こくこく嚥下する度にみるみる青くなっていく顔色。それをティグも意外と面白いところ(いじりがい)あるなぁ、と呑気に考えながら見るマリス。


「ぷはっ。はーっはーっはーっ」


 一気に飲みきったのか缶から口を離すと、大きく深呼吸を繰り返すティグ。顔色はもはや青を通り越して土気色である。


「お気に召したか?」


「あ、ああ。とても美味しかったよ。ご馳走さまマリス君」


 マリスの問い掛けに、もてなしに対する礼儀として精一杯笑みを浮かべるティグ。


「そんなに気に入ったのか。それじゃあ今お代わりを持ってこよう」


「結構です! マリス君、もう分かってやってるよね!?」


 里へ来たばかりの無表情は何処へやら、ニヤニヤとキッチンへ向かおうとするマリスにティグは絶叫した。













「マリス君って意外と苛めっ子だよね」


 少しジト目で此方を見るティグではあるが、美形とは言え成人男性のその仕草は同じ男として直視し難いものがある。とりあえず先歩の様子を拠点内の監視カメラに納めてはいるので後でテュケーに見せれば喜ぶことだろう。


「それで、簡易拠点(ここ)を見に来る以外に何か用でもあるのか?」


「…………今日、どうするって訳じゃ無いんだけどね」


 先程からかっておいて、用が無いなら早く帰れと言外に告げるマリスに憮然とした面持ちのティグ。


「マリス君の今後の里での役割について相談したいんだ」


 そう言うとおもむろにまた室内を眺め出すティグ


「建物の補修って得意な方かな?」



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