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1-1

短いです。二回目から既にギリギリです。

 リバール帝国領南の大森林。


 鬱蒼としたこの森の外れにぽっかりと空いた平野。周囲を木々に囲まれた平野は楕円形に広がっており、緑の芝生がまるで定期的に人の手が入っているかの如く規則正しく整えられている。


 その中心に地面に突き立つ銀の円柱──睡眠用カプセルがカシュッと音を立てて開封され、白く煙るポーションミストが漏れだし代わりに外気がカプセル内へと入り込む。


 カプセルから降り立ったのは全身に強化外骨格のような機械を纏ってその上から白のロングコートに身を包んだ長身の男だ。年の頃は二十の半ばまで過ぎか、鋭さを持った切れ長な顔立ちをしている。


 男──依人は辺りを見渡し全くの見覚えが無いことを確認。


(ここはどこだ?)


 睡眠用カプセルから出てきたということは、自分はゲームをまだプレイ中のはずだが、依人の記憶にある最後のセーブポイントはこことは似ても似つかない近未来都市。


(もしかしてスリープモード中にカプセルごと射出されたか)


 最大で30キロ超ぶっ飛ばせるという、一時期ゲーム内で流行ったテレビのドッキリ企画みたいなイタズラ。ちょっと前のアップデートで出来なくなったはずだが、改造用の非公式MODでも自作して入れたのか。ただのドッキリにしては手が込み過ぎているが、仲間内のその手のことに強い面々を思い出せばすとんと得心出来る。


(垢BANされても知らねーぞ、あの馬鹿ども)


 帰ったら注意も込めて手酷く仕返しせねばと意気込み、まず現在位置を確認しようとシステムウィンドゥを起動。念じれば脳波をヘッドギアが読み取り、半透明の文字盤が目の前に浮かび上がる、はずだが。


(出ない?)


 何も変化が起こらない。


(システムのバグか、ヘッドギアの不調か)


 恐らくは後者か。VRテクノロジーのネイティブ世代である依人には脳波読み取られ(ローディング)感とも呼ばれる独特な感覚が備わっているが、今は何も感じられないでいる。


 勿論、システムの齟齬からヘッドギアにまで不調が及んでいる可能性も考えられるが、なんにせよ厄介なトラブルには違いない。何せステータスウィンドゥが開けなければ、GMコールもフレンドとの連絡も取れず、インベントリも使えないため拠点帰還アイテムすら使えないのだ。


「ステータスウィンドゥ……音声入力もダメか。こりゃ本格的な故障か。はぁ、最近新調したばかりなのに」


 重い溜め息を一つつくと辺りを改めて観察する。


(本当に見たこと無いマップだな。あんなリアルな樹木のテクスチャなんてこのゲームにあったか? もしかして寝こけてる間に未告知の大型アップデートでも来たのかな)


 何か違和感はあるものの、そもそも軽い廃人に近い自分が見慣れないマップなど新マップ以外ないので、そうなのだろうと疑問を自己完結させる。


(とりあえず今は地道にフィールドワークしか無いか)


 他のプレイヤーに会いフレンドやGMに連絡を取ってもらえれば、リアルの家族へSOSを送ることも可能だろうし、システムの管理者側からのサポートも期待できる。


(面倒臭いことになったなぁ)


 依人は気だるげにとぼとぼと歩き出した。

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