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6、初めてのおつかい

「名前はキョロちゃんで」

 そう言ったとたん、パチンとパズルのピースが嵌まったような感覚。

同時に目の前のキョロちゃんと何かの線が繋がったみたいになりました。


「え?」

 思い切り首を傾げた私の脳内に響いた可愛らしい声。

『よろしく、あるじー』


「はい? い、今のキョロちゃん?」

『うん、そぉー』

 スリっと私の肩口に顔を摺り寄せてきたキョロちゃん。


「ど、どういうこと?」

『なまえ、もらったからぁ、あるじー。きょうからよろしくねぇー』


「名前付けたら主って…まさかっ」

 慌てて自分とキョロちゃんに鑑定発動。


結果。

私のステータスに 〈使い魔〉フェアリーバード(キョロちゃん)の表示。

キョロちゃんにも 〈契約主〉山田十和子 が…。


知らずにうっかり使い魔契約をしてしまったようです。


「えーっとキョロちゃん」

『なにーっ?』

「いいの?、私と契約して」

『うん、あるじといっしょ。おいしいのたくさん。うれしー』

 大層喜んでいる様に、良いのかそれでと問い返す気力が萎えました。

本人が幸せなら、もはや何も言うまい。


「これからよろしく、キョロちゃん」

 本日、素敵な相棒が出来ました。



あれから5日が経ちました。

キョロちゃんに乗せてもらって、辺りを走り回り。

落馬ならぬ落鳥すること十数回。

打ち身、擦り傷、捻挫、脱臼…etc.

自作の回復薬がこんなに有難く思えるとは。


キョロちゃん曰く

『あるじー、かるすぎー。もっとふとってー』

 乙女に対して逆サバを食らわしたくなるセリフを軽く言ってくれましたが。

確かに体重がなさすぎると、カーブの時に遠心力に耐え切れず振り飛ばされるんですよ。

食生活の改善で大分肉付きは良くなったのですが、何しろ最初がガリガリでしたからね。

でもまあ、苦労の甲斐あって何とか乗りこなせるようになりました。



「持ち物良し、買い物メモ良し、忘れ物なし」

 指さし確認の後、キャメル色のフード付きマントを羽織り、護身用のナイフを腰に装備して仕度完了。

マントの下に着ているのはもちろんリフォームしたマリアのワンピースです。

せっかくのお出掛けですからね。


「行ってきます」

 作業台の棚の上に飾ってある日記にそっと声を掛け、その前にある小瓶の花をチョンチョンと直す。

顔も知らない彼だけど、私にとってハルキスは薬師の師匠ですからね。

見守ってもらえるようお願いして(きびす)を返します。

一階では概にキョロちゃんがスタンバイ済み。


ちなみに一階はキョロちゃんの住居にしました。

当人も 『だいすきなにおいー』とポロロの葉の香りがする此処を気に入っています。

入口の扉も嘴を使って楽々と開閉可能。器用な子です。


「さて出掛けますか」

 何しろ今日はマリアの14才の誕生日。

せっかくのおめでたい日なので、初めて町へ行くことにしました。


第一目的は薬師資格の取得。

これが無いと始まりません。

師匠の資料にはギルドで取得するとしか情報がなかったし。

一応基礎薬学と魔法陣についてはガッツリ勉強しましたが、あくまで独学なので不安は隠せません。


次に買い物。

まずは食料、主に小麦粉または米。それと乳製品。

縫い糸や布、ちゃんとした裁縫用具も買いたいです。

余裕があれば靴。

今履いているだけで替えが無いし、冬用にブーツが欲しいです。


私が作った薬が売れるか判りませんが、まずは行ってみます。

薬草だけでも買い取って貰えたら御の字です。



「キョロちゃん、お願いね」

 屈んでくれた背にまたがり、羽の付け根辺りを掴んでライドオン。

「クェーッ」

 ゆくよーと勢い良く走り出すキョロちゃん。

たちまちグンと加速がこの身に降りかかります。


最初はこれで思いっきり後方に飛ばされたんですよね。

しかも着地点がドロドロのぬかるみ。

すぐさま【洗い】【濯ぎ】【脱水】【乾燥】を発動させましたよ。

もちろん【加熱】を重ね掛けした温水で。

アイテムボックスのオリジナル石鹸とシャンプーも大活躍。

最後にリンス代わりのオリーブオイルを塗って髪質を整えて終了。

シャワーと洗濯が同時に出来る優れものです。


とっとっとテンポよくキョロちゃんが木漏れ日の中を進みます。

天気も良いし、ちょっとしたドライブ気分です。

楽しくて思わず鼻歌を口ずさんでいたら。


『あるじのうた、すきー』

 ご機嫌な声が響いてきました。

「そう?だったらちゃんと歌おうか?」

『うれしー、うたってー』

「了解♡」 

 さて何を歌いますか…ノリの良い歌がいいですよね。

だったら息子が好きだった龍玉アニメの主題歌メドレーにしますか。


「では…」

 お、意外とマリア美声です。

私としては日本語で歌っているつもりなのですが、口から出るのはアーステアの言葉…自動翻訳みたいで面白いです。


美声であることに気を良くして、キョロちゃん以外誰も聞いていないのでノリノリで歌っていたら。

『あるじのうた、ちから、わいてくるー』

 興奮した様子でそう言ったとたん、いきなりキョロちゃんがスピードアップ。

「ちょ、速っ…キョロちゃん、落ち着いてぇぇ」


木々の間を風のように駆け抜けて行く様はまさに青い弾丸。

物凄い速さで景色が視界の彼方に消えてゆきます。

どうしてこうなったっ!?


その状態で森を抜け、(わだち)の跡が残る街道へと出ました。

途中で魔狼ぽいものを撥ね飛ばしたみたいでしたが、きっと気の所為でしょう。

徒歩3日の距離を体感で1時間とちょっと。

どんだけのスピードだったんですか。

いやぁ、よく振り落とされなかったものです。


並足くらいの速度に落としてもらい、道なりに進んで行くと万里の長城のような石壁が見えて来ました。

あれがトスカの町。


念のため鑑定をかけますと。

【サクルラ国・エンゲ領トスカ…近郊に3つのダンジョンがあり、そこを目指す冒険者が多くいる町。交易の拠点としても繁栄中】


マリアの故郷であるトレドの町も大きかったですが、このトスカの町も負けないくらい大きいです。


ちなみに町の名の始まりに『ト』が多いのは、平和とか発展の意味があるから。

日本でも幸とか福の字が付いた町がよくあるのと同じことのようです。

以上、アーステア豆知識でした。


近付いてゆくと大きな石造りの門と、その横に立つ兵士の姿。

門前の列に並んで待つことしばし、私の番になりました。

「騎獣は…フェアリーバードか。珍しいな」

 まじまじとキョロちゃんを見つめてから、髭もじゃの門番さんが私に視線を移します。

「身分証は?」

「すみません、田舎から出てきたばかりで持っていません」

「だったら通行料、1,000エルだ」

「はい」

 カモフラージュに持ってきたショッピングバッグサイズの肩掛けカバンを通してアイテムボックスから銀貨を取り出します。


もちろんハルキスのです。

引き出しの奥にしまってあったので有難く使わせてもらいます。

残りはあと金貨1枚に銀貨2枚、銅貨4枚。


ちなみにアーステアの通貨の単位は『エル』


鉄貨 10エル

銅貨 100エル 

銀貨 1,000エル

金貨 10,000エル

黒金貨 100,000エル

白金貨 1,000,000エル


金貨5枚あれば、一人なら贅沢をしない限り1ヵ月は暮らせるくらいの物価です。


さあ、いよいよトスカの町に入ります。





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