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14、レベルアップと戦争

「これで買い物はすべて終了っと、暗くなる前に帰ろうか」

『うん、わかったー』

 キョロちゃんと二人並んで家路を急ぎます。


すると眼前に大きな白い建物が。

「神殿だね。…せっかくだからお参りしてから帰ろう」

 ギリシャやローマにありそうなデザインの石造りの神殿は出入り自由らしく多くの参拝者で賑わっています。


石畳の廊下を通り、奥の祭壇に(ひざまず)いて祈りを捧げます。

「おかげさまで楽しく暮らしてます。キョロちゃんとも出会えたし、感謝しています。神様」

 小さくお礼の言葉を呟いたら…。


『…使用家電が増えました』


「はい?」

 突然頭の中に響いた声に、思わず呆けた声を上げてしまいました。

慌てて自身に鑑定を掛けると。


〈 トワリア(山田十和子) 〉


 14歳

 Lv. 10


 HP 120/120

 MP 150/150

 力:D

 敏捷:C

 知識:A

 知恵:A

 運:S


〈レアスキル〉

 鑑定Lv10 


〈スキル〉

 格闘Lv1

 アイテムボックスLv10

 生活魔法Lv10(冷蔵庫、洗濯機、ガスコンロ、電子レンジ、エアコン、掃除機

        ミキサー、LED照明)

 魔力制御Lv5

 調合Lv5

 製薬Lv5

 毒耐性Lv5

 料理Lv10

 裁縫Lv10

 歌Lv10


〈称号〉

 人類最強人種(おばちゃん) 不屈の精神 臨機応変 

 サバイバル上級者 ハンクラマスター  


〈加護〉

 創造神の加護

 ※ どの魔法も1回の使用が1MPで済む。


〈使い魔〉

 フェアリーバード(キョロちゃん)


なんということでしょう、ミキサーとLED照明が新たな仲間に。

知らないうちにレベルも上がってました。


ありがたい、本当にありがたいんですけど…。

何だろう、この100m走をローラースケートでブッチギリ優勝したような後ろめたさは…。

気にしたら負けと自らに言い聞かせ、溜息と共に神殿を後にしました。


ちなみにミキサーとLED照明の魔法ですが。


ミキサー【粉砕】【撹拌】【高速遠心分離】【石臼式低速圧縮絞り】

LED照明【明るさ調節・強、中、小、極小】


でした。



門番のボリスさんに挨拶して、すぐに暗くなるから泊まって朝一で出かけろ、宿がないなら俺の家に来いとか心配性なお父さん爆発でしたが、丁重に断りやっと出発。


『あるじー、またうたってー』

「えー、あのスピードで落ちたくないよ」

 新たに持ち手が付いたとしても、落ちない自信はありません。

『だいじょうぶー、まほうあるからー』

「へ?」

 キョロちゃんの説明によると、高速で走っている時は周囲に風のバリアーみたいなものを張って障害物から身を守っているのだそう。

だから中にいる私も落ちることはないし、外からの攻撃も防御できるとのこと。

確かにあのスピードで走って、何かにぶつかったらキョロちゃんも無事では済まないですよね。

納得です。


というわけでキョロちゃんの上で何を歌うか考察中。

ならば娘が大ファンだったアイドルグループの楽曲でゆきましょうか。

暇さえあればリビングのテレビでライブDVDをかけまくっていたので自然と私も覚えてしまったんですよね。

切ない曲調のものもありますが、ここは元気が出る楽しい曲にしましょう。


『あるじのうた、すきー』

 歌い始めてすぐにキョロちゃんがスピードアップ。

あっという間にトップスピードに。

「ちょ、キョロちゃん。お手柔らかにぃぃ」

 風の障壁を(まと)い青い弾丸と化すキョロちゃんのおかげで、あっという間にハルキスハウスに到着。

早く着いて助かったけど、寿命が確実に2,3年は縮んだ気がする今日この頃です。



キョロちゃんと二人して【洗い】【濯ぎ】【脱水】【乾燥】のフルコースで身を清めると、買ってきた物を簡単に片付けてから、念願の小麦粉も手に入ったことですし計画を遂行すべく行動開始です。


 小麦粉、卵、ミルク、ベーキングパウダーは無いので重曹で代用。


余談ながらパスタを茹でる時に重曹を加えると、中華麺のようにもっちりした麺に変わります。 

やり方は簡単です。

お湯を沸かし、塩、重曹を加えて通常の茹で時間より2分延長するだけです。

お試しあれ。


ここで新魔法の【撹拌】が大活躍。

卵の泡立ては意外と重労働ですから助かります。

材料を混ぜて【オーブン機能】で焼けば、スポンジケーキの出来上がり。


【脱水】で少し水分を飛ばしたミルクに砂糖を入れて【撹拌】で一気に混ぜて生クリームを作り、カットしたフルーツを飾り付ければ…

はい、デコレーションケーキの完成です。


前に作った唐揚げとサラダをアイテムボックスから取り出し、買ったばかりのポットでハーブティーを淹れ、パンを添えます。

これで準備は万端。

 LED照明の【極小】をケーキの上にロウソク替わりに幾つか灯し、小さな声でハッピーバースデーを歌います。


「お誕生日おめでとう、マリア」

 生まれてきてくれてありがとう。私と巡り会ってくれてありがとう。

あなたのおかげで私は今、此処にいることが出来てます。

感謝の気持ちを込めて息を吹きかけ、灯光を消しました。



「ん、美味しい」

 久しぶりのケーキは我ながら良い出来です。

さすがに一人でワンホール完食は無理なので、8等分に切り分けた残りはアイテムボックスへ。


揚げ立ての唐揚げを摘まみながらギルドで貰ってきた地図を眺めます。

アーステアはイース、ノース、サース、そして私がいるウエース大陸と4つの大きな大陸が四葉のクローバーのような形に集まっています。

各大陸に5つ、または6つの国があり、周囲には小島が集まった諸島連合国が3つあります。


そして世界の中心であり4大陸の接点に位置するのが聖アリウス神国。

イタリアのバチカン市国のように、神に祈るためだけの国…のはずなんですが。

近年では腐敗が進み、権力と金の亡者が溢れる腐国と化しているとか。


ウエース大陸の北東に位置するのがサクルラ国。

その隣が先の戦争の相手・ヨウガル国。

二つの国を見比べて今日聞いた話を思い返します。



戦いを先に仕掛けたのはヨウガル国。

数年続く旱魃により財政が逼迫、手っ取り早い解決策として国内に多くのダンジョンを持ち、穀倉地も広く豊かなサクルラ国の富を狙って進軍を開始。


その結果は引き分け。

しかも終結理由が、なんとドラゴンの襲来。

戦っていた両軍の所にドラゴンが舞い降り、まるで天が罰を下すようにすべてをそのブレスで焼き尽くしていった。


両軍ともその被害は甚大で、しかもやってきた原因が判らぬ以上、再びドラゴンが襲ってくる危険性は高く、両国は戦いを終結するしか無かった。

どちらも利がなく、負債が増えただけの戦いだった。


おかげでヨウガル国は今も貧困に喘ぐままだし。

サクルラ国も兵士だけでなく魔術師、治癒師、薬師の多くが戦死。

貴重な人材を失った痛手は未だに癒えていない。


「ハルキス師匠もその時に亡くなったのかな」

 棚にある日記に目をやりながらボンヤリとそんなことを考えます。


ちなみに此方では魔法使いではなく魔術師です。

裁縫師、鍛冶師、彫金師といったように専門職にはすべて『師』がつきます。


「とにかく今は神様に与えてもらった第二の人生をたっぷり謳歌しないとね」

 それが身体を貰ったマリアと、生きる術をくれた師匠に報いることだから。


あとは今日みたいにうっかり地球産の知識を漏らしたりしないよう気をつけることを肝に銘じておきましょう。

罪悪感で圧し潰されないためにも。




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