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107、神国到着


「凄いねー」

 感心仕切った様子でサミーが眼下に広がる街並みを見つめてます。


4大陸の中心にあるアリエス神国は、その中央にある白い石造りの大神殿を囲むように多くの建物が円状に存在してます。

こうして遠くから眺める分には本当に綺麗です。

中身はとんだ伏魔殿ですけど。



あれから無事にアイオリ河に給水の魔道具が設置出来るようになりましたので、アイテムボックスにあった魔石とパーツ別になった魔道具を技師のノリスさんに渡し、領主さまと正式にレンタル契約を交わしたところで私達の役目は終了。


街の外れに新たな集落を作れることになったムイルさん達に見送られてサンスの街を後にしました。


別れる時に私が歌ったものを聖歌として使いたいとお願いされましたので快諾。

もともとが讃美歌ですしね、良いと思いますよ。

これからは多神を崇める分け隔ての無い教えを広めてゆくそうです。

頑張って下さい。



「じゃあ、私達は歌巫女一行に戻るね」

「ああ、レリナによろしくな」

 私の影武者をしてくれてるレリナさんから、早く戻って下さいとの半泣きな訴えが届きましたので急ぎましょう。

いつ正体がばれるか判らない偽巫女役は、かなりのストレスだったようです。

すみませんね、後で大好きなマカロンをたっぷり渡しますから。


「その前に姿を変えておくね」

 パチンとサミーが指を鳴らすと、私の髪が黒からストロベリーブロンドへと変化します。

最初からこうしておけば(かつら)なんて暑苦しいものを付けなくて良かったと気付いたのは随分と旅が進んでから。

まさに一生の不覚っ。


同時にカナメ君の髪と目の色が金と蒼碧に変わり、イブさんとウェルの姿も人族風になります。

これから向かうのは人族以外はクズと公言している国ですからね。

本来の姿で入ったらトラブルの元になるのは明白です。



ウェルはこの後、聖都にいるサラレノアさんと会ってから改めて合流予定です。

なのでキョロちゃんとマーチ君とも一旦ここでお別れです。

すぐにまた会えますけどね。

では歌巫女と従者2人、御付きの侍女の4名は一行に戻るとしましょうか。


ちなみにサンダー君は野良の飛びトカゲとして私達の側に居てくれることになってます。

どこにでも居る存在って、こういう時に強いですよね。




「ようこそ、聖都へ」

 私達一行を迎えてくれたのは、先輩歌巫女であるランナーサさん。

栗色の髪と目をした上品な美人さんです。

サクルラ国の右下にあるコマーザ国の出身で、元伯爵令嬢だそうです。


神国が誇る大神殿は東が神官や巫女が暮らす住宅エリアで、北が事務仕事をする執務エリア。

南が祈祷をしたり相談事を受けるなど、一般信者が出入りする神事エリア。

そして西が教皇や枢機卿などのお偉いさんが住むエリアとなっています。


目的の召喚陣があるのは中央に高く(そび)える塔の最下層で、此処は許された者だけしか立ち入れないそうです。


「ごめんなさいね。本当なら大々的に出迎えをするはずなのだけれど、いろいろと雑事が立て込んでいて、枢機卿さまや神官長さまはとてもお忙しくてこんな形になってしまって」

 出迎えたのは彼女とその御付きの人、後輩の歌巫女3人だけなので凄く申し訳なさそうに此方を見てます。


歌巫女の力は人族にしか発現しない神の恩恵。

つまり神国が喧伝している『人族こそ最も神に愛されている証』ですからね。

新しい巫女の出現は吉兆として大いに周知させたいのでしょうが。


ま、それは当分の間は無理でしょう。

何しろ美少年ジジイが転移魔法陣のことを世界に向けて発信しましたからね。

その情報に各国は色めき立ち、すぐさま神国に向けて特使を派遣したりと真相確認に奔走したそうで。

で、転移魔法陣の話が真実と判ってからは、神国に1日も早く召喚陣を破棄するよう矢の催促だそうです。


神国首脳部はその対応に追われまくってますので、新人の歌巫女の事に割く時間なんてどこにも無いのが現状です。



そのまま案内されたのは東の住居エリアの一角にある2階の角部屋。

新人の歌巫女用なのに、中には豪華な作りの広い部屋が3つもあります。

これだけ見ても神国が献金と称して、いかに多くのお金を民から毟り取っているかが判りますね。


ちなみに巫女の住居がある2階は男子禁制なのでイブさんは侍女として一緒に暮らしますが、サミーとカナメ君は1階の従者用の部屋で寝泊まりです。

なので2人とは此処でお別れ。

住居では女性の騎士が護衛として付いてくれるそうです。


「彼女が貴方の担当の騎士よ」

 そう言って紹介されたのは。

「ウェルナと申す。良しなに頼む」

 軽く頭を下げたのは、はい御存じウェルです。


「治癒師総長のサラレノア様からの推薦なの。仲良くしてあげてね。それと貴女の騎獣としてフェアリーバードと愛玩用にゴアラルが遣わされるわ。もう獣舎に届いているそうだから後で見に行くと良いわ」

「何から何までありがとうございます」

 淑女の礼を返すと、ランナーサさんが笑顔で頷きます。

「判らないことがあったら何でも聞いてね。今日は疲れたでしょうからこのまま休んで。お勤めのことは明日説明するわ」

 そう言うと後に控えていた侍女さんと共に部屋を出て行きました。



「取り敢えず潜入成功ね」

 楽しそうですね、イブさん。

「だが油断は禁物だ」

 ウキウキしているイブさんと違い、ウェルは難しい顔をしてます。

「サラさんは何て?」

「治癒師総長とは言ってもヤサカの妻だったことから上層部に目を付けられている。だからあまり大ぴらには動けないそうだ。便宜が図れるのは此処までだと思って欲しいといっていたな」

「まあ、そうでしょうね」

 ウェルの言葉に大きく頷きます。


「サラさんの役目は他が動き易くなる為の目晦ましでしょうから」

「他って?」

 不思議そうに首を傾げるイブさんに、肩を竦めながら説明します。


「美少年ジジ…いえ、ギルマスの手の者ですよ。敢えてサラさんを神国へ(おとり)として潜入させたんです。上層部も馬鹿じゃないですから、神国の裏事情を知りながら逃亡したヤサカさんの奥さんだったサラさんのことは当然、警戒します。そうなると他の者への監視が緩くなりますから、いろいろと調べられるという訳です」

「なるほどねぇ」

 イブさんは素直に感心してますが、私としては舌打ちの一つもしたいです。


囮役とは字の如く、(はこ)の中で化けることです。

でもその中で化けの皮が剥がれてしまったら、捕らえられるか殺されるかの2択しかありません。

そんな危険な役をサラさんに遣らせてまで得る情報が本当に必要でしょうか?

やっぱり次に会った時に辛子入りシュークリームを食べさせてやろう。

思い切り泣くがいいです。



「でも本当にトアちゃんが言ったみたいになるかしら」

 半信半疑といった風情のイブさんに、ええと大きく頷きます。

「神国の上層部なら必ずやるでしょうね。ここまで来たら各国からの召喚陣破棄要請を無視する訳にはゆきません。召喚陣は近いうちに破棄されるでしょう。ですが新たな勇者召喚も止める気はなさそうですから、ヤサカさんを召喚した時のようにコピーした魔法陣を別所に新設するはずです」

「ならばそれを是が非でも阻止せねばな」

 ええ、それが私達が神国に来た目的ですからね。

「むっ」

 意気込むウェルでしたが、何かに気付いてその視線を外へと向けます。


『戻ったでー』

 軽く手を振りながらサンダー君が窓から入ってきました。

『いやー、ほんまに此処はとんでもないとこやなー』

 テーブルの上に降り立つなり、げんなりとした顔をしてます。

「何かありました?」

『おお有りや』

 身を乗り出したサンダー君の話を要約すると。

聖都の正門では多くの隊商が祝福料を支払う為に長蛇の列を作っていましたが、その荷馬車から神国の兵達が勝手に荷を持ち出していたのだとか。

ですがそれに文句を言おうものなら『神の使徒たる神兵に逆らうのか』と脅され、逆に暴力を振るわれる始末。


まったく何が神の使徒ですか。

遣っていることは追いはぎと変わりませんよ。

神官長と呼ばれる人もそれを見ていましたが、咎めるどころか分け前を寄こすよう命じていたとか。

上から下まで完全に腐ってますね。この国は。

神の名さえ出せばどんな無茶でもまかり通ると思っているんでしょうね。

一回、更地にした方が世の為と思えてきましたよ。


まあ、さすがにそれは出来ませんけど…。

上層部の首のすげ替えくらいはやっても(ばち)は当たらないと思うので、召喚陣の破壊ついでに大掃除もしておきましょうか。


この手の(やから)は1匹見掛けたら30匹はいると思えですからね。

徹底的に遣りますよ。







総合評価が1,600ptを越えました。

拙い作品を気に入っていただき、どうもありがとうございます。(*´▽`*)ノ゛

これからも楽しんでいただけるよう頑張って行きたいと思います。

よろしくお願い致します。<(_ _)>

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