1、こんにちは異世界
素人作品です。
少しでも楽しんでいだだけましたら嬉しいです。
白い、どこまでも白い空間。
そこをフワフワと漂う。
さっきまで病室で、色んな器具に繋がれていたはずだけど。
ああ、やっぱり 私 死んじゃったのか…。
苦しかった身体が凄く楽だもの。
でも未練はない。
自分なりに力一杯、生きたって胸を張れるからね。
余命宣告されてから、死ぬまでにみんなとしっかり思い出作りも出来たし
『私の分も幸せに…』って最後の言葉もちゃんと言えたし
結婚して、事故で旦那が死んでから一人で2人の子供を育てて
その子達も無事に大学を出て、就職して好きな仕事を頑張ってる。
ちなみにどっちも結婚を前提とした彼氏&彼女持ち。何の不安もない。
まあ、贅沢を言わせてもらうなら孫の顔くらいは見たかったかな。
そんなことを考えていたら、不意に上から声が掛けられる。
『ほいほい お前さん』
暢気この上ない声に似あう笑顔で白髭のおじいちゃんが浮いていた。
『私ですか?』
『そうじゃよ。お前さんは、山田十和子ちゃんじゃな』
『50に軽く手が届くおばさんなので、ちゃん付けはこっ恥ずかしいですがそうですよ』
『ワシは…』
『神様でしょ』
『先に言うでない。次の言葉が出づらいわ』
『だってこのシチュエーションで他にどう言えば?』
『ああ言えばこう言う。さすがは【口先の魔術師】じゃな』
『…よくご存じで』
『どんな厄介なクライアントでも、舌先三寸で煙に巻いて契約を取り付けると社内の一部では評判じゃったな』
『その評については異議ありです。
どんな人間だって何もしなければ、何も出来ないと思いますよ。
客先の望む状況を調べ上げて、契約の落とし所を見つける。
その下準備に膨大な時間と労力かけてきました。それを知ろうともせず、口先だけとか勝手なことを言われるのは心外ですよ』
『ほっほっ、頼もしい事じゃな。さすがはワシが見込んだ魂だけはある』
『は?』
『実はの、話せば長いことなんじゃが』
『じゃあ手短にお願いします』
『…………』
ちょっとの間、絶句してから口を開いた神様の話をまとめると、神様が管理している世界の一つに【アーステア】というものがあるそうで。
そこでは簡単に命が消えていくらしい。
災害で、戦争で、飢饉に疫病、そして魔獣の存在。
アーステアは有名な最後のファンタジーのような剣と魔法の世界。
海や山、森や草原に魔獣と呼ばれるモンスターが跋扈し、脅威となっている。
そんな状態が続くとどうなるか?
輪廻転生がフル稼働状態になり魂が摩耗し、やがては消滅してしまう。
自転車操業は辛いからね。
で、それを防ぐために他の世界から魂を呼び込んで輪廻のペースダウンを図っているというわけ。
業界的にいう『テコ入れ』ってヤツですね。
『それで私に声を掛けた…と』
『そうじゃ、簡単に死なない図太い…』
『はぃ?』
『あ、いや…』
『…まあ、良いですけど。でも私、簡単どころか早死にしてますよ?』
『それは病気に罹ったからじゃろ。そうでなかったら100までは軽く生きたぞい』
『ええっ、そうなんですか?』
『おう、ガッツがあるというか、図々しいというか…』
『あぁ?』
『な、何事にもめげない精神は称賛に値するからの。で、行ってくれるか?』
『ちなみに断ったらどうなるんですか?』
『地球世界の輪廻に乗り、時が来たらまた生まれるだけじゃ。
アーステアに行っても死んだら、戻るのは地球の輪廻じゃしの』
『なるほど…死んだら先に逝った旦那に会えると楽しみにしていたんですが』
『それはすまんの。じゃが十和子ちゃんの連れ合いは、もう別人として生まれとる。ちなみに今回は可愛い女の子じゃ』
『あら、それは残念。けどあの人が女の子ねぇ…笑けるわ。
イノシシみたいなおっさんだったのに』
『転生すれば前世の記憶はなくなり、容姿も変わるからの』
『確かに。だったら私も同じですか?』
『通常は記憶は無くして送るんじゃがな。
今回はおまけで付けておいてやろうかの。その方が面白そ…』
『は?』
『な、何でもないぞい。それで行ってもらえるかの?』
『そうですね。せっかくのお誘いを無下にするのも心苦しいですし』
『おお、行ってくれるか。では早速プレゼントじゃ、3つの望みを叶えよう』
『いいんですか?そんなことして』
『先渡しのご褒美みたいなもんじゃから気にせんでええ』
『と言われても…欲しいものは特にないんですけど』
『広域殲滅魔法全般とか剣聖スキルとかどうかの?不老不死もあるぞい』
『そんな物騒なものはいりませんっ。それに不老不死って、私に何させたいんですかっ?』
『欲がないのう』
『欲というより自分を知っているだけです。そんなものをもらっても有効利用できなそうですし、身の丈以上のものを手にしたところでロクな事になりませんよ』
『じゃ、じゃが不老不死は魅力的じゃろ。大抵の人間は欲しがるぞい』
『いりませんよ。そんな疲れそうなもの。
締め切りや期限があるから人は頑張れるんです。
そもそも歳を取るのが嫌だとか怖いとかいう人の気が知れません。
歳を取る、大いに結構じゃないですか。
経験値が上がって不測の事態に最良の対処が出来るってもんです。
老いてゆく身体だって、その人が懸命に生きてきた証です。
誇ればいいだけのことです。
だいたい自分の人生を神様にお膳立てしてもらって何が楽しいんです?
必要なものは自分の手で勝ち取りますよ』
『し、しかし何か渡さんことにはワシの気が済まんのじゃが』
『うーん、なら子供から勧められたラノベにあった【鑑定】【言語理解】【アイテムボックス】をお願いします』
『そんなもので良いのかね?』
『ええ、これでもかなり反則臭いですけどね。アーステアの人はゼロからのスタートなわけですし』
『うむ、その志や良。ワシが見込んだ魂だけはある。
じゃがゼロスタートではないぞい。みな何かしらの恩恵を与えておるからの。
それに十和子ちゃんに入ってもらうのは死んだばかりの娘の身体じゃ。
その子の記憶を引き継げる』
『でしたら言語は習得済ですね』
『うむ、それで最後の一つはどうするかの?』
『一般的な恩恵ってどんなものですか?』
『剣術、格闘、弓術などの初期スキル。または身体強化や生活魔法といった初級魔法じゃな』
『でしたら生活魔法をお願いします。向こうには冷蔵庫も洗濯機もレンジも掃除機もエアコンもガスコンロもないみたいですし。
その代わりになる程度の魔法があったら便利そうなので』
『了解じゃ。では行ってくるがよい』
『はい、いろいろありがとうございました。第二の人生、めいっぱい楽しんできます』
『ほい、達者でな』
ニコニコと手を振る神様に見送られ、私はアーステア目指して急降下した。
ちょっとしたスカイダイビング気分を味わえて楽しかったのは秘密だ。
『行ったか…ふむ、なかなかに面白い子じゃったな。
このワシにあそこまでズケズケと物を言う子は久しぶりじゃ。
その図太さを祝して…少しばかり幸運度を上げておいてやるかの。
ついでに加護もの。あの子がアーステアで何を成すのか、楽しみじゃな』