50000兆円欲しい!
「50000兆円欲しい!」
トランクを持ってに無くなりかけたパンを買いに走る中、そんな事を叫んでいる6歳くらいの少年を見かけて私はふと足を止めた。
子供はもう何日も洗ってないような汚れたの服を着て。うずくまって50000兆円欲しい、50000兆円欲しいと訴えかけていた。
親とはぐれたのだろうか?なぜ5京円ではなく50000兆円なんだろうか?
「50000兆円あったら何を買うんだい?」
いろいろな疑問が浮かんだがその全てを飲み込んで。私はしゃがみ込むと子供と目線を合わせてそう聞いていた。
子供は一瞬自分に話しかけられたのか分からずポカンとする。しばらくすると自分に話しかけられたのを理解した。
「パン!パンがお腹いっぱい食べれる!」
「……っく」
全てを理解して思わず涙が出そうになった。
親とはぐれたんじゃない。この子は捨てられたのだ。
50000兆と言いたかったんじゃない。兆までしか数字の桁を知らないからこの子なりに必死に考えたのだ。
5京円のパンひと切れがほしいために。
「……やるよ」
気がつけば私はトランクを差し出していた。よく分からない顔で首を傾げる子供の前でトランクの蓋を開ける。
「わぁ!」
子供が年相応の子供のような声を上げる。
私の持っていたそのトランクは、1兆円札の束を満載していた。
私はそのトランクを置いていくと来た道を戻り始める。
「あの金で買えるかな」
50000兆円は3日前の値段だ。
もうこの国では100000兆円積んだって、パンひと切れでさえ買えなかった。