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〇平線

作者: 外海 茂寿
掲載日:2016/01/25

この浜の向こうには海が広がっていて、海はやがて地平線にて天と交わる。

浜より出ずる船も、天より出ずる太陽も、行きは地平線を上から下に落ちていき、帰りは逆に下から上に登って来る。

しかし船に乗る漁師たちは、「地平線までいっても、そこには地平線があるだけだよ」という。

地平線にはその向こう側が存在していて、私はこの島から今見えている地平線の向こう側には辿り付けるけど、決して地平線を超えることはできない。

海だから海平線にはならねーのかよと、地平線に向かって石を投げてみるけど、石は地平線どころか波うち際からも出れずにぽしゃる。

地平線一杯に廃ビルが見えて、どこまでも廃ビルが広がって思えるからってビル平線にはならないし、雲でも雲平線にはならない。

地平線の地は地球の地。地球は広い。地球は丸い。だから地平線はどこまでも私を囲う。

そのことを決して出れぬ檻のように捉える志向がある私はきっと変わり種で、でも檻を出るチャンスが与えられたのならば出たくなるのはきっと私が変わり種だからではない。それが私がこの島にいる理由。

もう一回石を投げる。かわいそうな石はやっぱりさざ波に消えていく。その波紋も音すらも、波は何事も無かったかのように吸収してしまう。

私が檻を出たかった理由の源は、私が投げる石のようになりたくなかったからかもしれない。地平線の内側はいろんな物がたてるいろんな波があって、私のような小石はどんなに普通に跳ねても、きっと波に呑まれて流されて海の下に消える。果てしなく無意味だ。地球規模のバタフライ効果を起こす羽ばたきの主になりたいとまでは望まない。せめて波に抗いたくて、跳ね回って抗ってるうちに地平線が見えて、気付いたら地平線から外に出る機会が来た。

なんというご都合主義かとも思うが、やれば案外やれるものだ。

そろそろ時間だ。電話が鳴る。

「そろそろ時間です。ロケット乗車口まで来てください。」

「はいよ。」

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