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親世代ではなかったのですか?

親世代ではなかったのですか?

作者: 立木 明

初投稿になります。

なんとなく書きなぐったものですので、さらっと読んでいただければ嬉しいです。


変更:4/21 ゲームタイトルを「勿忘草」に変更いたしました

 転生だとかトリップだとか、巷にはそんなもの溢れかえっていて珍しくもない。

 そう思うのは、自分もまたその珍しくもないものになってしまったかなんだろうと思う。



 自分ことリリス・マクベシー。マクベシー伯爵家の二女で現在16歳で絶賛婚活中です。

 そんな説明はいらないとか言わないでいただけると嬉しいです。物事には順序というものがありますからね。

 初めに言いましたが転生だとかトリップだとか、世間にはそんなものが溢れかえっています。

 ですから、私がニホンという国の女子高生というものであったことも、そこで死んで異世界に転生したこともありふれたことの一部なのです。

 ひとえに異世界転生といっても、様々な世界があります。中世に似た世界、昔のニホンの世界、著作物の世界。

 私が転生したのはネット小説でよくある『乙女ゲーム』の世界です。

 とは言っても乙女ゲームと言われる前の作品で、女性向けシミュレーションが珍しかった時代に作成されたもの。

 マップ移動をしながらイベントを発生させ、攻略していく全年齢のゲームだったはずです。

 説明があいまいになってしまうのは、このゲームは友人に勧められたもので特にハマることも、思い入れもないからでしょう。

 辛うじて攻略対象者の容姿と名前がわかる程度です。

 でもですね、それは過去の話なのです。だって攻略対象者は若き日の父で、ライバル令嬢は母なのですから。


 私が転生したこの乙女ゲームの世界は、二十年前が原作の世界でした。

 よってよくある悪役が頑張ることも、ヒロインが引っ掻き回すこともありませんが、元となるゲームを少しのべておきましょう。

 タイトルは『勿忘草』。中世ヨーロッパに似た異世界で、剣や魔法がない学園ものです。

 主人公は子爵令嬢の16歳の儚げな美少女で、彼女はそこで上級生の侯爵家や伯爵、子爵家、数少ない平民学生などの男性と出会い彼らの悩みや闇を解決しつつ恋心を育んでいくお話になります。

 ちなみに貴族は全員15歳から18歳までの3年間を王立ヴァルリア学園で学びます。

 一般の人も各領地で実施されている試験を受ければ入学できますが、それには並大抵の能力でないとなりません。

 それでも入学がなれば将来を約束されたも同然。王宮に士官も叶いますし、学園で作った人間関係をフル活用し貴族に使えることも可能になります。

 それぞれ地位は貴族よりも低いものの、一般で平民が採用されるものより待遇もよいので就職には困りません。この学園出身というだけあって能力も高いのです。

 過去には学園出身の平民が、貴族間の問題を解決に導いたなんて話もあります。

 もちろん平民が貴族に意見しようものなら殺されますが、その人物はなかなかの曲者で、世渡りが上手かったのと当時学園に在籍していた王族と交友があったことで死罪にはならずに済んだようです。

 歴史が好きな私は彼の逸話を読むたび、当時に生まれたかったと思わずにはいられません。私の憧れであり、結婚するなら彼のような方がよいと思っています。

「リリア、オレの話聞いるのか?」

「……え、ええ。もちろんですわ、アストレ様。彼女から今度の夜会のパートナーの誘いがあったので姉にパートナーを変わってほしいと伝えてでしたね」

 いけません、今はアストレ様とお話中でした。午後の木漏れ日が気持ちよくて現実逃避をしてしまいました。

 アストレ様は同じ伯爵家の次男です。それと姉の婚約者で私たちの幼馴染じみでもあります。

 赤い髪と赤い目の美丈夫で、学園でも屈指の剣の腕前の方。その色と同じく何事にも熱血な方です。

「アストレ様、あなた様と彼女との関係に口をしていいのか迷いますが、幼馴染としてあなた様の婚約者の妹として言わさせていただきます」

「なんだ」

「あなた様はバカで考えなしな方だったのですね。幻滅いたしました」

「なんだと!お前にバカにされる筋合いはないはずだ!」

「あら?声を荒げないでください。私は客観的に述べているだけですよ。

彼女――ティナ様でしたかしら。ティナ様と交友関係を結ぶことはお家のためにも良いことでしょう、ですが過度に入れ込むなど言語道断です」

「リリア、言っていいことと悪いことがあると教えられなかったか……っ」

「ええ。ですから私からの忠告です。アストレ様、仮にも婚約者がいる身なのです安易な行動はおやめください。

姉との婚約はお家同士の契約に基づくものですが、それをなくしても姉のあなた様への心は変わることなどありません。

そんな姉をあなた様はお捨てになり、ほかの女性にうつつを抜かすなど……」

 はぁ……とわざとらしくため息をすると紅茶を一口。この間で少し相手を観察すれば、案の定アストレ様は目を吊り上げ肩を震わせてます。

 熱血なのはよいですが、バカ見たく一つの物事しか見ていない視野の狭さがこの方の欠点なのですよね。

「今度開かれる子爵家主催の夜会は後妻であるイリノア子爵夫人の歓迎の意味も含まれているのですよ?

それに婚約者でもないご令嬢を公式の夜会のパートナーに選ぶなど常識外れもよいところです」

「う……。し、しかしティナには招待状が届いたにも関わらずパートナーがいないと」

「いないはずないでしょう。あの方は男爵家のご令嬢です。婚約者もいるはずですし、もしいなくても親族で近しい方がいらっしゃるはず。

公式に招待されているのでしたら、そう考えるのが妥当です」

「……」

「よいですか。あなた様は伯爵家のご嫡男、将来はお兄様を支える立場のある方です。

一時の熱に浮かされ過ちを犯してほしくないのです。それに――」

 これは言っていいものか思案し、言わなければ後々後悔することが目に見えていのではっきり言ったほうがいいような気がします。

「それになんだ」

「それに、彼女には様々な疑惑もありますから」

「は?疑惑?」

 知らなかったのか、彼は呆気にとられキョトンとしています。まさか彼女の噂を知らなかったとは思わず、私も一緒に驚いてしまいました。

 ティナ・ジスタベル男爵令嬢。今年15歳で学園に入学した方です。

 栗色のふんわりとした髪と同じ色の大きな目はとりわけ珍しくありません。容姿も綺麗な感じの方ではなく、かわいいといった方です。

 全体的にふんわりとして華奢で守ってあげたくなる少女です。

 あら私ですか?私は父譲りの金の髪と母譲りの青紫色の目をしています。容姿は可もなく不可もないごく普通です。

 両親も同じ色彩の姉も美人なので仲間はずれで寂しいです。

 父曰く父の親、つまり祖父母に似たつくりをしているのだとか。ではなぜ父のように綺麗で格好いい方が生まれたのか謎です。

 話を戻しますが、ティナ様は入学当初から不可解な行動に走ることがありました。

 基本学園内は移動は自由ですが、立ち入りを制限している区域もあります。

 学園内での貴族の上下関係も規律もしっかりしているので、無断で立ち入り制限区域に入る方はいませんでした。まあ、それも去年までの話ですが。

 彼女はその区域に無断で侵入し、生徒を取り締まる風紀に捕まったそうです。

 他にも婚約者のいる方4人――全員美青年――に色目を使ったり、その方々の婚約者令嬢と衝突したりと様々です。例にもれずアストレ様も迫られた口ですね。

 姉も他のご令嬢と同じくいわれもない誹謗中傷を言われています。姉は見かけはきつめの美人ですが、内面は乙女なので傷つきやすいです。

 それでも由緒ある伯爵家の令嬢として毅然と向かっていました。もちろんそれはティナ様にうつつを抜かすアストレ様にも同じ対応で。

 そのせいかアストレ様のなかで姉に苦手意識が芽生えてしまいました。

 今のこのお茶会も彼が人目を忍んで頼みごとがあるというので、いつも一人でのんびりと過ごしている秘密の場所で開いたのです。

 「彼女には裏があるといいますか……なにかを隠しているような気がするのです。

ご存じかはわかりませんが、彼女は一貫して特定の人物に接触しています。それも由緒正しい家のご息子ばかり。

全員婚約者がいらっしゃいますが、彼女が現れたことで関係がぎくしゃくしている方もいるとか。アストレ様もそのうちの一人なのでは?

どうか彼女ではなく婚約者に目を向けてください。

知っていますでしょう?姉は、とても傷つきやすく脆い人です。今回の夜会でさらに傷つくことがないように」

「……」

「私は姉が心配なのです。本当にお似合いのお二人なのですから……」

「……失礼する」

 私の願いが届いたのか。それとも彼女を貶したことで憤慨したのか、彼は無言で冷め切ったお茶を一気に飲み干し一言いうと立ち去ってしまった。

 燃えるように赤い髪が木々の緑の中に映えます。私はそれを願いを込めて見送りました。







 後日、ふわふわの栗色の髪を振り乱し、同じ色の瞳を怒りに染めながら目を吊り上げたティナ様に睨み付けられました。

「なんでゲームにもでないモブのあんたに邪魔されなきゃいけないの!みんなあんたのせいよ!

もう少しで熱血バカを攻略できたのに!!これでフルコンプできなくなったじゃない!」





 どうやら、私の知っていたゲームには続編、それも前作から20年後のが舞台のゲームが出てたようです。

 そして、あのお茶会でアストレ様を諌めたことで彼女の中の計画が狂い元凶の私に突っかかってきたのです。

 目の前できゃんんきゃん吠える男爵令嬢を見ながら、私の心は姉によかったですねと呟きました。これで姉の憂いはとれましたから。

 さて、とりあえずこのうるさいご令嬢を上級生として――強制的に――黙らせましょうか。






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― 新着の感想 ―
[一言] 最後に主人公に言いにくると言うことは、姉の婚約者は尻も軽いが口も軽かったのですね。これはこれで今後が心配ですが、姉の幸せは守れたみたいで良かったです。
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