3:魔法協会
短く書くという事には才能あるかも……
「ふう」
慣れたく無いな、この感覚。
空気と同化した体を元に戻し、ため息を吐いた。体が気体になる感覚は気持ちの良いものでは無い。
それにしても……何ヶ月ぶりの外だろうか……。
あまりよく覚えていないが売られたのは7歳のころだったはずだ。そして今は12歳。約5年ぶりか……。12歳。それが、俺の中の鎖が千切れる年だったのかも知れない。
「長かった。長かった。5年間……。今は、逃げる。
……だが、いつかは、もっと、強くなったら、俺は、研究所を、その組織を、捻り潰す!!」
ふつふつと怒りが沸いてくる。今すぐにでもグチャグチャにしてやりたいという思いがわいてくる。…だけど、それをするにはまだ力が足りない気がするんだ。
だから、もっと力を、俺は手に入れる。
そして、必ず俺はここに帰ってくる。その時が、お前達の最後だ。
俺は建物の壁にでかでかと描いてある研究所の名前を睨みつけ、その場を後にした。
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彼が去った建物の壁にはこう描かれていた。[魔法協会ガルド王国支部研究所]と。
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「はあ!?何だと、0075番が脱走!?……ふざけるな!担当者は何をしていたんだ!………ああ!?昼食?まあいい、ごちゃごちゃ喋ってないで早く捕まえろ!……何ぃぃ!もういないだと!?いいから探せ、探すんだ!」
通信の魔道具を叩きつけるようにして机に置き、上司から譲って貰った高級な椅子に身を投げ出すようにして座る。
「まずいな……まずい。この事を上に知らせたら俺は………ッ」
叩きつけるようにして置いた通信の魔道具から着信音が鳴り響いた。
「もう上に通達がいったのか……まずい、まずい、まずいぞ」
深呼吸を一つしてから覚悟を決め通達の魔道具を手に取り、通信ボタンを押した。
「こちら、魔法協会ガルド王国支部研究所の責任者、サード•ストーンです」
「サードストーン君。君は実験体に逃げられたそうじゃないか。えっと、確か番号は……」
「0075番です」
「おお、そうじゃった、0075番じゃ。確かこの0075番は魔力が未知数なのではなかったかね?」
「はっ、その通りです」
「魔力が未知数の0075番は危険度X。地下シェルター内の収容所に収容していたはずだが……どうして逃げられたのじゃ?」
「はっ、実験担当者が昼食休憩の間に逃走したもようです」
「ふむ、して方法は?」
「はっ、逃走方法については現在解明中であります」
「うむ、では0075番を収容していた部屋の詳細を聞かせてくれ」
「はっ、0075番を縛り付けてあった鎖と椅子、両方とも無くなっていましたが、その他の異常は見つけられませんでした」
「……ふむ……まずい、かもしれんな。魔力が未知数で魔法許容量が0………まずいな」
「何がまずいのでしょう、魔法が一つも習得出来ない出来損ないの小僧ですよ?」
「……その魔法が使えない小僧はどうやって逃げたと思うかね?サードストーン君」
「魔法が使えない奴が逃げるとすると……内部からの手助けでしょうか?」
「…違う。0075番が逃げた方法は、魔法だ。それも普通の魔法ではない。我々魔法協会が誇るセブンウィザードや私、総統と同じ魔法。つまり、固有魔法だ」
「こ、固有魔法?し、しかし0075番はこの5年間一度もそんなものが使える素振りは……」
「それなら脱走する直前に発現したのかもしれんな」
「参謀長は0075の固有魔法、どのような魔法だとお考えですか?」
「逃走の跡がないとなると…瞬間移動の類かもしれんな……」
「そうですか……0075番は必ず捕らえてみせます」
「あぁ、そうしろ」
「では」
そう言って俺は通信停止ボタンを押し、再び椅子に深く座った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「魔力未知数の奴が発現した固有魔法か………。瞬間移動の類などで収まる魔法だと良いのだが………」
切られた通信魔道具を机に置き、参謀長は呟いた。