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12:強くなるための(1)

 「このたれ、美味しかった」

 露店で買った肉についていたたれを同化したキルが呟いた。。


 魔物の肉の味は強さによって決まっている。弱い魔物の肉は不味く、強い魔物の肉は美味しい。Bランク以上の肉となると手に入れにくい事もあって高級食材になっている。


 露天で売っていた串焼きに使っている肉はDランクの魔物の肉で、一般人の食卓に並ぶ程度の物であまり美味しく無い。

 しかし、その肉の質の悪さを補っているのはたれだ。甘くて少しピリッとする辛さで飽きない味。このたれこそが美味しくない肉を売り物にしている。


 そこでキルはふと思いついた。このたれをフェンリルの肉に付けたらどうなるか、と。

 フェンリルはAランク。Aランクの肉ともなれば王族でもそう簡単には食べられないが、しかしキルはそのフェンリルの肉を持っていて大量に生産出来る。


 晩御飯に試してみよう、とキルは心決めた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 昼食を露店の串焼きだけで済ませたキルはここに来た目的を果たすために街をうろついていた。

 強くなる。その目的を果たすためにキルがやることは修行では無い。

 では何をするか。それは同化することだ。


 固有魔法[同化]は全てのものを同化できる。固体でも液体でも気体でも生物でも魔法でも、何でも同化出来る。

 もちろん同化するには魔力を使うが、その消費量はキルの魔力量と比べれば微々たるものだ。

 同化したものは保存され、魔力を使う事でそれを体と同化したり、生産したり出来る。そのため、強いものを同化すればするほど強くなれる。


 キルはまず武器屋に向かう。

 「いらっしゃい」

 扉を開けると鈴の良い音が鳴り、カウンターのむこう側にいる女がキルに声をかけた。

 だがキルはそれを無視して店内を見渡す。壁に立てかけられた業物の剣や刀。樽に無造作に入れられている量産品の剣や刀、槍、いかにも重そうな斧や盾。

 棚に並べられているのはナックルや鞭、ナイフ。

 キルは全てを一種類ずつ買う事にし、それら全てをカウンターに置いた。


 「えっと、これら全てをお買いあげで?」

 キルの容姿に顔を赤くしながら驚いたように尋ねる店番の女。それもそうだろ。カウンターに置いた物全てを買ったら30万G以上。一般人の年間収入と同じくらいだ。


 お金は

 1Sが鉄貨一枚

 100Sで1Gで銀貨一枚

 1000Gで金貨一枚

 100000Gで白金貨一枚だ。

 だいたい10Sで丸パン一個だ。



 「ああ」

 キルは彼女以外の人を信じる事は無いし馴れ合うつもりも無い。

 そんなそっけない言葉で返されたが、女は、ハァハァと息を荒げ、良い、と呟いた。


 「32万Gになります」

 キルはアイテムバックから白金貨3枚と金貨20枚を取り出して渡し、武器をアイテムバックに入れるふりをして同化。お店をでた。




 キルが出たのを見て、女はカウンターの下に置いてあった通信の魔道具を取り出した。

 「こちら、キル様ファンクラブNo,152。

 キル様は私の武器屋で武器を多数買い、出ていった。無愛想だったけど……そこも良い……」


 「こちらキル様ファンクラブNo,025。店を出た所を見つけました。今から護衛します。

 それと、No,152。キル様が払った金貨はファンクラブに寄贈しなさい。以上」


 「そ、そんな~………以上」


 カウンターに魔道具を置いた、キルのファンクラブ会員No,152は舐めていた、受け取った金貨を名残惜しそうな表情で袋に入れると店を閉め、ファンクラブの拠点へと歩いていった。




 「一瞬寒気がした……」

 キルは鳥肌がたった腕をさすりながらぶるり、と身震いした。

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