11:帝国とギルド
「やっと着いたか」
太陽の光を反射させる銀色の毛皮はまるで神の威光のように眩しく美しさを纏っている。身長は156センチ程と小さいが、12歳という年齢なら妥当な大きそうだろうか。
毛皮と同じ銀色の髪で長さは腰より少し上。顔は美少女と言っても信じるくらいの美形だが、その目にあるのは美少年のような輝いた瞳では無く、全てを飲み込み喰らい尽くされそうな奥が見えないどんよりとした黒色の瞳である。
頭には銀色の狼耳、お尻からはふさふさで銀色の尻尾。
毛皮、髪、狼耳、尻尾。その全ては触るもにを魅了するような美しさがあり、通り過ぎて行く老若男女を虜にしている。
「視線が鬱陶しい……」
女からの熱い視線はまぁ良いとして、何故男に熱い視線をおくられ無ければならないのだろうか。
通り過ぎて行く男逹はまずその神々しい姿を見つけて目を見開き、次に美しい顔を見て頬をだらしなく緩め、狼耳を見てよだれをこぼし、胸を見て少し残念そうな顔をして、ふにゃふにゃと揺れる尻尾を見るとふらふらと引き寄せられ、最後に細い腰とお尻を見て前かがみになった。
「ロリコンどもめ、俺は男だ」
神々しい輝きを纏う少年、同化者は舌打ちをして小さく呟く。
通り過ぎて行く女達も股をせつなそうにすりながら歩いて行く。2時間程道を歩いただけなのに300人を超える老若男女を魅了した同化者は20メートル程の塀で囲まれた大きなな街に付いた。
オキニス帝国の帝都。皇帝が住んでいる城があり、オキニス帝国で一番大きな街である。
目的地についた同化者は男からの気持ち悪い視線を忘れ、上機嫌で唯一の入り口である門に近づいていった。無表情で感情が無いのだが何となく気分が軽く、少しスキップしながら歩く。
またその可愛い歩き方を見て何人もの男女が前かがみになったり股をすりあわせたりしたが、そんなものは目に入らないのかまっすぐ門に向かった。
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分厚い木製の門の前には常時2、3人の騎士が立っており、入る者と出る者をチェックしている。そのため、都内に犯罪者が入ってしまう可能性が低くなり犯罪を起きにくくなっているのだとか。
門の前には15人ほどの人が大きな荷物や馬車を持って並び、順番が来るのを待っていた。
同化者もその列の後ろに並び順番が来るのを待つことにしたようだ。前に並んでいた気弱そうな細い男は同化者を見ると顔を真っ赤にし前かがみになった。
待つ事5分。前に並んでいた気弱男は同化者をチラチラと見ていたが、話しかける勇気は無いようだ。もじもじと前かがみになりっぱなしで、門番の騎士に怪しまれていたが、どうやらちゃんと身分が証明出来たらしい。ゆっくりと都内に入っていった。
ところで同化者の後ろに並ぶ人はいないようだ。いや、20メートル離れた所では50人ほどの人溜まりが出来ており、並ぼうとした者を互いに牽制し合っている。どうやら誰が同化者の後ろに並ぶかでもめているようだ。
しかし同化者はそんなことお構いなしに騎士に近づき冒険者カードを渡す。
「確かに、Eランク冒険者だな。名前は?」
さすがは帝都の門を守る門番の騎士。少し驚いたように体を動かしたが、すぐに身分証明書の提出を求めた。
「同化者です」
「同化者?それは二つ名か何かか?そうじゃなくて名前を言ってくれ」
困ったことになったぞ、同化者は心の中で呟いた。良く考えてみれば確かにあだ名のような名前で帝都に入れるはずがなかったのだ。
帰ろうかな、と思ったがすぐに考え直し、自分で名前らしい名前を付けることにした。
「キル、です」
その名前の由来は簡単。同化者は殺す事たくさんの人を殺す。だからその名前にしたのだ。
「キル、ですか?失礼ですが男の方で?」
「当たり前だ」
同化者、いやキルは少し声を荒げた。先ほどから向けられている視線や小さな声で自分の事を話しているのが聞こえ、イライラが溜まっていたのだ。
「あ、あぁ、すまない」
騎士に身分証明書を返してもらった後、キルは門をくぐり抜け、帝都に入った。
その後ろでは、キル目当てで溜まっていた人たちは、男だという事実を知って叫び声をあげだり、より発情したりしていたのであった。
門をくぐり抜けたらすぐに大きな通りに出た。周りには2階建ての宿屋や小さなお店、酒屋などが店先に看板をぶら下げて宣伝をしていた。
「美味しそうだな……」
キルは串焼きを売っている屋台から漂ってくる良い匂いに気をひかれた。
キルは長い間まともなご飯を食べていなかったせいか美味しい物には目が無いのだ。
買って食べたいがお金が無い。王国と帝国では通貨が違うのだ。もちろん両替所もあるのだが、その事をキルは知らない。
いっその事奪ってしまえば良い、とフェイス5の欲望が強くなりそんな事を考えたが、キルの中から聞こた声で思いとどまった。
(待ってください、今犯罪を起こしてしまいますとここに滞在出来なくなります)
首無し騎士デュラハンことデュラだ。
人に見つかると騒ぎになりそうなので同化しておいたのだ。
そのためキルの魔力を常時浴びているため進化し、首有り騎士デュラになってしまったのだ。鎧の中身は10人中10人が可愛いと言う程の容姿を持っているが、キルには少し劣る。
強さも進化前より、断然強くなっている。王国にいる彼女から貰った魔物百科には、首のあるデュラハンなど載っていなかったため新種だろうということに落ち着いた。
「(分かったよ……ギルドで依頼で魔物の死体を量産して売ることにする)」
食べ物のため、キルは冒険者ギルドに行くことにした。
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王国のと同じ、剣と剣が交差している絵の看板が下がった建物を見つけたので、扉を開けて中に入る。
途端、建物の外まで聞こえてくる程の喧騒がしん、とおさまった。
建物の中は丸テーブルが10個ほ程並べられていて、武具を装備したいかつい男達が料理や酒を飲んでいる。その奥にはカウンターがあり、女の人5人が待機していた。たぶんそこが受付なのだろうと目星を付け、キルは歩いて向かった。
建物内の中央を歩く美少年に魅せられ、荒くれ者の男達は食べ物を口から落とし、酒を体に注いだりしていた。
5人いる中でどの受付に行こうか、キルは悩んだ挙げ句、猫耳の女の人の受付へ向かうことにした。
静まり返っていたギルドはこそこそ話の声でざわつき始めた。
「可愛い」だの「声かけろよ」、「抱いてみたい」など、欲望に濡れた会話ばかりだった。
「あの、買い取りお願いします」
キルは猫耳の女性に話しかけた。20歳くらいに感じられるその女性はキルを見て呟いた。
「神狼様?」
獣人は神狼フェンリルを信仰している。実際、獣人の国にはフェンリルが守り神として国の中に住んでいるのだ。
どうやらこの猫耳受付嬢、キルを銀色の毛皮をしているのでフェンリルと間違えしてようだ。本当にフェンリルの毛皮なのだが、キルは能力がバレると困るのでごまかすことにした。
「いえ、違いますよ。この毛の色は生まれつきなので……」
そういうとガックリと肩を落とし、受付嬢はそうですか、と言った。
「えっと、それで買い取りでしたよね?でしたら、買い取り部屋にご案内しますね」
気を取り直したのか笑顔で立ち上がり、奥へ入って行く。
そこは直径20メートルほどありそな円形の大きな部屋。どうやらここが買い取り部屋らしい。
「はい。これをお願いします」
そういってあらかじめ量産し、アイテムバックに入れておいた魔物の死体を取り出し床に並べた。
Cランク、スパイダーナイト10体、フォレストウルフ10体、ファイアバード10体、ワーム10体。Bランク、王陸亀3体、サイクロプス3体、レッサードラゴン3体。
Aランクは騒ぎになると困るため出さなかったキルだが、Bランクだけでも十分騒ぎになりそうだ。受付嬢は開いた口が塞がらないらし、口をパクパクしていた。
「Cランクがこんなに……それにBランクも………」
だがさすがはプロの受付嬢。すぐに正気に戻り、買い取り額を計算していた。
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30分ほど受付嬢は魔物の死体状態を調べ、ようやく結果が出たようだ。
「全て無傷ですね、一体どうやって仕留めたんだか………。
スパイダーナイトは一体9000Gで10体だから90000G。
フォレストウルフは一体5000Gで10体だから50000G。
ファイアバードは一体7000Gで10体だから70000G。
ワームは一体3000Gで10体だから30000G。
王陸亀は一体で55000Gなので3体だから165000G。
サイクロプスは一体30000Gだから3体で90000G。
レッサードラゴンは一体90000Gだから3体で270000G。
合計で……、765000Gですね」
76万5千G。キルには相場は分からないが妥当な値段だろうと判断して、受付嬢からお金を受け取ってギルドを出た。
キルは早くあの串焼きを食べたかったのだ。いまだに、ぼ~としている冒険者に関心を示さ一直線にギルドの扉に向かい屋台目指して歩いた。
主人公は元から美少年です。
ただ毛皮で美しさが倍増されただけ。




