台風襲来 その3
「なぜ、神無が人形だと知っている」言って源十郎が葉月に詰め寄る。丸眼鏡の奥で瞳が剣呑な光を放つ。
「えー、だってあたし人狼だもん、鼻が利くの。だからぁ生き人形なんて作って可愛がっている人間なら、容赦もなく私も可愛がってくれるなって、そう思って」
「人狼、ですって」その一言で神無のまわりに未だ漂っていた暗雲は一転して雷雲に変わった。ゆっくりと、如月 葉月を見上げる。
「そ、そおいうこと。ふっふっふっ初代、人形師”源十郎”の最高傑作のこの私があなたのような小娘に負けるもんですかっ。だいたいねぇ、源十郎様は幼少の頃に出会って以来わたしが丹精込めて育てあげてきたんですからね。それを今更あなたみたいなわけのわからん小娘にとられてなるものですか。人狼だというのならなおさら人間相手の時のような手加減も無用っ!剣 三十郎、来なさいっ!」
「神無」
「源十郎様は黙ってて下さい、これは女の戦いなんですっ」
「そう、じゃぁ勝てば源十郎様は私だけのものにしていいんですね」
「やれるもんならっ!」言って神無は自動歩行して側にきた鎧武者の中に姿を消す。
神無は人形である。神を越えることを欲した初代 人形師 源十郎が永遠の処女性をコンセプトとしてつくりあげ、神無と名付けた生きた人形。それが彼女の正体である。彼女自体には多少力が強い他はなんの能力も持たない。
が、他の人形の中に溶け込むことにより様々な能力を発揮する。それが彼女である。




