台風襲来 その1
「もらった」
いつものように彼の説明は簡潔だった。
「納得がいきませんっ、どこでどうやったら、こんなものをもらうような状況に出会えるっていうんですかっ! ああっ、源十郎様がこんな変態に育ってしまうなんて私の教育方針が間違っていたのかしら。…私、もう休ませていただきます。私はもう疲れました。いいんです。私なんてどうせ源十郎様のお荷物で役立たずでなんの価値もない女なんです。落ちついたら本家の方に戻ります。…それから源十郎様、いじめる方なら結構です。でもいじめられる方というのはいままでお坊っちゃまを育ててきた者として我慢できません。では源十郎様、お休みなさい」
憑かれたような足どりで出ていく彼女の背中を見送り再び彼はため息をついた。
*
天気は快晴だった。ただ彼の隣を歩く神無の周囲には黒い雲がわだかまっている。
「いいんです。どーせどーせわたしなんか…」と、とぎもれなく呟く彼女に源十郎はいささか感心もする。
「あ、いたいた。御主人様っ、どうですか プレゼント気に入ってもらえました? えっとぉ、今年のイブは満月なんですよ。知ってました。それでぇ…その|満月の夜(イブの日)に窓一つない地下室で、それで虐めていただけたらって思って。えっとぉもちろん先輩も一緒でいいですよ」如月 葉月と名乗った。短い髪の小柄な少女はそう言ってくったくのない笑顔を二人に向けた。
「神無先輩、どうしたんですか 顔色悪いですよ。御主人様に叱られたんですか、それとも昨夜の調教がハード過ぎたとかっ?」
言って熱っぽいまなざしを丸眼鏡の奥の瞳に向ける。




