嵐の爪跡(あと)で
翌日の朝、神無は不機嫌だった。
それは隣で自分の身体の各所を軽く動かし、ふむ、久々に身体が軽いなとか言う能登 源十郎のセリフに起因する。敗北感が自分を打ちのめす。彼女は源十郎の役に立たなかったのだ。役に立ったのは如月葉月だとか言う人狼の方で彼女は彼の身体を癒すのになんの役にも立たなかったのだ。
「やっぱり私、源十郎様のお荷物なのかなぁ、こんな役立たずの生人形なんていらないよねぇ、はぁ」
「そんなことありませんってば、お姉様」
「お、おお、お姉様ぁっ?」
「私達あっての源十郎様でしょ、ねっ!」
「ふむ、ノーマルなんだがな」
「大丈夫ですって、男の方なんて根本は暴力的なんですから。と、いうわけでよろしくお願いしますねっ御主人様っ」
「そそそ、そんなことよりそのお姉様ってのはなによっ、それにアンタ負けたハズでしょっ、私にっ!!」
「ええ、でも気づいたんです。私別にお姉様に負けたわけじゃないってことに、私が負けたのは剣 三十郎であってお姉様という個人じゃないんです」
「あんただって人狼の能力フル活用してたじゃないっ」
「そうなんです、だからあの試合は引き分けって事で」
「納得いかなーいっ! ふっふっふっ、こうなれば今度こそ正真正銘、息の根止めてやるーっ!」
「あっ、嬉しいなっ。さっそくイジめてくれるんですかっ! なんていうかぁ、真剣で斬りつけられるなんてぇ、初体験でクセになりそうなんですっ」
「イ、イジめ・る・っ?」
「ええ、私 気がついたんです。なにもお姉様と喧嘩する必要は別にないんだって、えーとですね、将を射んと欲すればまずは馬からという事で、お姉様さえ陥落してしまえれば自動的に私は源十郎様のものっ。というわけで本日 只今より私はお姉様のものですっ」
「いーやぁー げ、源十郎様ぁ、助けて下さいー」
潤んだ瞳に見つめられて泣きそうになりながら傍らの男にしがみつく。
「ふむ、ま どう断ったところで、な」
「はいっ、昨日源十郎様の身体を舐めつくしながらやっぱり御主人様しかいないって確信したんです。ということでよろしくおねがいしますねっ」
「ふむ、まぁ どちらにしろお前の播いた種だ。後始末には責任を持って、な」
「え”、源十郎様、もしかして知ってましたぁ? あああ、あの噂のでどこ」
「さぁて、な」
「良かったぁ。これで私達の仲はマスター公認ですね。お姉様っ」
「い、やぁあーーーーーーーーーーーーっ!!」